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壊し屋エリー  作者: タカクラ
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後編

二一九五年四月二九日 午後一〇時二九分


 新宿ジャンクでは、時間ってのはあんまり意味がない。

 昼間は明るくて、夜は暗い。

 特に認識しとくべきことはそんな常識くらいなもんで、あとはやや、やっぱし夜の方が開いてる店が少ないかなぁってのと、夜しか開いてない店もあるってことくらいかな。

 危険なところは明るかろうと暗かろうとアブナイし、安全なところは・・・もともとあんまし、ないか。

 さて。

 包囲網を辛くも脱したあたし達は、新宿エリアに潜伏していた。

 キズだらけでボコボコのワゴンを泣く泣く放棄し、てくてくと徒歩である。

「もうあたし達の家、割れてるよねぇ」

「そう考えた方が、賢明だろうな」

 旧新宿駅南口ガード下。

 怪しい布包みを担いだアルバは、ひたすらに冷静である。

 もちろん包みの中身は小百合。二百三十二キロを担ぎ、コートの下には愛用のライフルやら手榴弾とかの武器がいくつも下がっている。一体何キロになるんだろう、彼の荷物って・・・

 まあ、それはヨシとして。

 尾行から追撃までの間だけでも一時間はあった。朝の騒ぎからなら十時間以上だ。少なくともアルバが受けた仕事から、彼のことだけは間違いなく相手に割れてる。桂川氏の方だって、拘束されてる以上、あたしのことをバラしてない保証はない。

 ハシモトの組織力なら、その気になれば、あたし達の新宿での状況程度、すぐに調べがついてしまうだろう。

「とりあえず、落ち着ける所はねぇかなぁ」

 ウィスキーのポケット瓶を弄びながら、シド。どーでもいーが、どっから出したんだ、それ?

「落ち着ける所と言ってもなぁ」

「『七福神』は、もう駄目ですしね」

 ジョアンヌは、明らかに疲れた声で言う。

 さもあらん。こんなスリリングでデンジャラスな経験、初めてなんだろーし。

 しかし、それにしても、ホントにこんなとこでボーっとしてるわけにはいかない。

「時間勝負になっちゃうけど・・・この際、行ってみよっか?」

「あん? どこへ?」

「もしかして、ギャラントのおっさんのところ?」

「ビンゴ!」

 さすがにキッド、察しがいい。

「そうか、カーゴと〈〇〇〉(『ダブル・オー』と読むのだ)、メンテに出してたんだっけな」

 答えるシドとアルバの顔が、パッと明るくなる。

 カーゴってのは、キッドの持ってる大型トレーラーのコト。半ば共有財産みたいなもんで、シティやジャンクの外での仕事の時には、移動拠点にもなるキャビン付きのスグレモノだ。

 で、〈〇〇〉ってのは、とある時に手に入れた、最近では一番お気に入りのフレーム・ギアちゃん。コイツを動くようにするために、あたしは所有のギアを三機も処分しちゃったくらいに、手のかかったコでもある。

