王太后の話は長いです。
王太后とお話し中です。
「王位に付きたくない者のみに、精霊の泉と大樹が祝福をあたえる、ということですか?」ベルンハルト。
「ええ、そう。無欲である事だと思うの。私が思うだけだから、確かではないと思って聞いて。
前王が現れるまで100年間、誰も祝福を受けなかった。私もね。
フランセーアはこの大陸で1番大きな国です。王族に生まれ、王位に着ける立場にいながら、王位に全く興味を持たないでいることは難しいわ。
前王は全く思ってなかったし、王になりたくない人だった。
息子たちもよ。息子たちが小さい頃に前王は王宮を去りました。
城の者達から無責任な王の息子、下賤の血を引く王子、と陰口を叩かれていました。
たまたま父親は精霊の祝福を得たけれど、祝福を得ることが出来なければ、城から出ていけ、ってね。
元王族の尊い血筋を持った貴族が王になるべき、とする一派がいたの。
ただ、王がいなくなっても、精霊の泉の水は枯れなかった。
毎日すべき事が山積みでした。
私は政務をしなくてはならなかった。なんで父親だけ勝手に好きに生きて、母親の私が苦労してるのか。
幼い息子たちは不満だったでしょう。
こんな意地悪な奴らだらけの王宮を出たい、って言われました。
でも、私は王族として、王妃として生きる事を選びました。
息子たちは祈りの儀式の年齢となり、祝福を得ました。7歳以降に祈るの。
あなた達程ではないけれど、泉から水が湧きました。
フェリシティーとラミーナは桁違いで、水柱が立つほどの勢いがあったわね。
ベルンハルトも留学時代に祈りの儀式で祝福を得た時でしょう?フランセーアでは大騒ぎだったのよ。やはり精霊姫の子だ、って。どうにかしてフランセーアに来てもらいたいとね。ベルンハルトにはアリステア王国の王位継承権があるから、言えなかったのよ。
あ、でもベルンハルトのお兄様は、精霊の祝福をもらえなかったの。アリステア王になる事を受け入れてるから、当然ね。」
王太后の話にベルンハルトとサーラは唖然とした。
「お待ち下さい。今、精霊の泉と大樹の祝福を得ているのは、陛下と、王弟殿下と、ベルンハルト様とフェリシティーのみ、と?」サーラ。
「そうなの。私としては、ベルンハルトにもフェリシティーにも、祝福が無くても良かったの。
陛下の政治が安定してるから、今のところは政変の兆しは無いけど、ベルンハルトとフェリシティーが王位を継ぐべきと言う派閥が出来るかもね。
どちらかと言うと、私は困っているのよ。あなた方に祝福がある事を。
前王の血を引く私の子供、孫たちを指示する派閥と、その前の高貴な血筋だと思いこんでいる派閥があります。新しく精霊姫フェリシティーを指示する派閥が民衆を中心にできると思います。ラミーナの様に。
私は孫達が祝福を得る事ができないことを、仕方ないと思っているます。
王族に生まれて、王位を望まないでいるのは難しい。逆に、良い王になりたいと望んでいるからだと思うのよ。祝福を得る事ができないのは。」王太后。
「しかし、昔は祝福された王が続いたのでしょう?なぜでしょう。」
「文献を見ると、祝福を受けた無欲な王は象徴的な存在で、実質的な政務は王配と官吏と大臣たちが行なったようよ。昔は合議制だったの。男でも女でも王になったのよ。
祝福を得た王がいるだけで、大きな災害が無いのだから。存在してるだけで良かったらしいわ。」
「どうして変わったのですか?」
「100年前の最後の祝福を得た王の時代、当時は王室が荒れていたようです。文献は紛失されていて詳しくはわかりません。
調べたら、王妃が良くない人のようでした。最後の王の後は、祝福を得ない王族ばかりだったから、王妃は自分の子を王太子にしたわ。
以降は血族を重視して王統を継続して来ました。
私も、その王と王妃の血筋です。旧王室は、この王と王妃の子孫と言うことになるわね。」王太后が言った。
しん、と室内で発言する者はいなくなった。
精霊の祝福とは?
100年の空白があっても、王国は存在し続けた。
前王が突如として祝福を得た?
王太后は祝福がない王でも政治さえキチンとすれば良いと?
しかし、祝福の存在とその恩恵を知る人々は?
だから、と王太后は告げた。
「王太后としていいます。
先の約定は守ってもらいます。フェリシティーはフランセーアに嫁いでもらいます。旧王族に取り込まれないよう、内乱の原因とならないよう、フェリシティーは私の曾孫の王子と婚姻して欲しいの。」
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