酔っ払い
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その日はキャンプへ行くから、クルマで登校していたのだ。
私の趣味は最近始めた「ソロキャンプ」である。最初はちょっと怖かったし寂しかったけど……焚火に当たって星空眺めていると、イヤなことは忘れられることに気が付いた。それ以来毎週のように出かけている。
食材を買って、私有地の所有者の方に挨拶に行く。
「今日、もう1人ソロキャンプに来てるから」
という説明を受けて、一人ではないことを喜んでみたり、悲しんでみたり。けっこう一人の時間って大切なのよね……と思いながら、現地に着いた。
(やっぱり挨拶ぐらいはしておいた方がいいよね)
と思い、隣で設営を終えてコーヒータイムしている「お隣さん」の方へ出向き挨拶をする。
「今日はお隣おじゃまします」
「いえ、こちらこそ」
その声に改めてその人を観察する。
うわぁぁぁぁぁぁぁ、めちゃくちゃイケメンかも。
灯弥もイケメンだけど、こちらの方もなかなかイケメンですよ。なんだろう、落ち着いたイケメンですよね。なんて思いながら、私は一人キャンプ地で設営開始始めた。
設営が終わる頃には日が暮れていた。
暗くてもランタンあるし、LEDライトも持ってきている。特に問題はない。
「火起こししようかなぁ。お腹空いたし……」と思いながら焚火台を組み立てる。その時お隣さんのいい匂いにつられてガン見してしまった。「焼肉かぁ~それも美味しそう」などと考えている時に、お隣さんと目が合う。
やばっ! 私ガン見してた……どうしよう、めっちゃ飢えた子に見えちゃったのかも。挙動不審していたのか、お隣さんはクスッと笑うと「おいでおいで」している。
「アレだったら、一緒にどお?」
「え? でもせっかくソロキャンプされているのに、私がいたら……」
私はおずおず質問してみる。
「あー別に俺はソロにこだわってるわけじゃないから」
爽やかスマイルで返事が帰ってきて、くらくらぁと動悸がして眩暈がする。
(ヤバイ……殺人級のイケメンスマイルだわ)
と今回の出会いに感謝して、お仲間に入れてもらうことにした。
私の方は魚介を買ってきていたので、惜しみなく提供し、二人で焼き物を堪能する。今日は失恋キャンプなので、アルコールも忘れていない。ビールにカクテル、チューハイ――お隣さんに引かれちゃったかな? っと焦ったが、お隣さんはまたクスッと噴き出すと、「おーけーおーけー、かなりアルコール好きなんだな」と笑いながら一緒に飲んでくれていた。
なんか空き缶数本転がしていた気がします……ハイ。
なんか別れた元カレのグチを散々言っていた気がします……ハイ。
私に男運がないことをグダグダ言っていた気がします……ハイ。
あーなんか気持ちいい。
スッキリしたぁ~
良い感じにほろ酔いで眠い
眠い――