 このコを置いてくなんてーのは、あまりにもシノビないってーモンだ。

「手が回ってる可能性は、まぁ、五分五分ってところ、だろうな」

 ちょっと考えて、アルバ。

 しかし・・・

「いずれにせよ、千葉の圏内を抜けようってんなら、アシは必要よ。空路、海路はまず使えやしないし、高速リニアだっておんなしでしょ」

 コレは切実な問題なのだ。

 正直、今から新しいアシを仕入れるってのは、不可能じゃないだろーけど、かなり難しいと思う。交戦も予想されるわけだし、どノーマルの車でいいってわけじゃないしね。

「ふむ・・・確かにそうだな。リスクが高いのは、今に始まったことじゃなし・・・」

 ははは♪

 そりは言えてる。なんかあたしらって、いっつもハイ・リスクなマネしてるもんな。んで、なんだかリターンは小さいんだ。

 ・・・ちょっとかなしひ。

 ともあれ、当面の目的は決まった。

「ギャラントのガレージ、確か高田馬場だったよな?」

「イエース! あのカーゴ造ったのも、あそこの工場なんだ」

 あ! そ~かぁ・・・

「そしたら、そ~ねぇ・・・二時間後、どこかで待ち合わせようか」

「ん? なんだよ、別にバラけなくてもいいんじゃねぇのか?」

 ところが、そうもいかないのだ。

「〈〇〇〉ねぇ、高田馬場じゃないのよね」

 ギャラントのおっちゃんの工場は工場なんだけど、ギアの調整にはけっこう特殊な器材が必要なんで、別工場になってるのだ。

「それってもしかして、『七福神』なんじゃありませんか?」

 ジョアンヌが、おずおずと言った。

「なにっ!?」

 驚くアルバ。無理もないが、実はそうだったりする。

 ギャラントのおっちゃんも、ゲンさんに世話になった人だったのだ。おっちゃんはメカニックのプロで、『七福神』の地下を借りて小さなメンテナンス屋を始めたのが、工場経営のそもそものスタートだったのである。

 高田馬場で工場始めたのも、『七福神』の地下ガレージだけだと手狭になったのと、大型車両を扱うためだったらしい。それが大成功して、現在に至るのである。

 今では地下はギア・メンテ専用。車両は高田馬場ってなっている。しかも『七福神』の方は、ショーコさんっていうおっちゃんの弟子が切り盛りしてるんで、繋がりを知らない人は全然知らないのだった。

「そうか、あそこはショーコの店じゃなく、ギャラントの店だったのか・・・」

 アルバはしみじみ、呟いたりする。

 ちなみにこのショーコさん、御歳二十五歳で、ジョアンヌに負けず劣らずかなりの美人。『七福神』三大隠れアイドルの一人だったりもする。ちょっと困ったクセがあるんだけど、肝心のメカニックとしての腕もなかなかで、とっても素敵なお姉サマなのだ。

