何を隠しているのですか?(エリン)
レイナルトはエリンとアシェルの体調と気候を考え、アシェルが10ヶ月になって、フランセーアへ出立した。
記憶を無くしたエリンと、出会いから始めたレイナルト。
3年かけてローラン子爵家に通い、何度も街に連れ出し親密になった。
エリンがローラン領地で女子教育をしたいと希望したので教育者を紹介した。
女の子は家事の手伝いや下の子の世話をして学校に通わせてもらえない。エリンは女の子にも教育を望んだ。
無料の小さな学校を集落ごとに作り、読み書き計算を教えた。優秀な子は領都の学校に無料で通う事ができるようにし、役人の試験を受ける事ができるようにした。
ローラン子爵領地はアーサーの改革で女の子に職業を与える珍しい領地だった。
反発する男達に妨害を受ける事もあった。
しかし、エリンはレイナルトの協力やアーサーの助けを受け、希望する女の子に教育と職業を与え続けた。
その過程でエリンとレイナルトは親密になり、レイナルトの求婚を受けて結婚した。
エリンは30歳を過ぎていた。
実はレイナルトはエリンとの離縁を承諾しておらず、離婚届けをアリステア貴族血統管轄局に出していなかった。
エリンだけが記憶を無くし、初めてレイナルトに出会い、恋し、結婚したと思っていた。
周りは黙して見守っていた。
フランセーアからの招待を、クロフォード伯爵家として仕方なく受けた。招待を受けてからレイナルトの機嫌が悪い。
ローラン子爵アーサーも同行した。
エリンは何も知らされず、フランセーア王都に到着した。王宮の王太后の住まう別棟の一角を滞在場所に与えられた。
王太后宮に迎え入れられたエリンとレイナルトは、貴賓室に宿泊するよう通された。
エリンはその部屋に戸惑った。
調度品が豪華すぎる。
エリンはレイナルトに頼み、メイドに頼み、部屋のグレードを下げて欲しいと訴えた。
メイドは王太后に伝えに行った。
ゆっくり挨拶しようとサロンでお茶の用意をさせていた王太后。
メイドが困惑してエリンからのお願いを伝えてきた。
「部屋が豪華で落ち着かない、眠れそうにないとの事です。」
次に伝言を伝えに来たメイドは、もっと困惑して慌てていた。
「貴賓室をお気に召していただけなくて、他の部屋を見せて欲しいとおっしゃられました。お止めしたのですが、部屋をご覧になられました。下級貴族か、上級貴族の従者室が良いとおっしゃられています。いかがいたしましょう?」
「、、、。お会いしましょう。私が行きます。」
王太后がサロンを出ようとした所で、サロンに入ってきた女性を見て足が止まった。
豊かな波打つ濃い金髪。簡単に結われて半分が背を覆っている。整った目鼻立ち。陶器のような滑らかな肌。大きい目の瞳はアメジストの色だ。スラリとした細みの身体でありながら、豊満な胸。長い手足。
装飾の少ないシンプルなドレスが、その人の美しさを引き立てている。バラは大輪で美しくあれば、葉は目に入らない。
妖精の女王の様だと感じた。堂々としている。目がその人に吸い寄せられる。
その女性が王太后を目に留めて、微笑みながら近づいてきた。そして、美しいカーテーシーをした。
「お招きありがとうございます。エリン・ローラン・クロフォードです。フランセーア王国王太后様。お会いできて光栄でございます。」
後からサロンに入ってきた男性も美男子だ。
金髪碧眼。スラリとしていながら、たくましさもある。
「レイナルト・クロフォードにございます。王太后様。お招きいただき、ありがとうございます。呼ばれもせぬのにこちらまで来てしまい、申し訳ごさいません。」
「お会いできて嬉しいわ。エリン様、クロフォード伯爵。
部屋が問題があるとか。気に入らないのかしら。良い部屋を用意したのですよ。」王太后。
「王太后様、お気遣いありがとうございます。しかし、私達は伯爵家の者にごさいます。王宮に滞在させていただく事も破格の厚遇にございます。貴賓室など使わせていただくわけには参りません。
他の部屋を見せていただきました。丁度よいお部屋で気に入りましたの。」エリン。
「こちらから招いたのです。こちらが用意したお部屋でご滞在ください。」王太后。
「赤ん坊がおりますので、壊すものが無いように、目が行き届くくらいの部屋がよいのですわ。二階より一階が転落の心配が無くて安心ですの。
ご無理なら、王都のサンフォーク公爵家がフランセーアで滞在する別邸をお借りできるようにしてきましたの。」エリン。
王太后が黙った。
エリンの目を見つめた。
エリンも目をそらさず、堂々と王太后を見る。
「お部屋はお好きにしてください。
お招きした理由を話しましょう。」王太后。
「私、なんの御用で呼ばれましたの?フランセーアとの関わりがわかりませんの。私の記憶が無い事についてでしょうか?」エリン。
レイナルトを振り返り、レイナルトにも言う。
「皆さんで何を隠しているの?」
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