帰国の前に
ベルンハルト一家はアリステアに帰国します。
帰国のため慌ただしく支度している最中、エルドが馬車を離宮につけた。
ベルンハルトが玄関で出迎える。
「エルド殿下、来ていただき歓迎したいところでございますが、あいにく忙しくしておりまして」
「急に訪問して申し訳ありません。少しの間、お時間いただきたいのです。
この離宮は、今日よりベルンハルト殿下の物となります。殿下がお帰りになるまで王宮が管理致します。
それが明言されている書状でございます。」
エルドが王家の紋章入の書状をベルンハルトに渡した。
「王都でお過ごしの際はこの離宮で、との事です。陛下、王太后様からのお気持ちです。お受け取り下さい。
あと、贈り物がございます。」
馬車から侍従や護衛の騎士が荷物を離宮に運び入れた。
ベルンハルトがエルドをサロンに通す。荷物が運ばれてきた。
丁寧に梱包を解くと、数枚の絵が立派な額縁におさめられていた。
眠る可愛らしい金髪の赤子の絵。
クッションに囲まれて座り、ニコニコした赤子の絵。
部屋で絵本を見ている幼子の絵。
庭園で花を背にして犬と座っている幼い女の子の絵。
大きな木の枝にぶら下げたブランコに乗って微笑む女の子。
焦げ茶のポニーに乗る女の子。
どの絵も生き生きと描かれている。
赤子のフェリシティーの成長がわかる絵。
そして、描き手と対象が深く信頼しあっていることがわかる。描いたのはサーラだ。
ベルンハルトは一枚一枚を見て思い出す。
我が子の成長と、それを愛おしく描く妻の姿。
「アリステア王国から贈られた絵です。
王宮で大切にして来ました。
サーラ様の渾身の作品かと思われます。」エルド。
「そうです。懐かしい。」ベルンハルト。
「これからはこの離宮で、この絵の続きを描いて下さい。ベルンハルト殿下御一家がフランセーアで幸福に暮らせるよう、王家が支援すると約束します。との事です」
フェリシティーが走って部屋に入ってきた。
別人のように穏やかに微笑むエルドと、父ベルンハルトを見て、元気良く入室したが押し黙った。そして、絵を見て、目を見開いた。
サーラもフェリシティーを追い掛けて来たようだ。
「失礼します。」と入って来た。
絵を見てフェリシティーとサーラが嬉しそうに驚いている。
「ライトだわ!これ、私!お母様が描いてくれた絵だわ!これも。シルバと私だわ。」
フェリシティーが嬉しそうだ。
エルドが3枚の絵をフェリシティーに差し出した。
ベルンハルトが若い。学園時代の絵だ。
少年の姿で、本を読むベルンハルト。
斜めにいる誰かに向けて大きく笑うベルンハルト。
ほぼ正面で、にこやかに笑みを浮かべるベルンハルト。白黒のスケッチ画。
「この間、ジェフリー達と話していただろう?フランセーアで話題になっている、学園時代のベルンハルト殿下の絵だ。サーラ妃殿下が描かれた。
欲しい、と言っていたから。」
フェリシティーが怪訝な顔をした。
こいつ、私をキライなはずなのに?
エルドが3枚の絵を、カチャカチャと繋げた。
「この額縁は、繋げられるんだ。ここを引っ掛けてカチンとしたら外れない。3枚を立てて飾ってもいいし、離して壁に掛けてもいい。プレゼントするよ。」
「、、、ありがとう」フェリシティー。
「ひどい言葉を言って、すまなかった。俺が礼を欠いていた。反撃されて当然だ。許してもらえるとは思わないが、俺が謝ったとだけ、わかっててくれ。
平民妃と、悪口を言って誠に申し訳なかった。傷つけた。ごめんなさい。」
重ねて謝るエルド。
「急に言われても、困る。あなた、本当にエルド?ソックリさんじゃないの?」信じられない顔で訝しげにフェリシティーが言う。
「こっちがいつもの僕だよ。本当に失礼した。」
微笑みながらエルドはフェリシティーに言う。
「お忙しい中、時間をとらせて申し訳ない。そろそろお暇します。またフランセーアに来て下さる時を楽しみにしてます。」
ベルンハルトとサーラに言うエルド。
少しはにかみながら、エルドが続けて言った。
「本当はこの使者には宰相補佐がなるはずでした。無理を言って僕が代わってもらったのです。キチンと謝りたくて。」
最後の方はフェリシティーに向けて言うエルド。
紳士の礼をして帰って行った。
フェリシティーの絵は夫婦の寝室に飾られた。
「これを描いていた時を思い出すわ。」
「うん。ホントに懐かしい。この絵がある、ここがこれからは俺たちの家になるんだ。帰ってこよう。」
ベルンハルトの絵はフェリシティーが持ち帰ると言う。
「これ、お母様がお父様を描いたのでしょう?私がもらったから、私の!
この頃から、お母様たちは仲良しだったんでしょう?ステキだわ。私の部屋に飾るの。」
黙るサーラとベルンハルト。ホントの事は言えない。
フランセーアでは思い掛けず、色々な出来事が起こった。ともかく、帰国だ。
ベルンハルト一家は帰国の途についた。
お読みいただきありがとうございます。
構想をねっているので、まとまり、書き上げる目処がつくまで、遅くなります。ある程度書き溜めてから、見直しながら出してるので。よろしくお願いします。