「しかし、『七福神』はマズいだろう」

 前言の呟きに続き、心配そうにアルバ。

 なにせ尾行のスタート地点はあそこだし、桂川氏と接触したのもあそこ。しかもあたし達が普段たまってる場所ってんだから、ヤバいのは確かだと思う。

 でも・・・

「だーいじょぶだいじょぶ。一人だったらなんとでもなるわさ」

 ゲンさんが店の構造、そう簡単にバラすわけない。構造知ってる他のヤツらだって、信頼できる人間ばっかしなんだし。

 んで、〈〇〇〉さえ手元に来れば、ハシモトの追っ手だろーとなんだろーと、それこそなんとでもなるってものだ。

「いいじゃねぇの。どうせこのギア・オタクのこった、アレ置いてくなんての、承知するわけねぇんだしよ」

 ・・・シド。

 確かにあたしはそのつもりだったけど、もうちっとほかに言い方あんでしょーよ・・・

「だがなぁ、ギアなら落ち着いてからショーコに頼んで、送ってもらったっていいんじゃないのか?」

「ヤだ」

 とはいえ、実はさっきまでは、そのつもりだったのだが。

 だけど持ってくチャンスがあるのなら、むざむざ置いて行きたくはない。

「・・・ふう」

 あたしの視線に効果があったのか、アルバはため息とともに頷いた。

「わかったよ。ただし、一人じゃ駄目だ。プーリー、エリーについてってくれ」

「にゃ♪」

「え、でもだいじょぶなの? ジョアンヌもいるし、小百合だって担いでるのに・・・」

 キッドもシドもいるけど、二人は特に戦闘のプロってわけでもない。自分の身を守ることはできるだろーけど、護りながらってのはキツイよーな気がする。

「おいおい、あんまり見くびるなよ。この程度、ハンデにもならんよ」

「きゃっ!」

 突然空いた右腕でジョアンヌまで担ぎあげると、ヒンズー・スクワットを始めるアルバ。サイボーグがトレーニングしても、なんにもならん気はするが・・・

 ともかく。

「なら、そーゆーことにしましょ。待ち合わせは、とりあえず二時間後。場所は・・・そーね、そん時に決めましょ。シフトⅡでね」

「そうだな、それが無難か」

 シフトⅡってのは、無線の暗号コードだ。ランダム・マルチバンド無線機の、同調コードってヤツ。

「それじゃ、気を付けてね」

「あとでにゃ~」

 というわけで、あたしとプーリーはみんなと分かれ、『七福神』へと向かうことになった。

 現在地は新宿南口はガード下。『七福神』は歌舞伎町。はっきし言って、駅越えてきゃーすぐなんだけど、どーどーと正面から、ってわけにもいかない。

「行こか、プーリー」

「にゃ? そっち反対にゃ~」

「いーのよ。こっちから抜けてくんだから」

 遠回りだけど、コレばっかりはしかたがない。代々木方面に、てけてけと歩いていく。

 地上、地下と三重構造(地下街が二重で、上層は昔から地下街、下層は元公共駐車場だったらしい)に広がる新宿ジャンク。そのさらに下を通る排水溝を、あたし達は目指してるのだ。

 てきとーにマンホールをこじ開けるっつー手もあるにはあるが、人目の多いところではちとあからさまってもんだろう。そんな時のために、人目につかない進入口ってのが、ちゃんと確保してあったりする。

 新宿駅を中心に異様な賑わいを見せるジャンク・ストリートも、代々木方面に向かっていくと、少しばかりおとなしくなる。ショップの数も、屯するヤバそーなヤツも少なくなり、無気力で、いかにもドロップ・アウトな人々が、ふらふらと行きかうって感じのエリアだ。

 前世紀で言う、ホームレス・ストリート。

「みゅう~、このヘン、好きじゃないにゃ」

 ネコ娘プーリーは、こういう雰囲気がキライなコだ。かく言うあたしも、正直、好きではない。確かに少々アブナイ面もあるけど、同じドロップ・アウトの集まるジャンクでも、活気のある中心街の方がずっといい。

 本来ジャンクってのは、シティ中央には住めない人間が集まる、あぶれ者の街だ。そんなところだから、言ってみりゃ全員がホームレスみたいなもの。みんな違法居住者なんだから。

 なのにそこでも、人によって生活に大きな違いが生じている現実がある。

 ジャンクは、シティから見れば無法地帯だけど、無法なら無法なりにルールができ、一つの秩序みたいなものがある。

 かつてジャンク・ストリートを拠点に反企業活動を展開したヒューマニスト(企業の偉い人達はテロリストと呼んだ)『カミル・F・ザラソフ』は、ジャンクのことをこう評した。

『ここには企業法の及ばない自由があり、企業法の及ぶ保護がない』

 ザラソフの言葉をどう受け止めるかは、個人の自由だと思う。ただこの言葉が一つの不文律となって、ジャンクでのルールになっているのは確かなんだ。

 弱くて保護が必要だと思うなら、シティに戻ればいい。企業はプライドを持って、そんな人達を実にいろんな手段で、有用な存在に更正させてくれるんだから。

 逆に自由を求めるのならば、保護なんか必要としない生き方をしなくちゃイケナイ。それは企業に依存しないってことであり、自分を自分で管理するってことだ。

 そのどっちもヤだっていう、企業とは合わないし、ジャンクの無法なところもイヤだっていう一部の理想主義(自然主義だとか、なんかの宗教とか)の人たちなんかは、さらにシティ/ジャンクの輪を離れ、小さなコミューンを作って生活してたりなんかもする。

 人の生き方には、三つの種類があるのかもしれない。

 一つは、企業人としての道。

 一つは、なにかの主義を貫いていく道。

 そして、なにものにも縛られない道。

 ジャンクの住人は、もちろん最後の道を選んだ人達のはずだ。

 だけど、ここには二種類の人達がいる。

 ヴァイタリティーにあふれた人達と、無気力に生きる人達。

 言葉で表現するのは難しいことだけど、自由を求めるのとルールから逃れるってのとは、たぶん違うことなんじゃないだろーか?

