精霊のお話を聞きました
「あなたは精霊の泉の精霊様でよろしいのですか?」王太后が聞く。
「精霊様、私は長い間この国のため、良かれと政治を行いました。私には、精霊の祝福を受けるに値しないとし、夫には祝福を与えた。なぜか、教えていただけるでしょうか?私は何が足りないのでしょう。」王太后。
「なんのこと?私は、この子スキ!って思ったら水が出ちゃうの。大樹もそうよ。
私と大樹がゴキゲンだと、水脈を通して力が土や水に行き渡るの。
私は水を司る精霊。
昔は、人間の女の子だったの。」
「フランセーアの初代王と精霊様が国々をまとめて基盤を作られた、と伝え聞いております。」王太后。
「私が大好きだったのは、お母さん。お母さんの願いを聞いてたの。お母さんが、私のお母さんだったから。」精霊。
お母さんがお母さん??
「えっとねー。むか~し、ステキな魂のお母さんの子供になりたくて、ずっと生まれようとしてたの。お母さんは栄養足りなくて、私、何度も流れちゃった。やっと産まれたのに、7歳になる前死んじゃった。」
精霊が話しだした。長い長い話。
はるか昔。
大陸中が荒れ果ててた。自分はエライと思い込んでる人々が争いを繰り返してた。
大地を耕して実りを生み出す人々を殺したり、戦地に連れて行って死なせた。
戦で実りをもたらす耕作地を蹂躙した。
敵を炙り出すために森を焼いた。
森が無くなり雨が降らなくなった。
大陸は荒廃し、人が死んでその血が大地に染み込んだ。
水の精霊が住処にしていたキレイな水を生み出す泉が、人の血肉で埋まってしまった。水の精霊が住処を無くしてさまよった。
どんどん実りが無くなり、もっと人が争った。
大地の精霊が、荒廃と共にその命を失くしかけていた。
山奥に大地の精霊を祀る小さな祠があった。豊かな頃は国のいたる所に祀られていた、豊穣を願う祠。
そこに毎朝、祈りに来る少女がいた。
少女は知らなかった。その祠が大地の精霊の住む、大陸で最後の祠であることを。
少女の心が清浄であったので、大地の精霊は少女の魂に話しかけた。
この地に緑を蘇らせる力を与えよう、と。少女は大地の精霊と契約し、大地の精霊は少女の中に入り、眠りについた。
少女の名はエスメ。
エスメは大地の精霊との契約で枯れそうな草木に力を与える事ができた。
エスメは近隣のあちこちを巡り、木の苗を植え歩いた。
ある時、住処をなくした水の精霊も、エスメを見つけた。精霊はエスメのそばにいることにした。
エスメは精霊に気づかなかったが、エスメの植えた苗に水の加護がつけられ、苗はよく育つようになった。
エスメ年頃になると、アランと言う幼馴染みと結婚した。夫婦で旅をし、範囲を広げて国中に苗を植えた。
植えても植えても、人は暖を取るため木が育ちきるまでに枝を取り、枯らしてしまった。植えた苗の半分以上は育たなかった。雨が降らない。
この間、数回子供が流れた。夫婦は食べ物がなく、栄養がとれなかった。
結婚して二十年、初めて産まれた女の子、エヴィ。
エヴィはエスメが大好きだった。お父さんのアランも好きだが、エスメに惹かれて、エスメのために生まれた。
常にエスメの側にいた水の精霊はどうしてもエスメの子供になりたかった。それて、エスメの赤ちゃんの中に入った。魂は水の精霊、身体は人の子。
その身体も、流れそうな虚弱なものを、エヴィが繋ぎ止めてやっと産まれた身体だった。
エヴィとエスメが苗を植えると樹は必ず育った。
エヴィは、大地の精霊を身の中に宿すエスメから生まれた事で、大地の精霊と水の精霊の力を合わせ持っていた。
多くの苗を植え、そのそばに水脈を引き寄せた。水脈が豊富な場所に育った樹々の側では泉が湧き、オアシスとなった。
大地に緑が戻り始めた。
しかし、虚弱なエヴィは幼い頃死んだ。
エスメは悲しんだ。最愛の一人娘だった。
エスメの亡骸を埋めて、木の苗を植えた。
アランとエスメはまた旅に出た。苗を植え続けた。
何度もエヴィを埋めた場所に戻って、夫婦はエヴィに話しかけた。
苗を植えたよ、緑が増えたよ、人が穏やかになり、笑えるようになったよ、エヴィに会いたい、と。
夫婦は老人になっていた。
ある時、アランがエスメの亡骸を持って、エヴィの墓地に来た。アランはエヴィの隣にエスメを埋めた。
埋め終わると、アランはその場に留まり、その生を終えた。
旅の人が、アランの亡骸をそこに埋めてくれた。
アランとエスメ、エヴィの植えた苗は育ち、広がり、大地を豊かにしていった。
数百年が経っただろうか?
エヴィはその場所にほとんど眠りながらいた。大地の精霊と水の精霊の力を持ちつつ、そこにいた。
ある時、エヴィはお母さんのエスメの魂が近くにいることを感じた。
エスメの魂を持つ女性は、またアランの魂の男性と結婚していた。
この時、エスメはクロエ、アランはキースと言う名になっていた。
キースはこの地を治める長の息子だった。一族を率いる立場にあった。
妻を伴い、領地を巡っていた。クロエが体調を崩した。熱を出し、小さな湧き水と木陰のある、エヴィの所に来たのだ。
エヴィは喜んだ。お母さんだ!お母さん!
エヴィが嬉しくなると湧き水が水柱になった。
樹の葉がワサワサと揺れて舞い落ちた。
キースや従者らはその不思議に驚いた。
クロエがその葉をコップの代わりにして水を飲むと、体調が回復した。
クロエは、何故か葉を食べたくなった。葉をかじるとクロエのそばを飛び回るエヴィが見えた。そして、エスメであった人生を思い出した。
クロエはその樹と泉の側で暮らしたいとキースに頼んだ。
クロエは泉と樹の葉で病人を癒やした。
キースは穏やかな性格で争いを好まない。
クロエはもっと慈悲深い。
二人は泉の水と樹の葉を皆に分け与えた。
クロエが汲んだ水、クロエに降った葉でないと、病は治らない。
噂が広まり、人々がキースとクロエの元に集まるようになった。泉を中心とした集落ができた。
キースとクロエを頂点とした信仰のような集団が近隣の首領集団を統率していった。
しだいに大きくなり、フランセーア大国の基礎となる王国ができた。
泉の精霊エヴィは、エスメでありクロエであるお母さんと長い時間を過ごせた。
クロエとキースの子供達が数人産まれた。
エヴィは弟妹としてその子らを愛した。
長い話をして、水の精霊エヴィはベルンハルトとフェリシティーを見て、言った。
「あなたたちは、エスメであり、クロエであり、アランであり、キースである、私の大切な人の子孫なの。」
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