アリステアに帰国しました
ベルンハルト一家がフランセーアに移住する事をアリステア王国、父と兄に了承してもらわないといけません。
フランセーアから帰国後、ベルンハルトだけはアリステア王国の王宮へ向かった。
サーラとフェリシティーは自宅の邸にいる。
ベルンハルトは一人、王宮に滞在していた。
フランセーアの出した条件はアリステアには願ってもない案だった。
軍事においてプロンシアーナへの牽制が甚だしい。
引き続きフランセーアとの貿易で関税かかからない事もアリステアにとって利がある。
しかし、ベルンハルトは第2王子だ。他国へやるには問題がある。今、王位継承権第二位。放棄したとしても、血統は揺るぎないものだ。
会議は紛糾していた。
父王が目を閉じ、告げた。
「退位する。王太子が即位せよ。そうすれば王位継承権は王太子の息子二人が優先される。ベルンハルトは王位継承権第3位になる。ベルンハルトが国外にある時は王位継承権が無い事にせよ。アリステアに戻れば継承権は復活とする。」
室内が急に静かになった。
王がベルンハルトのフランセーア移住を押している。
王位を退くと言う事も国の一大事である。
王太子は苦しそうな表情だ。
可愛い弟。政務や家族のこと、どんな悩みでも相談できる信頼できる身内だ。
ベルンハルトの政治の助言は的を得ていた。
留学して見聞を広めたベルンハルト。市街へ出て民衆の望む所をよく拾ってくる。将来自分の片腕となるべき存在。
ベルンハルト一家をフランセーアに売るようなものだった。引き換えにアリステアはプロンシアーナへの大きな牽制を手に入れる。プロンシアーナがアリステアを攻撃する恐れが無くなる。国防費を縮小できる。
また、フランセーアとの関税が無い事はアリステアにとって利ばかりだ。
そして、ベルンハルト自身がフランセーアへ行く意志を表している。
王太子はベルンハルトがサーラとフェリシティーを王宮に連れて来ない事、人目につかないよう気を配っている事に心当たりがある。
サーラへの蔑称。
そして、ベルンハルトは口にしないが、フェリシティーが生母に似ている事。
エリンは交友が広くないが、その美貌ゆえにひと目見た人はエリンを忘れない。
王太子もフェリシティーを見て、早くフランセーアにやった方が良いと思っていた。
しかし、ベルンハルトごと行く事になるとは思っていなかった。
王子が他国に移住とは。
フランセーアはベルンハルト一家の永住を望んでいる。
王太子はベルンハルトを信頼している。
3年内に移住し、その後フェリシティーが成人して結婚したあと、ベルンハルトがアリステアに戻る事を提案した。
10年から15年の不在で済む。
しかし、父王がその案を蹴った。
「未来はわからぬ。
ラミーナはアリステアに来て、祖国に一度たりと帰らなかった。ベルンハルトがアリステアに戻らぬこととなっても、仕方がない。
その地で暮らし生きる、お互い幸福であるなら、喜ばしいことだ。
他国にあろうと、親子であり兄弟である。それを忘れるな。」
フランセーアの条件を受け入れ、ベルンハルトの移住が決まった。
フランセーアに使者が出される。
会議は終了した。
ベルンハルトと兄王太子、父王が残った。
「気安く話そうか。良い条件をもらえたな。ベルンハルト。フランセーア王家はお前を気に入ったのだな。」王。
「フェリシティーが精霊の泉と大樹の祝福を得ましたから。」ベルンハルト。
「ああ、フランセーアでは民衆が歓喜に湧いているそうだな。ラミーナと同じように、桁違いの祝福だと。」王。
「はい。民衆のフェリシティーへの期待や精霊の祝福への信仰を感じました。フランセーアの王室も、そのためにフェリシティーを王室に迎えたいようです。」
「嫡子のリカルド王子との婚約かと思ったが、なにがあったのだ?」王太子。