 ジャンクで暮らす二種類の人達を見ていると、そう思えてくるのだ。

 ホームレス・ストリートみたいなトコも、ジャンク中心街の周辺にある。考えてみれば、ジャンクの中心に入りたくないのなら、もっと離れた廃墟にだって住むとこはいくらもあるのに。

 企業のルールを嫌い、ジャンクのルールを嫌い、コミューンのような理想も持たない彼ら。しかし結局自分の力で生きることはできず、ジャンクの中心からおこぼれをいただいて生活する。

 あたしにはそーゆーの、ちょっと疑問なのだ。

 とはいえ別に、コトの善悪を糾そうなんて気は、まったくない。

 ただあたしもプーリーも、なんかそーゆーのは好きでないのだ。

 この辺を歩いてるとそーゆーのが目に入ってくるし、そーすると、なんか気分も沈んでくる。

 だけど、目を背けようとも思わない。

 いろんな人達がいるのは現実だし、そういう人達だって、企業やジャンク、コミューンまで全部ひっくるめて、おっきな意味での社会を作ってるんだから。

「エリ~、まぁだにゃ~?」

「もうちょっとよ」

 廃ビルの玄関や路地の隙間、あるいは剥き出しの非常階段の上とかから視線を感じつつ、あたし達はてけてけと代々木駅跡までやって来た。

 高架の半分くらいは崩れ、近寄るのは野良猫と、雨露しのごうってホームレスくらいなものだ。

「どぉーこにゃ~」

「こっちよ、こっち」

 そして入り込む、とある廃ビル。

 かなりでかいビルで、地下は三階。しかもそのさらに下には排水処理プラントまである。もちろん、現在は動いていない。

「うに~。よくこんなとこ見っけたにゃあ」

「まさか! ゲンさんに聞いたのよ」

 なんの必要があるのか、ゲンさんは新宿地下排水溝にやたらと詳しい。抜け道を持ってるんだからその延長で、ってコトなのかもしんないが、それにしてもってレベルである。

 まあ、あたしとしては助かるけど。

 大都市新宿と言えども、人が通れるほど大きな排水溝は、実のところそれほど多くはない。ほとんどは排水パイプってやつで、それが集まる排水溝とは、言ってみれば枝と幹みたいなものなのだ。

 だから、おおむねの繋がり具合を把握してさえいれば、道に迷うってコトもない。あたし達はハンディ・ライトを片手に、てけてけてけと地下排水溝を進んで行った。

「くしゃいのにゃ~」

 むぅ。

 確かに、コレばっかりはどーしよーもない。排水処理システムは死んでるっても、生活排水の通り道なのは、今も昔も変わりがない。

「なんだかわかんないのもいるしね~」

 直径四メートルくらいの半円筒のトンネル。中央に幅二メートルほどの排水の流れる溝があって、両側に通路がある。

 あたし達はそこを、とーぜんながら歩いているわけだが、時々、なんだかわからないものを目にするのだ。

 ネズミはわかる。

 ゴキブリもわかる。

 ナメクジもわかるし、ミミズも、クモも、イモリだってわかる。

 だけど、ネズミみたいなんだけど尻尾が一メートル近くあったり、ゴキブリみたいなんだけど体長が二十センチ、幅はノーマルで脚がいっぱい、なんてのは、あたしの知識にはない生き物だ。

 他にもなんか、黒いコールタールみたいなぶよぶよが動いてたり、一対の前足だけで這うトカゲみたいのとか、なんだかわかんないものが時々いるのだ。

 幸い、どいつもこいつも嫌光性らしく、ライトで照らせばいなくなるんで危険はない。でも、どうやらここの環境自体が相当ヤバそーな気がする。

 こんなところは早く抜けてしまうに限るってんで、あたし達は足を早めた。

 そして、進入からおよそ十分。

 あたし達は無事、目的のマンホールから顔を出した。

「ふに~、くしゃかったにゃ~」

 いや、まったく。

 しかしここはまだ、『七福神』じゃない。

 もうすぐ側なんだけど、実はまだエリア的には、新宿ジャンク地下街のハズレだったりする。

 より正確に言えば、地下街と接続する廃ビルの最下層ボイラー室。しかも地下街との連絡路は崩れて塞がってるんで、人通りとは縁がないところだ。

「後はここを屋上まで上がって・・・」

 一メートルほどの間隔で並ぶ隣のビルに移り、反対側に張り出した非常階段からそのまた隣のビルに移って、そこの地下ボイラー室に置かれたロッカーの左から二番めを開ければ、ようやく『七福神』への直通秘密通路に入ることができる。

 ・・・しかし、すごいルートだ。

 どうやって造ったんだろう?

