疑問ばかりです
マデリーンはルドガーにエルンストの伝言を伝えた。
ルドガーも意外だった。
精霊姫の生母、エリンを指しての伝言。エリンとの想い出を忘れない、とは脅しだろうか?
エリンとの約束?
エリンからは何も聞いていない。
今となっては聞くことも出来ない。
エリンは記憶を失っている。
マデリーンは9年前の出来事を忘れられない。
マデリーンはエリンに許されない事をしてしまった。
フェリシティーを産んだあと、エリンはフェリシティーが離乳食に移行する時期に姿を消した。
マデリーンとの約束だった。
エリンはマデリーンの手の者に守られて離宮を出て、王太子ルドガー所有の邸宅に移るはずだった。
マデリーンの腹心の女官テレサとメイド、護衛3名をエリンに差し向けた。途中でテレサとメイドとエリンが姿を消した、と護衛が戻ったのだ。
エリンとテレサらの行方はわからず、テレサの遺体のみがスラム街で発見された。
初めはテレサも被害者だと思っていた。
しかし、王太子がテレサを調べると経歴におかしな点があり、テレサはプロンシアーナに情報を流している痕跡があった。
マデリーンはエリンを敵に渡してしまったのだ。
大々的に捜索もできず、半年ほど後、エリンはサンフォーク公爵家別邸の使用人玄関に眠らされた状態で発見された。
ちょうど公爵夫人が別邸に訪れている時に。
公爵夫人はマデリーンからエリンの捜索を聞いており、すぐに別邸の使用人らに口止めし、王宮に使いを出した。
エリンは数日間、目を覚まさなかった。
エリンが目を覚ました時は王宮にいた。
エリンは黙して語らず、忘却薬を欲した。
最初の約束通りに、と。
マデリーンはエリンに忘却薬を与え、王家所有の領地の教会にエリンを託した。
行方不明の間にエリンの身に何かあったか、マデリーンは知らない。
エリンが忘れたいなら、その希望を叶える事しかマデリーンには出来なかった。
プロンシアーナの王太子エルンストに伝言を託したのは、プロンシアーナ王セインだろう。
9年前、セインはプロンシアーナの第3王子だった。
前王ロルフィンは好戦的な王であり、恐怖政治をしていた。
王太子ブランドンも冷徹な性格と噂されていた。
12年ほど前、プロンシアーナの東側にあった2国が滅ぼされた。フランセーアは大陸の西側に位置している。
遠い小国の2国であったが、武力で制圧したプロンシアーナの非道な行ないは非難すべきものだ。
大陸ではフランセーアを中心にプロンシアーナへの共同戦線を成す条約を締結した。
対プロンシアーナで各国は連携した。
しかし、その後、9年ほど前プロンシアーナは複数の王妃のうち、数名が死亡したり、高官重臣が暗殺されたりした。国の内部で何かが起こり、他国への干渉が無かった。
最終的に、8年ほど前、プロンシアーナは政変が起こった。
第2王子と第3王子が協力し、軍と文官を味方につけクーデターを起こした。
前王と王太子を拘束し、牢に入れた。
様々な罪が暴かれた。
前王と王太子は、未だに幽閉されているらしい。
第3王子が即位し、今に至る。
エリンを攫ったのはプロンシアーナ、セイン王なのだろうか。行方不明の間にエリンとセイン王の間に何があったのか?
セイン王はエリンがフェリシティーの生母と知っている。
アメジストを好む方、とはエリンの瞳のアメジスト色を好むセイン王という意味だろう。
ベルンハルト一家の移住を目前とした時期に、フェリシティーの秘密を盾にアリステア王国を脅しているのか?
それにしては軍の縮小をお互いにしよう、と言う。戦意がないとも言う。
プロンシアーナの真意がわからなかった。
エリンがフェリシティーの生母であることは、限られた者しか知らない。
あの時離宮にいた侍女、料理人などは忘却薬で全て忘れさせた。その契約で雇った者達だ。
フェリシティーの出生はベルンハルトとサーラ、マデリーンとルドガー王のみが知る。
あとは、死んたテレサと、一緒に行方不明となったメイド1名。
テレサがプロンシアーナ側に情報を流したのか。
プロンシアーナはフランセーアとアリステアの結び付きを壊したいのだろうか?
しかし、なぜマデリーンに接触して、意味深な言葉を伝えたのか。
9年前、マデリーンはベルンハルトにエリンの行方不明を知らせなかった。心配と罪悪感を持たせるだけだ。
マデリーンとルドガーは、疑問と不安と共にアリステアに帰国したのだった。
あまり話が進まなくてスイマセン。




