そのケンカのやり方は迷惑です
仮婚約、決まる、のか?
ベルンハルトが離宮に帰宅した。
サーラが出迎えた。
離宮では王子たちとフェリシティーが仲良く遊び、帰宅した後だった。(エルド以外)
ベルンハルトがサーラに王宮での事を伝えた。
王宮が用意した証書ができたら、アリステアに帰る事。
リカルド殿下とフェリシティーが内輪の仮婚約となった、とサーラに告げた。
覚悟していた事だったので、サーラは、「そう。」と頷いた。
フェリシティーは女の子たちと仲良くなれて楽しかったようだ。機嫌が良かった。
アリステアでは従兄弟は皆年上で、自分と同じ年頃や下の女の子と遊んだ事が無かった。オリビアとローズが可愛かった。
ベルンハルトとサーラは、フェリシティーにフランセーアに住む事を伝えた。
一度帰国して、数年後に家族で移り住むと説明され、フェリシティーは驚いていた。
フェリシティーには仮婚約は伝えていない。ベルンハルトらはフェリシティーの意志を尊重するつもりだった。
翌日の午後、早速証書を持った宰相補佐が離宮を訪れた。
ベルンハルトとサーラに内容を見せて確認を取る。
王国紋章の入った証書。
この草案でベルンハルトが条件を飲めば、そのままアリステアに持ち帰り詮議することになる。
内容はこのようなものであった。
フェリシティーとリカルドの仮婚約を結ぶこと。
フランセーアはいずれリカルドに王位を継承する。その時、仮婚約のち、本婚約となっていればフェリシティーを王妃とする。
ベルンハルト一家がフランセーアに移住する時、3年内であれば、公爵位と領地を与える。それらはベルンハルトの子孫に継承する。3年以降の移住は一代の公爵位のみ。
もしもフェリシティーが他の王子と婚約、結婚を希望した時、フランセーアは状況に応じてそれを受け入れる。
他の貴族との婚姻の場合は王族会議により処遇を決めること。
アリステア王国との友好を保証する事。関税を引き続きかけないこと。
さらにベルンハルト一家がフランセーアに住む限り、アリステア王国が他国に攻撃された場合、アリステア王国の要請があればフランセーア軍を出し、共に戦う
同盟国であると内外に表明する、と付け加えられていた。
フランセーア王のサインがある。
ベルンハルト一家の移住を強く望む文言だ。
これをアリステアに持ち帰り、父王と兄上、大臣や高官らと会議だ。
ベルンハルトはこの書証の重みを考えた。
フェリシティーのみならず、自分とサーラの未来、アリステア王国とフランセーアの未来がこの証書によって左右される。
ベルンハルトの手が震えた。
なにやら庭が騒がしくなった。
騒々しい声が聞こえる。
「またあんたか!何しに来たのよ!」
「結婚相手なら、俺にしろっつたろ!へーみんひの娘が王妃になるな!」
「なんのことよ!わけわかんないこと、言いに来んな!帰れ!お母様の悪口は許さない!」
「この、カエル女が!」
エルドがカエルをフェリシティーに投げた。
フェリシティーよける。後ろのメイドに当たる。メイド悲鳴を上げる。
フェリシティーがいちおう準備していたカエルが満杯の箱をエルドに投げる。
エルドカエルまみれ。
エルド、カエルを半泣きではがす。
フェリシティーさらにヤモリとヘビをエルドに投げる。
「俺はフランセーアの王子だそ!牢屋へぶち込んでやる!クソ女!ブズ!へーみん!」
「ブスで結構!バカ王子!早く帰れ!二度とくんな!」
窓の外の不祥事をどうすべきか?
宰相補佐もベルンハルトも気まずい。
サーラが席を立つ。断りを入れて部屋を出ていった。廊下を走る足音がする。
心の中で、ベルンハルトは「サーラ、早く止めて」と祈った。
「こんな頭おかしい女が王妃なんて無理だ!兄上はお前なんか好きじゃないんだよ!」
「なんのこと言ってんのよ!あんたこそ頭おかしいわ!帰れ!」
「兄上はシェリーが好きなんだよ!だけど、へーみんの頭おかしいお前と婚約しなきゃならない、って可愛そうだろ!」
窓の外の声に宰相補佐がガタン!と椅子から立った。
「お似合いじゃない。私は邪魔なんかしないわよ!リカルドとシェリーが婚約すればいいじゃない!ご自由にどうぞ!私は誰の邪魔もしないわ!