 素朴な疑問が湧きあがるが、まぁ、それはそれ。今は先を急ぐ時だ。

 てけてけと、階段を上がって行く。

 プーリーは音もなく、軽い身のこなしとスピードを生かして先行する。二階ごとに、あたしが追いついちゃ進み、追いついちゃ進んで行く。

 そして、十一階。

 ちなみにこのビルは十一階建。上はもう屋上ってところで、プーリーは止まった。

「いる、にゃ」

 敏感に気配を察知したのか、警告する。

「ハシモトかな?」

「にゅ~、わかんないにゃ」

 そらそーだ。もしかしたら、月見酒を決め込む酔っぱらいかもしんないし。

 しかし、どちらにせよ見咎められるってのは、あんましありがたくない。

 そろそろと階段を上がり、手摺に身を隠しつつ様子を見る。取りー出したりまするは夜の友、赤外線ゴーグル!

 プーリーやアルバと違って、生身のあたしには欠かせないものだ。

 屋上の扉は開いており、微かに外の空気が流れ込んでくる。

 微風。

「・・・ゴロワーズ?」

 煙草の匂いだ。

「ふにゅぅぅ~」

 ちなみにこの匂い、プーリーは大の苦手。シドも愛煙してたのだが、あんまりイヤがるんでジタンに変えたという経緯がある。もっともジタンも、あんまし評判はよくないが。

 馬糞臭いんだよね、アレ。

 ともあれ。

「頼むわ」

「にゃ!」

 匂いでイライラしてたのか、プーリーはもの凄い勢いで飛び出して行った。

「うわっ!」

 驚きの声と、それに続いて銃声が一発。

 あっちぁ~、こいつぁマズい。

 コンバット・マグを抜いて、とりあえずダダタッ! と駆けて行く。

 屋上に飛び出すと、頭があっち向いたまま鉄柵に寄り掛かった、見たところ特に特徴のない男と、その前で煙草を踏み消してるプーリーの姿。

「へへ、ゴメンにゃ♪」

 頭を掻いて謝るプーリー。

 男の右手には、MMC製のスナイパー・ライフルが握られている。

 狙撃手。

 ・・・て、コトは・・・

 あたしは反射的、と言うか直感的、と言うか、とにかく奇跡のような反応で、プーリーを押し倒した。

「むぎゃ」

 刹那、世にも耳障りな音とともに男の身体が弾け、プーリーの立っていた辺りを衝撃が抜けて行った。

 背後のペントハウスに、なにかが突き刺さる。それがなにか、確かめるまでもない。

 銃弾である。

 どうやら『七福神』周囲のビルに、スナイパーが配置されていたらしい。問答無用の構えだ。

「参ったわね」

 胸倉に風穴が開けられても、なお鉄柵に寄り掛かったままの男の死体。その股の間から見える、通りの向こうのビル屋上。ほとんど高さの変わらないそこに、まだライフルを構えたままの、スナイパーの姿が見えた。

 あたしとプーリーは、横這いに場所を変える。壁としての意味はほとんどないとはいえ、死体の陰の方がまだいいんだけど、だくだく溢れてくる血がうっとーしい。

 そーでなくともさっきの一発で、あんまし口にしたくないほど、やーなモノを浴びてるのだ。

 戻るか?

