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最後の神犯  作者: 隆の爪
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五話:友達

 僕たちが学校を卒業して、はやくも半年が経過した。

その僕たちが今何をしているかというと―


カンカンカンカンっ!


「ん…もう朝か…。」

「ファ…おはよ、室長。」

「うん、おはよう。」


金属同士がぶつかる音で目が覚めた。

狭い部屋の中で、男が四人、目を覚ました。

そのうちの一人が僕、石原晶斗だ。


「みんな起きたな、早く着替えて点呼に行こう。」

「うぃ~す。」

「おい、石原~。鍵忘れてんぞ~。」

「あ、ごめん、取って。」

「ほい、パース。」

「おっと、ありがとう。」


ここは新兵育生寮のひとつだ。

そのうちの一室の室長に僕は任命された。

理由は早起きだから、だそうだ。

まぁ、室長の仕事は特にないので、ありがたく室長にさせてもらった。


「今日も俺たちが一番かもな~。」

「別に競ってるんじゃないだろ?」

「ま、一応早起きもちょっとした評価になるかもだろ?」

「まぁ、そうだね。多分。」

「俺たちが早起きできるようになったのも、石原のおかげだ。」


同じ部屋の仲間、守谷(もりや)苗植(なえうえ)大沖(おおおき)は、最初は起きるのがあまり早くなかった。

でも僕が早く起きて、三人が起きるのを待っているのを知って、みんな早起きするようになった。

そのおかげで今では寮内で一番早く点呼をとれ、教官方によく褒められるようになった。

たったそれだけだけど、褒められるのはやっぱり嬉しいものだな。


「お。お前ら今日も一番だぞ。これで九十二日連続一番だな。」

「おはようございます、教官。」

「おう、おはよう。…よし、第十四班の点呼は終わりだ。食堂行っていいぞ。」

「ありがとうございます、失礼します。」


寮生活は大変だけど、とても楽しいと思う。

清正とは別々の寮になってしまったけど、今のルームメイトといるのも楽しい。

寮は『自恩系能力者』、『他恩系能力者』、そしてそのどちらにも属す、もしくはどちらにも属さない『特異系能力者』の三種が別々に入るよう、三つ作られている。

僕たちは『他恩系』だから第二寮、清正や音緒たちは『特異系』だから第零寮になる。

ちなみに『自恩系』は第一寮だ。


「さってと…今日の朝食は何かな~。」

「いつも通りの白米・味噌汁・その他だろ。」

「ここの飯は美味いからいいけどさ~…いつも同じだとさすがに飽きるよな~。」

「ま、仕方ないよ。僕たち訓練兵よりも、今戦場に出てる方々により良い食事を与えた方が僕はいいと思うしね。」

「そりゃそうだけどさ~。」


なんて他愛ない話をいつものようにしながら、頂いたご飯を今日も今日とて食す。

たまに母さんの作るご飯が恋しくなるけど、自分だけがわがまま言うわけにもいかない。

…あ~、みんな元気かなぁ。智也たちちゃんと役人さんの言うこと聞いてるかなぁ。


「お~い、室長!みんな食べ終わったしはやく訓練室行こう!」

「…んあっ?…ごめん、ボーっとしてた。」

「珍しいね、大丈夫?」

「うん、大丈夫、行こう。」


僕の部屋仲間はかなり優秀な『能力』を持っている。

守谷は『空中に薄い空気の壁を作る』

苗植は『周辺の植物の状況把握』

大沖は『空気中の酸素濃度の変更』だ。

…僕と違って優秀すぎない?

だから三人とも『能力』の使い用途は大体決まって、それの訓練に取り掛かってる。

…けど僕は――


「さて…そろそろ石原の『能力』訓練を始めないといけないんだが…。」

「本当にすみません…。」

「いや、謝るな。『能力』は生まれながらに人それぞれで異なる。それにどのような使い方を見出すのかが、俺たちの仕事だ。気にするなよ。」

「…はい。」


気にするなと言われても…小さいころから幼馴染たちがすごい『能力』を持ってたんだから、僕との差を見るとやっぱり気にしちゃうよ…。

義理とはいえ、母さんも『医療部隊の英雄』なんて呼ばれるくらいにはいい『能力』だしね。


「…ん~、やっぱり当初の予定通り、索敵と狙撃がメインになるだろうな。」

「…と言いますと?」

「まぁ、索敵は周辺に転がってる石を使って、敵の気配を感知するってかんじかな。狙撃は銃はもちろん、お前のお気に入りの石でも行えるようにする。」

「…でもそんなに速度出ませんよ?」

「鍛えるんだよ、そのための俺たちだ。」

「『能力』って鍛えれば伸びるんですか!?」


僕は他人と比べてかなり『能力』を使っていると思う。

遊ぶときとかは僕の方が強いからね。

それでも『能力』が成長したような手ごたえはなかった。

どちらかというと僕自身の腕が良くなった感じだ。


「ま、人それぞれだ。伸びるやつもいれば、伸びないやつもいる。お前の場合は『的を狙撃する』という明確な目標がなかったから、今まで伸びなかったのかもしれないしな。」

「あ~、まぁ…水切りとかにしか使ってないですね。」

「そう、それを戦闘用に改良していくだけだ。」

「分かりました、ご教授お願いします。」

「おう!」



こうしてようやく僕も『能力』強化訓練に挑むことができた。

午前中は周囲の石を使って、敵の気配を感知する練習。

午後からは相棒であるMY石を使った狙撃練習をするようになった。

これまでの半年間は、組手やナイフや銃を使う訓練を一通りこなした。

これであと半年『能力』強化訓練をすれば、晴れて戦場に駆り出されることになるらしい。

正直戦場なんて行きたくないけど、今の訓練内容からして僕は支援部隊に入れられるかもしれないな。

それなら死亡率はそんなに高くない…はず。

ただ狙撃・感知と言われると…最悪奇襲部隊の可能性もあるな…。

そういう前線に出るタイプの部隊はヤダな…。

一応毎日筋トレとかはしてるから、一般人レベルには動けるようになったけど…相手は真ノロア国だから、今の僕だと肉弾戦ではまず勝ち目がない…。


「…?お~い、室長?早く部屋戻ろ?」

「…はっ、あ、ごめん。」


なんて考え事してたら今日の訓練が終わってた。

目の前には相変わらず中性的な顔立ちの守谷が、心配そうに僕の顔を覗き込んでいた。


「室長、最近ボーっとしてること多いよね?ほんとに大丈夫?」

「あ、うん、大丈夫。なんかもう半年しかないのか、と思うと色々考えちゃってさ。」

「…そうだね。あと半年でみんなバラバラの部隊に入れられるのかな?」

「いや、それはないと思うよ?僕たち一応このままで一個隊として動けると思うし。」

「えへ、室長がどれだけ『能力』を使いこなせるか、だね。」

「やめてよ…。プレッシャーが…。」

「えへへへ。冗談だよ~。」

「…まぁ、僕たち四人で隊を組めたらいいね。」

「うん!」


相変わらず顔に似合わず冗談の威力が強すぎる…。

…まぁ、このまま何事もなく僕たちが終戦を迎えれれば…それが一番いいや。


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