相席キャンプ
「隣に設営しても大丈夫?」
ほほ笑みながら、私の了承を得る。そんな爽やかイケメンスマイルで来られたイヤとは言えないじゃないですかーっ!
「私は全く問題ないですっ!」
と変な返答をしてしまった。「相変わらず可愛いね」と笑われて……隣で設営始める小鳥遊さん。
それって、揶揄われているのですか? お褒めの言葉なのですか?
うーん、と悩みながら紅茶を飲んでいた私は、はっ! と手伝うことを忘れていることに気が付いた。しかし、気が付くと設営がほとんど終わっている。手際がとてもよかったのには驚いた。
「キャンプよくされているのですか?」
「んー、気が向いた時にだけどね。あ、敬語はいいから」
そういうと折り畳み椅子を私の椅子の隣に設置して、ちょこんと座る。
「あーいいなぁー何作ってるの?」と言われて「パエリアですよー」と答えた。
「あ! 今回は私のパエリアご一緒にどうです?」
と提案してみる。前回は、お世話になったし、贖罪の気持ちもあった。
「えっ? いいの? それじゃあお相伴に預かることにする」
と嬉しそうな笑顔で、自分のスペースに戻ると、食器とビールを持ってくる。
「今日は飲まないの?」
一本渡されたのを私は丁寧にお断りした。
「もう同じ轍は踏みません、小鳥遊さんは気にしないで飲んで」
ウンウンと大きく頷くと、小鳥遊さんにはアルコールを勧めた。
「あ、蓮でいいよー瑞穗って呼ぶから」
「蓮……さん」
「さん、もいらない」
なに! なんか急にハードル高いんですけど!
……嫌じゃない。
真っ赤に成りながら「れ……ん……」と囁くように呟く。「よくできました」とヨシヨシされてしまい私は噴き出してしまった。
「なんか面白い人ね」
「そぉ? 普通だけどねー」
笑った顔も眩しい! でも、なんかとっても温かくて嬉しい自分がいた。
そんなことを考えているうちに、蓮は「できたんじゃない?」とパエリア覗きながら火から下ろしてくれている。それを手際よく分けてくれた。
できる男子だ!
これは……本気でできる男子だ!
私は「はい」と手渡されて、嬉しくて「ありがとう」と受け取った。
「俺が作ってないのにマウント取ってごめんね」
「いえ、蓮はなんか慣れていてスマートだよね」
笑顔でそう答えて……あれ? これって褒めて……ない?
焦って蓮の顔を見ると「しょんぼり」している。
「あ、ごめんなさい! 違うのよ! そーいうわけではなくて」
慌てて言い訳を考える。その私のアタフタした姿を見てクスクスッと笑っている蓮に……遊ばれている感が今はするぞ。
「蓮はなんでソロキャンプへ」
私は話題を変えるかのように、そう話を振った。