 一瞬自問して、すぐにその考えは捨てた。

 ここまで来たら、その方がよっぽどハイ・リスクだ。

 あのスナイパー、軍属には見えない。たぶん、雇われエージェントの類。ならば今ここにいる限り、ヤツは自分で仕留めようとするだろう。

 しかし、もしもあたし達が動けば、雇い主だか他の仲間だかに連絡を取るに違いない。

 ここを抜ける最善の方法。それは、速やかにスナイパーを仕留めること。

 とはいえ、遠距離戦かぁ・・・

 ビル間、約三十メートル。

 プーリーは接近戦のオーソリティだけど、この距離はいかんともしがたい。

 あたしのマグナムだと、じっくり狙いを付けられれば、なんとか当てられないこともないかなって感じがしないでもない・・・よーな気がするって距離だ。

「ど~するにゃ?」

 スナイパーだって、たぶんコイツらだけじゃないだろう。ほかのビルにも、今は幸いその気配はないが、潜んでいるに違いない。

 考えてるヒマは、ない。

「うし! プーリー、三秒だけ時間稼いで」

「にゃ!」

 やるだけやって、ダメならそん時だ。

 プーリーはちょっと考えて、男の死体に飛び付いた。右手に握られたままのライフルを引っ掴み、そのまま横に飛んで行く。

 ウマい!

 これならプーリーが反撃を狙ってると思うだろう。

 スナイパーが動いた。

 ちなみにプーリーは、あたしより銃がヘタなのだが。

 あたしはそっこーでマグナムを構える。銃身を鉄柵に添え、補助にして。

 身体のどこでもいい。当りさえすればマグナム弾、破壊力は折紙付きだ。

 スナイパーのライフルが火を吹いた。

 射線はこちらにはない。

 プーリー、うまく避けててよ! と祈りつつ、照準に集中する。ライフルの銃口が動くのが、意識の端に引っ掛かる。

「南無!」

 べつにブディストってわけじゃないが、つい口を突いて出る言葉が日本人。

 ともあれ、あたしはトリガーを引き絞った。スナイパーのライフルは、まだ狙いが定まっていない。

 当たれ!

 あたしの祈りが天に通じたか、はたまた念仏が効いたのか、マグナム弾はヤツの左肩付近を見事にとらえた。

 大命中!

「っしゃぁ! 行くよ、プーリー」

「にゃ♪」

 全力ダッシュで隣のビルへ走る。

 鉄柵にひょいっと飛び乗り、地上十一階の断崖を軽々と飛び越える。

 まあ、幅一メートルだし。

 しかし、着地した瞬間、意外にも銃声が轟いた。

 反射的に振り返ると、空中にプーリー。

「にゃ~!」

「ふぎゅむ」

 お、追いかけて来てたんだった~!

 ちっとビビったが、プーリーが軽量サイボーグで助かった。もしアルバだったら、あたしゃペッタンコになってたとこだよ。

 あ、いや、それどころじゃないんだ。

「おしりかすったにゃ~」

 情けない声を出すプーリー。

 銃声の方角を見ると、そこにはヤツが立っていた。

 スナイパー。

 左肩に直撃を食ったはずの男が、右腕だけでライフルを構え、そこに立っていた。

「うっそ!」

「サイボーグにゃ」

 あ、なーる! なんて、感心してるバヤイじゃないっ!

 コイツは大誤算。仕留めるとこまではいかなくとも、当たれば無力化と決め込んでたのに。

 左腕がだらりと下がったままになってるところを見ると、ダメージ自体が小さかったってことはなさそうだ。少しでも利くのなら、支えくらいには使うはず。

「うひっ!」

 少しでも頭を出すと、容赦なく狙われる。 さすがにサイボーグ、片腕でも狙いはヤケに正確だ。

 反対側にある非常階段。

 あそこまで行ければ、ヤツの狙撃範囲から逃れることができる。そしてその手前までなら、このまま転がるなり這いつくばってなりして進んでけば、縁に隠れてたどりつくことができるだろう。

 問題は、肝心の非常階段への侵入。

 階段への入り口は縁の上にあり、ここだけは身体をさらさないと通れない。ビルの中に入ってしまおうにも、縁は低く、屋内階段のドアまで隠してくれそうもない。

 銃声は何発も響いてるし、たとえヤツが連絡してなくても、いいかげん聞きつけられてる可能性は、高いなんてもんじゃない。

 うむむむむ、行き詰まり~。

「エリー、あれ見るにゃ」

 頭を抱えていると、プーリーが少し先を指差す。そこには、どうやら置き去りにされたらしい、大きな袋があった。

「あたしがあそこについたら、ダッシュするにゃ♪」

「え、ちょっ!?」

 どーゆーつもりか質そうとする間もなく、にぱっ♪ と笑った時には動いていた。

 追いかけるように、銃声。

 しかし残像が残るほどの早さでプーリーは、ランダムなフェイントをかけている。その動きはまさに、気紛れなネコそのものだ。

 二発目の銃声の後、プーリーは袋に取り付いた。

 一瞬、動きがとまる。

 だぁっ! しょーがないっ!!