そんなにお兄さんが好きならあんたがリカルドと結婚したって、私は祝福するわよ!オメデトー!オメデトー!」
「ざけんな!兄上はずっとシェリーが好きだし、シェリーも兄上が好きなんだよ!
なのに、お前と兄上が婚約なんて、おかしいだろ!可愛そうだろ!フランセーアのためだって、兄上はシェリーをあきらめるって言ったんだ。だから、俺が我慢して兄上のかわりにお前の婚約者になってやらあ!」
「おととい来やがれ!私は誰とも婚約なんかしない!あんたと婚約するくらいなら、プロンシアーナ王国に亡命するわ!あんたなんか、世界一キライ!」
庭でコクサイモンダイが発生している。
宰相補佐は顔色が悪い。
「なんてことだ。もう決定してしまったし。いや、報告すべきか?」
宰相補佐か独り言を言っている。混乱しているようだ。
ベルンハルトも動揺していた。
リカルドは他に好きな子がいるのに、国のためにフェリシティーとの婚約を言い出したのか?それはフェリシティーを幸せにしないだろう。
宰相補佐がベルンハルトに困った様に話し始めた。
「シェリー姫はラメル王国から縁談があり、承諾の返事を昨日、使者に持たせて出したのです。」
「はあ?」
「本当にリカルド王子とシェリー姫が思い合っているなら!しかし、リカルド様とフェリシティー姫の仮婚約は王太后様がお喜びしているし。」
「その、とりあえず承諾の手紙は追いかけて止めて、王子とシェリー姫に確認してみては?」ベルンハルト。
「そう、ですね。一度王宮に帰って、宰相に相談せねば。」
「いえ、使者を追いかけましょう。ラメル王国に婚約を承諾してすぐに破棄しては、失礼ですよ。」
「そうですね!すぐに追いかけさせます!急げば国境を超えずに使者を押さえられます。」
宰相補佐は連れてきた護衛騎士らの中で駿馬を持つ数名に説明し、急ぎ書いた手紙を持たせて使者を追いかけさせた。
宰相補佐は王宮へ急ぎ戻ることになった。
「申し訳ない」
と宰相補佐は離宮を慌てて辞した。
リカルドとの仮婚約も白紙に戻るかもしれないので、証書も持ち帰った。
庭ではヤモリとヘビとカエルなどが飛び交っていた。罵り合いの声が聞こえる。
サーラの「やめなさい!」という声。
メイドが叫んでる。
「ギャー!ヘビとってー!いやー!」
「服の中にはいったあ!いやあー!」
「メイド殿、ここで脱いてはいけません!せめて邸内で!」うろたえる護衛騎士の声。
「いやあああ!変なとこで動いてるううう!!!」
「脱がないで下さい!困ります!」
フェリシティーがエルドにダンゴムシとミミズの入ったバケツを頭からぶっかけた。エルドが木の下に来た時、留めておいた紐を外したのだ。
エルドの髪の毛、服の中にダンゴムシとミミズが大量に!
「ギャアア!」
エルド叫ぶ!服を脱ぐ。体を揺らし、虫をはらおうとしている。
エルド半泣き。
「信じられねえ!バカオンナ!シネ!シネ!許さねえ!」
エルドの髪や服からダンゴムシとミミズがポトポト落ちる。
「王子!」護衛騎士が駆け寄る。
メイドは王子に近寄れない。
下着姿、半裸のメイドが呆然と座り込んでいる。あ、マリンだ。着やせするタイプだったのか。見事な胸だ。腰が抜けたらしい。
護衛騎士長がマリンにマントをかぶせ、抱えて邸に連れて行った。
エルドは邸内で服を脱いで体を拭かれ、着替えて王宮に帰って行った。
サーラも昆虫やヘビが服について気持ち悪くなって湯浴みに行った。
ベルンハルトは一人、途方に暮れた。
えっと、これ、どーなるの?
お読みいただいてありがとうございます。
一つずつブックマークが付いて、見知らぬ誰かが読んでくれたのだな、と喜んでます。ありがとうございます。




