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目標

 気が付いたら辺りは真っ暗だった。焚火を囲み、食事を食べながら返答を待つ。

「んー、仕事始めたらあまりこういう自由も無いんじゃないかなぁ、と思ってかな」

「仕事?」

 私は不思議になって尋ねる。そう言えば研究室入って、将来何がしたい人なんだろう?

「将来は再生医療とかに携わりたいんだよ」

 そう言うと、蓮は空を見上げる。


「一人でも多く笑顔になってもらいたいじゃん」

 星空を見上げている蓮の眼差しは、その先を「未来」を見据えていた。私はその瞳に吸い込まれるように見入ってしまっている。


 私はそんな先のことを考えていただろうか。私は将来どうしたいんだろうか。

 教えてくれた蓮の「思い」は本当にひとかけらであろう。それでも私の心にとても深く残っていた。私の方を向いてほほ笑む蓮の表情は……本当に〝魅力的〟だった。




「私なんか恥ずかしいかも。そんなこと全く考えてなかった」

 正直に自分の心を話す。そかそ、私はそれが本心であった。

「今から考えていったらいいんじゃない? 焦ると目測を見誤ることもある」

 その言葉はなぜか心に安心感を与える。

「蓮って思っていたのとちょっと違った」

 私は微笑んだ。本当だよ、こんな〝魅力的な人〟だなんて思わなかった。


 それは一瞬だったのかもしれない。


 私は蓮のことをもっと「知りたい」と思った。

 もっと「話していた」と思った。

 もっと「傍に居たい」と思った。


 私に色々なものを与えてくれる。

 こんな気持ちになれることが幸せだった。


 星を眺めながら、食後のティータイムを楽しんでいた。蓮は缶チューハイを楽しんでいる様子。私より飲む人じゃん……。

「蓮って、私のこと『飲んだくれ』みたいに笑っていたけど、けっこう飲む人じゃん」

 ちょっとムスッとして言ってみる。

「あーあの時は瑞穗が『失恋キャンプ』とか知らなかったからなぁ。あんなにアルコールドリンク出してこられたら、誰だってそー思うだろ」

 缶チューハイ片手にケラケラ笑っている。もう「酔い」モードなんじゃないの? これ……。

「まぁグチりたかったら、いつでも相手してやるよ」

 そう言って携帯をこちらに向ける。

「じゃあお言葉に甘えよーかなぁ」

 その言葉が今の私にはとても嬉しくて……私たちは連絡先を交換した。



 私たちが見える駐車場に停車して、私たちを見ている者がいるなんて……この時は全く知らなかったし、そんなことすら想像していなかった。


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