エルドの初恋
少し戻って、エルドの気持ち、心境の変化です。
ベルンハルト達がアリステアに帰国する前に、エルドが訪問しての帰り道。
馬車の中でエルドが従者に話しかけた。
「どうだった?好感度、あがったかな?」
「上がりましたよ!(最底辺だったから、上がっただろう。いや、気味悪く思われたかもな)」
「そうだよな。ケンカにならなかった!上出来だ。頑張ったぞ、俺!」
「はい、とても紳士な振る舞い、言動をされてました!(普通はケンカしない。爬虫類昆虫類、両生類を投げ合うなど、ありえないんだよ!)」
(注意、従者の()は心の声です。)
「いい感じの王子様を演じられていたよな!?」
「はい。(今迄が最悪でしたから)良かったですよ。」
「これで、ジェフリーやシモンと同じ様に話をしてくれるハズ!手紙や贈り物を受け取ってくれるハズ!移住する頃には、婚約!」
「だから、急がない事です。信頼は時間をかけて築くものです。また逆戻りしますよ。」
「そうだな。周りの助言を聞いて、冷静に行動するんだ、俺は。これからは。」
「リカルド様やシェリー様がおっしゃる通り、教養を身に着け、品性を良くし、勉学を積む事。騎士として
立派になる事です。
ヘビやヤモリ、カエルを投げあっていては、恋など生まれません。」
「わかった。もう言うな。」
従者のハロッドはエルドの乳兄弟だ。
エルドの初恋をどうにかすべく、エルドに助言して来た。こどごとくエルドはハロッドの助言を無視した。
エルドは大国フランセーアの王子。
嫡子のリカルドの妃は、隣国アリステアの姫と王太后が決めていた。
なので、フランセーアの将来の王弟妃となる、エルドの妃の座を狙う上位貴族は多い。恐らくエルドは公爵位を賜る。
フランセーアでは幼い令嬢は皆、エルドにチヤホヤしていた。
茶会ではエルドの気を引こうとする幼い令嬢が争いを繰り広げていた。
エルドは自分はモテると勘違いしていたのだ。アホだった。
ハロッドがリカルドに助けを求め、リカルドとシェリー、さらに母の王太子妃がエルドに懇懇と説明した。
エルドが王子だから、令嬢が寄ってきているだけ。
フェリシティーにした言動が、どの様に受け取られたかの説明。
フェリシティーはエルドを嫌っている。そうしたのはエルド。
特にシェリーがトドメをさした。
「自分の母親を平民妃と蔑むなど、人格として最低と判断しますね。好きになるなどあり得ません。毎回低俗なケンカをして。フェリシティー姫はエルド様をゲジゲジと同格の如く、嫌ってますよ!」
エルドは暗い顔をしてして黙って聞いた。
「もう、存在を無いものとして、扱っていましたね。嫌ってますし、当然ですが、怒ってます。」シェリー。
「どうすればフェリシティーに好きになってもらえるんだ?」
エルドがシェリーに聞いた。
「エルド様は、見た目は良いですよ。リカルド様に似て、ステキです。要は、中身を磨くことです。
勉学に励み、品良く!教養を身につければ内面からにじみ出ます。紳士を目指すのです。
あと、強くなるとカッコ良いです!女心が撃ち抜かれます。文武両道が最高にもてます。
フェリシティー姫は馬が好きとおっしゃってました。
乗馬の練習も頑張ってください。
とりあえす、フェリシティー姫が帰国前に、キチンと謝りましょう。少しでも印象を良くしましょう。猫をかぶり、紳士の振る舞いを見せておくのです。」
リカルド、王太子妃がシェリーに拍手した。
「そうよ!仲直りしておかないと。手紙や贈り物ができないわ。」王太子妃。
「今の状態だと、手紙も受け付けてもらえないな。キチンと謝りに行け。
何通りかの受け答えをシュミレーションして練習しよう。付き合うよ。
お前のバカ騒ぎのおかげで、シェリーと婚約できたからな。」王太子は機嫌良く言った。
リカルド、シェリー、母の王太子妃が協力してエルドの振る舞い、言葉を監修した。
シェリーの発案でフェリシティーが欲しがっていた絵を手に入れる手配をした。
王太子妃が絵を入れる額縁を特別注文して作らせた。女の子が好みそうな美しい彫金を施した額縁だ。
リカルドとエルドが王太后に頼み込み、王宮で保管していたフェリシティーの絵を貰い受けた。
毎年アリステア王国から贈られた絵だった。
エルドはこの絵を数年前から見ていた。
王家の姫を事実以上に美しく描く事は多々ある。
絵の美しく可愛らしい女の子に見とれたが、実物はこれ程では無いと思っていた。
この絵の女の子がおそらく兄の婚約者になる、と聞いて、ひどくがっかりした。自分を慰めるため、絵より可愛くないはず、と思い込もうとしていた。
それが、絵以上に可愛らしい女の子が王宮に現れた。動いて話をしていた。夢?幻か?
なんて可愛らしいんだ。声も良い。仕草も良い。すべてが素晴らしい。キラキラ輝いて見える。
この子が、いずれ兄上の婚約者だなんて。
地獄に突き落とされたかの様な気持ちになった。
兄上はシェリーが好きなのに。
こんなの、おかしい!
気がついたら訳のわからない言葉を口走り。
フェリシティーを激怒させた事に混乱して、また間違った言葉を口走った。
謝らねば!と思いこみ、花束と指輪を用意した。
父からのプロポーズを母上から何度も聞いていたから、それを再現しようとした。
結果は、フェリシティーにもベルンハルト殿下にも嫌われた。
もうダメだ。
フェリシティーは従兄弟らと楽しそうに話をするのに、自分は完全に無視だ。
絶望感に苛まれていたら、兄上がフェリシティーと仮婚約すると聞いた。
兄上はシェリーが好きなくせに!
我慢できずに離宮に乗り込み、喚き散らしてしまった。
結果、兄上とフェリシティーの仮婚約は無くなった。
しかし、自分とフェリシティーの険悪な仲はそのまま、いや、もっと悪くなった。
どうすればフェリシティーに好かれるんだ?
やっとハロッドの言葉が聞こえてきた。
どんどん悪くなる状況をなんとかしようとし、自分でますます、悪くした。どうすれば良いか、助けを求めた。
急ごしらえの好感度上げ王子を演じたエルド。
フェリシティーに再会するまでに、自分磨きをする決心を固めた。
ジェフリーとシモンというライバルがいるのだ。
二人共、乗馬を熱心に稽古し始めたらしい。
負けるもんか!
エルド、ガンバレ。




