借金令嬢の娘は元気です
7年経ちました。
ベルンハルト一家のお話になります。
時は過ぎて。
フェリシティーは健やかに育っていた。
ベルンハルトとサーラはフェリシティーを大切に育て、夫婦仲も良好だ。
フェリシティーは可愛らしい姫だった。
波打つ濃い金髪。濃い深い青い目。目鼻立ちが整っている。長い手足。
そして、とても元気ハツラツなお転婆娘だった。
公園に連れて行けば小川を覗き込んで落っこちる。
犬がいたら走り寄って手を出して噛まれかけた。
考えるよりも行動してしまい、大惨事を引き起こした。
厨房に入り込み、包丁で野菜を切り刻んで遊び、料理の仕込み途中に忍び込んでひっくり返した。
馬の厩舎に入り込み馬に蹴られかけ。
かくれんぼで厩舎の藁の中に入って眠り込んで行方不明で大騒ぎ。
木に登って落っこちたり。
廊下の飾りの大きな壷に入って通りかかったメイドに「ばあ!」と飛び出してメイドが茶器ごとひっくり返ったり。しかも壷はその勢いで割れたし。
サーラの絵の具を自分の顔に塗りたくって、後ろから声をかけたメイドが、振り返ったフェリシティーの顔を見て失神してぶっ倒れたり。
もちろんサーラはその度にフェリシティーをしかった。
フェリシティーはしかられるとシュンとして、迷惑を掛けた使用人に謝る。
しかし、数日したらまた新しい出来事を引き起こしていた。
ベルンハルトはフェリシティーを可愛がり、
「もうしないんだぞ、今度からは気をつけるんだぞ。怪我したら痛いからな。」
自分も人にも怪我をさせないように言い、フェリシティーのしでかした騒動を笑いながら聞いている。
真剣に怒鳴りつけたりしない。
元気なのは良いけど、元気すぎなんだよ!と王弟夫妻の屋敷の使用人は思っていた、らしい。
それでもフェリシティーの周りの人はフェリシティーを愛していた。
ニコニコして誰にでも話しかける。
偉そうにせず、「ねーねー、リンダ、これなあに?」
「ねえ、セバス、馬って何食べるの?食べないのはなに?」
「マーベル、今日の夕ご飯なあに?ピーマンはなしにしてほしいの」
「ミランダ、お話聞かせてほしいの。」
「ねむいー。抱っこしてー」
寝顔は天使と評判だった。
王宮から使者が来て、王太子弟夫妻とフェリシティー姫にフランセーア王国から招待状が来た事が告げられた。
フェリシティーは7歳だった。
マズイ
それが王弟夫妻、王弟家使用人一同の心の声だった。
そのうち、行かなきゃならないだろうな、とは思っていた。
何回か打診もされた。
しかし、この暴れん坊をフランセーア王国王宮に放牧したら、国際問題が起こる。
ベルンハルトはノラリクラリ打診を引き伸ばしていたのだ。
「人前に出せる行儀がまだ見についておりませんので。」と。
業を煮やしたフランセーア王国は、国から国への正式な断りにくい招待状を贈ってきた。
アリステア王国の王宮の遣いはベルンハルト夫妻に告げた。
「フランセーア王国から、必ずおこしくださいませ、楽しみにしております、とのことです。もう逃げれません。どうにか暴れ馬を躾けてください」
と死んだ目をしながら言った。
王宮の使者は、フェリシティーのイタズラの、扉を開けたら仕掛けたバケツからジャガイモが頭上に落ちる、をまともに受けた上、落ちたジャガイモを踏んですっ転んでいた。ジャガイモが降り注いだ頭と、転んで打ったお尻が痛い。
一張羅の衣装にジャガイモの土が付いている。
王弟夫妻の屋敷に、行儀作法の教師が派遣された。
しかし、ことごとく匙を投げて怒って帰ったそうだ。
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