「リカルドは又従兄弟のシェリーと恋仲だったので、白紙になりました。」ベルンハルト。
「そうか。他にも王子がいたから、その内からフェリシティーの結婚相手が決まるとよいか。」王。
「自然に任せます。フェリシティーは言われたままに従う娘ではありません。
今回、フランセーアに行き、三十年前の約定の撤回と、新たなアリステアに有利な約定を得ることが出来ました。フェリシティーのおかげです。」
ベルンハルトはフランセーアの様子を話した。
王太后に王や王太子が逆らえない様子や、重臣高官らも王太后の意向に重きをなしていた。
「王太后様はご健在だな。あの人は二十歳そこそこから、ほぼ一人で政務を行っていた。前王の崩御からは表には出ないが、フランセーアの政治はあの方を中心に行なわれていた。旧王室の出だ。精霊の祝福を得る人とは違う。」王。
「そのことではわからない事ばかりでした。父上は精霊の祝福について、何か思うところがございますか?」
「前王もラミーナも、善意はあれど私欲のない人だった。人生に起こる事を受け入れて抗わない、そんな所があった。ひょうひょうとしていた。
王太后は生気にあふれ、私利私欲もありつつ、バランスをとって、舵を切る。政治家だな。清濁併せ呑みつつ、我を失わない。尊敬に値するが、目的のためなら感情を殺す方だ。
なるほどな。曾孫と国事との間で、さぞ狼狽えたであろうな。」
「王太后様は確かにそのような方でしたね。その、聞きにくいのですが、母上は精霊の祝福を受けていたのに、なぜ病を癒そうとしなかったのでしょうか?フランセーアへ戻り、泉の水と大樹の葉で治ったのではないのですか?」
ベルンハルトが父王に聞いた。。王太子は目を伏せた。
「ラミーナは、拒否した。神様のくださった分を生きて、幸せだった、と。一度、子供の時に精霊の祝福で生を永らえて、もう十分いただいた、と。
私と子供を置いて逝ったことを、私は受け入れ難かった。
ラミーナは、フランセーアから出たかった。政争の元になりたくなかった。私を好いていたわけではない。」王が淡々と告げた。
王太子は知っていたようだ。昔に王に問うたのだろう。
ベルンハルトは傷ついた父に言った。
「母上は幸せそうでした。私の目には父上を好いているように見えました。」ベルンハルト。
「ならばなぜ、生きようとしなかったのだ?もういい。ラミーナの話はやめよう。」
アリステア王は首を振った。辛い思いを離すように。
「ところで、フェリシティーと第二王子のエルド殿下が恋仲と噂がたっておる。本当か?」王。
「私も聞いた。エルド殿下がフェリシティーに会いに足蹴く離宮に通ったとか。プレゼントを何度も贈りあったとか。エルド殿下がフェリシティーにプロポーズしたとか。
エルド殿下がフェリシティーに好意を示している、と聞いた。フランセーアの王室もそれを歓迎している、と。まだ7歳だか、エルド殿下と婚約するのか?
その、エルド殿下が早朝、フェリシティーの寝室から
出てきたと聞いた。醜聞が出るのは感心しないな。」
王太子。
「寝室とは、子供とは言え、いかんな。しかし、公に抗議文を送ればフェリシティーに傷がつく。
ベルンハルト、お前も認めた仲なのか?」王。
立て続けて言われた言葉に、ベルンハルトは驚いて目をみはる。
正解のようであって、事実でない。
出立間際のエルドを見ると、フェリシティーに好意があるかも知れない。しかし、凄まじいケンカを繰り広げたのに、何をどうすればプレゼントを贈り合う、に変換されたのだ?爬虫類、両生類、昆虫を投げ合っていたのに。
少なくとも、フェリシティーがエルドに何か贈ったことはない。
ベルンハルトはフェリシティーが何をしたか、父王と兄に話す羽目になった。
練り練りして頭の中でまとまりがついた続きを書き書き中です。




