さようなら、借金令嬢
エリンがいなくなりました。
ベルンハルトとサーラは決断しなくてはなりません。
エリンが突然居なくなったと聞いてベルンハルトは取り乱した。
離宮を訪れて慌てた声でサーラを呼んだ。
泣き腫らした目のサーラが居た。
「エリンは行くあてがない。探して保護しよう。捜索はしてるのか?」
「捜索はしてません。してはいけません。
エリンは覚悟して出たはずです。言ってたもの。そのうち居なくなる、探さないでって。」
「危険だろ?若い女性が一人で生きていけない。心配だ。探そう」
「ベルンハルト様はそう言うだろうけど、絶対に探さないでって。」
「だが!」ベルンハルトの声音が荒ぶる。
「何度もエリンと話し合いました。
探し出されたら、逃げる。捕らわれても、逃げる、って。だから、探さないでと。」サーラが冷静に言う。
ベルンハルトは足元に穴があいて落ちるような感覚を覚えた。
捕らわれる?逃げる?
エリンに俺はそう思われたのか?
ベルンハルトは用意していた。
王都のはずれにエリンが住む家を。
こじんまりして可愛らしい家だ。
執事とメイドは手配済みだ。家具や生活品も全て。
エリンが何不自由なく暮らせるように。
ローラン子爵家にもレイナルトの元にも戻らないと言ったエリン。
時間が経てば、変わるかも知れない。
心の底で、俺の側妃か恋人になってくれたらと願った。
なにしろ、エリンは俺の子を産んだ人だ。
それが叶わなくても、エリンの望むようにするつもりだった。
そのうち、レイナルトでもバートでも、他の誰かでも良い。生涯を共にする人が見つかれば送り出して、エリンの幸せを見届けるつもりだった。
エリンは俺の元からも逃げるつもりだったのか。
ベルンハルトは愕然とした。
「全部、フェリシティーのためだって。
もう報酬はもらったから、約束通りにする、って。
私達の近くにいたら、フェリシティーの出生を疑われる。関わっちゃいけない、絶対に探さないでって。
フェリシティーを愛してる。幸せにしてね、って。」
サーラにはそう言ったのか。
エリンは俺の執着心を知っていたのかもしれない。
エリンが姿を消したのは、フェリシティーとサーラのためだ。
俺が愚かだからだ。
言葉が出ないベルンハルト。顔面蒼白だ。
サーラはベルンハルトをソファーに座らせた。
「エリンの気持ちを無駄にしたくない。
エリンは私達ならフェリシティーを幸せに出来るって、信じて託してくれたんです。
子供を産めない私に、宝物を与えてくれた。
ベルンハルト様と仲良くフェリシティーを育ててね、って。
ベルンハルト様はそれでもエリンを探しますか?」
サーラがベルンハルトの瞳を見つめた。
ああ、サーラにもバレていた。エリンに惹かれて恋してることを。離したくないと願っていた事を。
ベルンハルトは岐路にいる事を感じ取った。
エリンに2択を迫られたな。同じだ。君達は似てるな。親友だからか?
エリンを探すと言えば、サーラは止めない。
かわりにフェリシティーを連れて出て行くだろう。
二人共欲しがれば、二人共失うとエリンは言ったな。
その通りだよ、エリン。
愛娘を含めて、一番大切な3人を失う。
俺の言う言葉は1つだ。決まってる。
「わかったよ。探さない。
エリンの望むようにしよう。」
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これで一段落です。
次は一気に時が進んでからのお話になります。




