続、精霊のお話です
「お待ち下さい。ベルンハルト様とフェリシティー姫は子孫、と?
我らもそうなのではないのですか?」
王太后が険しい顔で問いかけた。
「それがね、私が最後にスキだな、って思った子が、殺されちゃったの。
その後に泉に来た人は、もうキースとクロエの子孫じゃなかった。ずっと、来てくれなかった。
久しぶりに来たのがナムール。
もっとクロエに近かったのが、ラミーナ。」
「精霊様、お聞きしたい。
子孫とは、わかるのですか?どのように?」アーサー。
「私はエスメの身体を通して産まれたから。エスメの魂が宿る身体を知り、魂も知っているわ。
この国の、いえ、大陸の木々の多くはエスメの植えた木々、その子孫。エスメの子供達のようなもの。
エスメだったクロエを、彼ら大地の精霊も風の精霊も私達水の精霊も、認めているの。蘇らせてくれたから。
エスメであり、クロエである魂は平和を望み、人々が争うのを嫌っていた。その思いは子孫の身体に欠片のように存在してる。感じるの。」精霊がベルンハルトとフェリシティーを見て言う。
「フランセーアの歴史で、祝福を得た最後の王は、ラルク。その妻の王妃ドローレス。
最後のラルク王までは、祝福を得た人物が王になっていました。
ドローレスの産んだ王子から、血統を重視して、王家を繋いできた。僕らはそうして、フランセーアの王族として、ここにいます。
ぼくらは、クロエとキースの子孫ではないのですか?」
リカルドが言った。
信じられないと呆然とつぶやいた。
精霊エヴィが説明した。
「王妃ドローレスは、ラルク王が好きだった。とっても。
だけど、ラルクは他の人が好きだったの。その人と結婚できないから、誰とも結婚しないつもりだったの。
ドローレスが、それでも良いから、ってラルクと結婚したの。
で、色々あって、ドローレスは他の人を好きになって、その人との子が王太子になったの。
ドローレスは、王太子の父親がラルクじゃない事を、知られる事が怖かったの。
ラルクを殺した後、ドローレスは泉に来て、大樹と私に謝ってた。そして、自分で死んだの。」
しん、と皆が精霊を見つめる。
「私達は、王殺しの、王家を乗っ取った王妃の子孫ということ?」
王太后がぐらり、と揺れた。王が祖母の王太后を抱きとめ、支えた。
「王太后様!」王妃も寄り添った。
「なんてこと、祝福を得られないけれど、それでも我等はフランセーアを守り支えた。民のためと君臨してきた。我等王族が、祝福を受けた王殺しの一族なんて。処刑されて当然の犯罪者が、王族だなんて」
「王太后様、ドローレスは王を殺したとして、その後の王族は、フランセーアを治めてきた王族であることは変わらない事実です。」エリン。
「でも、逆賊だわ。私達一族は」王太后。
「ドローレス、悪い子じゃなかったよ。可哀想だった。」精霊エヴィがポソリと言った。
皆がエヴィに注目した。
「だって、ラルクはイーサンと恋人だったし。」エヴィ。
「??イーサン将軍ですか?救国の英雄将軍の?」
「ラルク王に忠誠を誓い、ラルク王の墓に一緒に埋葬されてる、あのイーサン将軍?」
、、、王と将軍は、幼馴染みの仲で、深く信頼しあった親友と伝えられていた。
肖像画が残っている。
ストレートの銀髪。優しげな容貌のラルク王。
金髪の筋骨たくましい体格のイーサン将軍。
二人の忠誠と信頼の逸話は多い。イーサンは生涯独身だった。
王の恋人だったのか、、、。
生前ラルク王が自分の墓にイーサンも埋葬するように決めていたのは、そういう訳だったのか。
一同(子供は除く)は納得した。
そこに、大きな声でエリンが言った。
「ドローレスは悪くない!ドローレスの気持ち、わかる!」
「いや、王殺し、夫殺しは駄目だろ、いや、夫なのか?」レイナルトが妻をたしなめようとした。
「毎日男同士のイチャイチャを見せつけられたら、頭がおかしくなって殺したくなる気持ちがわかる!ダメだけど!」
エリンがプロンシアーナ王を指差した。
プロンシアーナ王セインと護衛は手を取り合い見つめ合っていた。
「俺も遺言作っとく。俺の墓にガイルも埋葬してくれって。エルンストに頼んどこう。」セイン。
「ああ。こうして生きている時も、死んでからも一緒にいよう。俺の忠誠は生涯セインに捧げている。」
ガイルと言う名らしい護衛も熱い眼差しでセインを見つめていた。
お互い名を呼び合い、深く抱擁した男二人。
周囲の人間は(子供も含め)二人を驚きの目で見つめる。えっと、ゲイ?エリン以外二人の抱擁から目が離せない。
エリンは「オエェ」と吐き気をもよおしている。
「精霊エヴィ様。慈悲王ナムールや精霊姫ラミーナは、市井にから王家に入りました。クロエとキースの子孫が市井に散らばっているのですか?」アーサー。
「そうみたい。そこのセインから、クロエの欠片を感じるの。」エヴィ。
どうやら、昔、王になりたくない王族が精霊の泉の儀式を受けずに、市井に混じったようだ。その血脈がナムールであり、ラミーナの母親、セインの祖先にいたのだろう。
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