 あたしは全身のバネを総動員して、一気のダッシュをかけた。

 丸見え、剥き出しだけど、もう構っていられない。プーリーの言葉に賭けるだけだ。

 立ち上がり、一歩、二歩と駆けたところで、背中に明確な殺気を感じる。

 どんなに全力を出したところで、プーリーを追っていたスナイパーの目には、あたしなんかカメのように遅いだろう。

 錐のように尖った氷を突きつけられたような、鋭く冷たい殺意。そのまま凍り付いたように、時間の止まる瞬間が訪れる。

 銃声。

 非常階段までの残り五メートルほどが、絶望的に遠い。

 直後か、同時か。

 背中に凄まじい衝撃が走った。

 不思議と、痛みはない。

 突き飛ばされるように、あたしは一気に非常階段に飛び込んでいた。

「ふみゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ~!!」

 っていう、プーリーの叫びとともに。

「ったたたぁ」

 脳天を襲う、激突の痛み。さらにそのあと全身をシェイクされたような衝撃が来て、気がつくとあたしは、階段の手摺にへばりついていた。

「成功にゃ~♪」

 はしゃぐプーリーの声。

 全身にふりかかる、粉っぽい感触。

 手は動く。足も動く。全身が痛いけど、どれも打撲みたいな鈍痛。眼も開くし、見えるけど、なんだか凄くけぶってる。

「ぶふぇ! ぶふぇふぇっ!」

 いや、ホントになんかの粉が舞ってるんだ。鼻からも口からも入って来て、コイツぁ~たまらん!

「だ、だんだどよ~」

「エリー、ケガにゃい?」

 全身痛いが、ケガらしいケガはないみたいだ。どうやらプーリーのおかげで、窮地は脱せられた、のかな?

 しかし・・・

「アンタ、なに振り回してんの?」

 どうやら粉の原因は、プーリーがぶんぶん振り回してる袋にあるらしい。

「セメント袋にゃ。こいでタマ止めたんだにゃあ~♪」

 あ? あの、袋?

「あたしが動けば、アイツ絶対オトリだと思うにゃ。だからエリーが動けば絶対狙うから、そこー狙ってたんだにゃにゃにゃ♪」

 な、なんつーギャンブルな・・・

 するとアレだ、後ろからど~んと来たのは、弾じゃなくてプーリーのタックルかなんかだったってわけだ。そんでもってこう、全身が痛いのは、階段転げ落ちたからなんだな。

 よく見ればここ、踊り場だし。

 それにしても、生身で無防備なあたしの背中をオトリに使うとは・・・結果オーライ主義のあたしだけど、今回ばかりはさすがに肝が冷えたわ。

 プーリー、恐るべし!

 しかし、まだ今は、完全に危機的状況から抜けきったワケではなかった。目の前の脅威からはとりあえず逃れたものの、その他の脅威に存在を知られてしまったのは、残念ながら確かなのだ。

「来てる、よね?」

「みたいだにゃ」

 無機質で規則正しい音が、下の方から迫ってくる。それは誰かが、階段を昇る音。

「こりゃ急がなきゃ」

「にゃ!」

 隣のビルまで、約二メートル。この踊り場の手摺よりやや下の位置に、開いてる窓があるのだ。地上十一階の高さでコレを飛ぶのは、なかなかにおっかない。

 だけど、オンナは度胸!

「うりゃっ!」

 気合もろとも、頭っからダイブ!

 遥か下方に地面が見えて、すぐに窓の下枠が見える。そこで一気に前回り受け身っ!

 すっくと立って、一〇.〇〇!

