王太后様とお話です
フランセーアの王太后から事情を聞かされます。
精霊の泉と大樹の広場は歓声が上がり、歓喜にあふれた。涙を流し喜んでいる人もいる。
何事かと城中から人が集まって来る。
王宮の窓からメイドや護衛騎士が広場を見る。
噴水の様な泉を見て、また大きな歓声が上がる。
城中から歓喜の声があふれた。
ベルンハルト達はフェリシティーを着替えさせるため、女官と共に別室へ下った。
「フェリシティー様に贈るドレスがありますから」
と女官がどれにいたしますか?とフェリシティーに選ばせてくれた。
5着の中から、フェリシティーは動きやすそうなドレスを選んだ。
扉がノックされた。
王太后が部屋に入ってきた。フランセーア王国王太后は70歳位の賢婦人だ。
前王にあてがわれた旧王室の血を引いた女性。前王が失踪後は政務を行い、前王が帰城後も実権を持ち続けた王妃。
「用意したドレスはいかがですか?フェリシティー姫」
「とてもステキです。ありがとうございます。王太后様。」フェリシティー。
「気に入ったようで良かったわ。とても似合ってますね。可愛らしいわ。
ベルンハルト殿下、サーラ妃殿下。楽に話しましょう。」
フェリシティーと女官は部屋を出た。
別室にお菓子を用意していると聞いてフェリシティーは大人しくついて行った。
「ベルンハルト殿下、何度も来国を断られたけど、本当だったのね。人前に出せる行儀が身に付いていないので、って。なんだか気が抜けたわ。」
王太后が言った。
「今回の非礼をお詫び申し上げます。娘が仕出かしたこと、誠に申し訳ございませんでした。
娘はこのように自由奔放に行動してしまいます。大国に非礼があってはと、遠慮しておりました。」
「そうね。フェリシティーには驚きました。
非礼が、と言うのはもうどうでも良いことよ。
精霊の泉と精霊の大樹は、フェリシティーに特別な祝福を見せました。
ラミーナと同じです。
ここまでの祝福を見せられたら、民衆はフェリシティーを信仰するでしょう。帰国は延ばしてもらいたいの。」
「10日ほど、と言う予定でしたが。数日増やすとの事でしょうか?」
「まだはっきり言えないわ。ただ、フェリシティーをアリステア王国へ戻したくないと、皆が思っているでしょうね。」
ベルンハルトとサーラが顔を見合わせて不安顔になる。
王太后が続けた。
「精霊姫、ベルンハルトの母親のラミーナが祝福を得た後、アリステア王国へ嫁ぐまでの10数年間、フランセーアは大きな災害もなく、国中で豊作が続いたのよ。
フェリシティーも同じくらいの祝福だったわ。
民衆はフェリシティーにずっとフランセーアにいて欲しいと願うでしょう。」
「返さない、と?」
ベルンハルトが聞く。笑顔が消えている。
「そんな顔しないで。
帰国させないなんて、それこそアリステア王国との国際問題になってしまいます。
宰相たちが何を言っても、私はあなた方を帰国させますよ。フェリシティーの望まぬことをすれば、神罰がくだる、と言えば大丈夫よ。
この国の王女のラミーナですら、意思を尊重してアリステア王国に出したのよ。」
「王太后様は、フェリシティーをフランセーアに置きたいと望んでおられるのかと思いました。違うのですか?」サーラが聞いた。
「私個人としては国のためにはいてくれたらいい、くらいです。
精霊姫の子を祖国に戻す、というのは、民衆を納得させるためでした。そうしないと、生さぬ仲の私が追い出したように見えるでしょう?
ラミーナの人気は絶大でした。
かつて、前王が市井から王宮に上がり、祝福を得ました。けれど継母にあたる王妃たちから殺されかけて王宮を出ました。
精霊の泉は枯れ、王妃達は雷に打たれ、亡くなりました。
それだけでなく、前王が王宮に戻るまでの数年間、この国は災害続きになったのです。
地震、長雨で洪水、河川の氾濫、山崩れの土砂災害、冷夏に日照り。多数の死者を出し、民は飢えました。
また、そうなる事を恐れる気持ちはわかるでしょう?
だからラミーナはフランセーアでも結婚式をしたのよ。
ラミーナの幸せそうな姿を見せて、ラミーナの望みであり幸福だと知ってもらって、民を納得させたの。
ラミーナほどではないけど、祝福を得た前王と今の王たち、私の息子二人がフランセーアにいたから。
けれど。」
と王太后は続けた。
「私の孫も、曾孫たちも、誰も精霊の泉と大樹の祝福を得ることができなかったの。
だから、フランセーアの人々はフェリシティーを欲するでしょう。」
ベルンハルトとサーラは驚きを隠せない。
「そんな。」
「そこまで大事とは思ってなかったのね。
もう、信仰になっているのよ。
今回は帰国させますよ。信じて。
でもね、遠からず、できたらすぐに私の曾孫の誰かと婚約して欲しい。そして、いずれ結婚して欲しいと願っています。」王太后。
おずおずとサーラが聞いた。
「王太后様は、信仰なさっていないのですか?」
「してますよ。ただ、長く生きて見過ぎてしまったのねえ。身近な人達だからね。」
王太后は一息ついてから言った。
「精霊の泉と大樹の祝福を得た人は、皆、王になりたくない人だったわ。」
王太后は記憶の中で昔を思い出していた。
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