借金令嬢と友人の、出会いの話を聞きました
エリンとバートが子供の頃に出会ったお話です。
エリンとバートと友達になったら、数名の女の子がサーラに話しかけるようになった。
エリンのことを聞かれた。
「どんな話をするの?」
「どんな方?」
サーラは「素敵な方です。優しくして下さいます」と答える。
公園で絵を売る客引き仲間とは言えない。
「サーラ様ともお話してみたかったのです。絵がお上手ですし。サーラ様はおきれいですし。近寄りがたくて。」
サーラは数名の令嬢と友達になり、たまにお茶会に呼ばれるようになった。
エリンとバートと、時々あちこちの公園へ行き、似顔絵を売る。
エリンとバートとの会話も楽しい。
サーラの絵を喜んでくれる人の声がサーラに自信をくれる。
絵描きの休憩の時にサーラは聞いた。
「エリンとバートはお付き合いしてるんですか?」
「友達よ。幼なじみ。相棒」
エリンが答える。
「よく一緒にでかけてるし、パーティーのエスコートもしてるから、学園ではお付き合いしてると思われてますよ」
「俺はエリンの虫除けみたいなもんだ。」
「持ちつ持たれつの相方ね。友達。」
「今んとこはな」バートが小さく言った。
「そうねえ。出会いはローラン子爵領地の小川だったわね。」
エリンが話し始めた。
あの頃は毎日お腹が空いていた。家に食べ物が無かった。没落したばかりの8歳の時。
何か落ちてないかなー?果物が木になってないかなー?
食べ物を探してフラフラ歩いていると、川で釣り糸を垂らす少年がいた。
少年の横にある木桶に魚が3匹!
「これ、欲しい!」
エリンが魚の入った木桶をつかむ。目がイッチャッテル。
ボサボサ髪だか、キレイな顔して、服は元は良いものみたいだか、洗いざらしでほつれてる。
「なんだ!?おまえ誰?」
「私エリン!これどうやったの?」
「釣ったんだよ。川にいるだろ?魚。見てみ」
少年が川を指差す。
エリンが川を覗き込む。
魚がいる!美味しそう!
エリンが覗き込みすぎて、川に吸い込まれる。
「おい!」
少年がエリンをつかもうとし、服をつかんだが一緒に川に落ちた。川は流れが穏やかだが、子供には深い。
少年がエリンを岸に上げ、自分も上がる。
全身ビショヌレ。
ボーゼン。この少年がバートだ。
文句を言おうとして、バートはエリンを見たがギョッとした。
エリンは服を脱いでいた。バートがポカンとしてる間に全部脱ぎ終えた。
そして絞っている。広げて日向の草の上に置いたり木にかけたり。素っぱだかで。ちょこまかと動き回っている。
バートに「風邪を引くから、あなたも脱いだら?」
美しい少女が素っぱだか。うっかりシッカリ眺めてしまっていた。
正気を取り戻したバートは荷物と一緒に置いてあった自分の上着をエリンに被せた。
「ありがとう」
ニコッとした笑顔がものすごく可愛かった。バートの心臓が高鳴る。
バートは背が高い。エリンは小柄。
同じ年頃か、自分より少し下くらいの可愛い女の子。
バートも下着になり、服を干して木陰で過ごした。
バートのお弁当をもらい、エリンはゴキゲン。いつの間にか眠っていた。バートの腕枕でスヤスヤ。上着から出ている脚。少年の初恋の始まりだった。
「まいった。」
バートがエリンの寝顔を見て言った。
この日バートが釣った魚は全てエリンに献上された。
この日からバートはエリンに振り回されている。
「衝撃的な出会いですね。」
サーラの笑顔が引きつる。貴族令嬢にはありえないシチュエーションだ。
「出会って5分で裸の仲よねー。」エリン。
「その言い方は誤解を生む。」バート。
「漫才の相方のようです。息がピッタリ。」サーラ。
「まあ、そういう縁もあり、エリンちの借金の事もうちが引き受けてるし、長い付き合いだよな。」バート。
「半分家族みたいな?」エリン。
「そうなれたら良いな」バート。
「うちの家族はバートの事も好きだよ。半分家族。顔パスでしょ。」
「いやー。そうじゃなくて。今では無く、将来的な。ええと、もういいや。お前んち行ったらアーサーはぎこちないぞ。俺を警戒してるね。アーサーはエリンの弟な。」
「アーサーはお姉ちゃん子だから。」
「エリンのおうち、行ってみたいです。」サーラ。
「借金まみれで、歓待出来無い。水しか出せないの。ゴメン。今もお祖母様の家、イトコんちに居候だし。」
「じゃあ、私の家に来てください!来てくれたらすっごい嬉しいです!」
「アリガトー。」
「ホントに来てください。ネコのアレクサンダーが可愛いんですよ。今日にでもどうぞ!」
令嬢の家に行くのは、とバートは遠慮した。
以降、エリンはサーラの家に遊びに行くようになった。お泊り会をしたり、二人は親友になった。
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