 なんてなことをやってる間に、プーリーは楽々と飛び込んで来た。

「アッチに跳びやがったぞ!」

 非常階段の下から、そんな声が聞こえる。「急ぐにゃ~」

 さっきので気をよくしたか、プーリーってばノリノリだ。ダッとあたしの横を走り抜け、一目散に階段へ駆けて行く。

「下じゃないわよ、上!」

「にゃ!? 地下じゃにゃーの?」

「いーから」

 このビルは十三階建。屋上までの四フロアを一気に駆け昇り、目指すはペントハウス。

「エレベーター、動くのにゃ?」

「そーなの。しかも地下直通」

 ここは確かに廃ビルだけど、ジャンクの住人が住み着いたりもしている。ゲンさんは抜け道としての機能を確保するため、わざわざ『七福神』から電源を引いて、エレベーターを修理・改造していたのだ。

 一体、なにがゲンさんにここまでさせるのか? それは誰にもわからない。

 ともあれこのコトを知っているのは、一部の人間だけである。なんにせよありがたい。

 てなわけであたし達は、楽々と地下まで降りて行けるのだ。なにも知らない追っ手達は、さぞ苦労して階段を駆け昇っておることであろう。

 きしし♪

 ざまあミソ漬けキューリの酢漬け!

『七福神』は目の前だ。

 ・・・が。

 ことはそううまくは運ばなかった。

 二フロアを駆け上がった時。つまり、十三階に着いた時。先の階段に、立ち塞がる三人の男達がいたのだ。

 思わず反対側に飛びのいて、思いっきり後悔する。

 飛びのいた方向は、エレベーター・ホールのある袋小路。

 そして立ち塞がっていたのは、完全武装の陸戦兵士。しかも、私服なのにハシモトの正規兵だとわかる、お揃いの装備である。

 迂闊だった。

『七福神』周辺のビルに追っ手がいるってのは、わかり過ぎるくらいわかっていたのに。

「そこまでだ」

 やけにチープなヴォイス。

 しかし剥き出しの機械の顔には、それなりにハマっていると言えるかも。まして片手に一挺ずつ、合計六挺のマシンガンを突きつけられたら、威嚇効果はバツグンだ。

「ふぅぅぅぅぅ」

 あたしの前に立ち、威嚇するように睨み付けるプーリー。

 全てのクローが出現し、しっぽが総毛だっている。

 だけど、さしものプーリーも動けない。

 いや、動かないのか。

 このコなら、この距離でなら、三人相手でも渡り合えるかもしれない。だけどそうなったら、あたしは確実に殺られるだろう。

 プーリーは、それがわかってるから・・・

「ちっ」

 階下からも、靴音が迫っている。本当ならムダな努力になってたはずなのに、このままだと、彼らの苦労は報われてしまう。

 コイツらを出し抜くチャンスは、もうないのか?

 こっちは袋小路。唯一のドアはエレベーターで、これはペントハウスと地下でしか動かせない。

 手元にある武器らしい武器はマグナム一挺。あとは・・・

 そーだ♪

「絵里奈・グラヴナー、及び無登録サイボーグ。武器を捨てろ」

 デジタルな声が命令する。

 やはりあたし達のことは、一通り調査済みのようである。

「君達の身柄を拘束するよう、命令されている。抵抗せず、速やかに投降しろ」

 を?

 どーゆーことだ、それは?

 ともあれ、あたしは速やかに、それに従った。右手のマグナムを、やつらの足元に滑らせる。

「にゃ!? エリー?」

 驚くプーリーの肩に、あたしはそっと手を置く。

「クローを収めて」

「にゅう」

 仕方ないって顔で、プーリーは言うことを聞いてくれた。こんなこと、このコには不本意だろうに。

「いいコね・・・」

 そのまま後ろから、置いた手を滑らせてプーリーを抱きしめる。

 兵士どもの一人が、捕縛用の拘束衣を引っ張りだした。特殊強化ゴム製のそれはほとんどの刃物を受け入れず、たとえサイボーグのパワーをもってしても、切断することはかなわない。

 コレを着せられたら、全て終りである。

「壁について、手を後ろに組め」

 兵士の一人が拘束衣を手に、前に出た。

 プーリーを抱く手に、ぐっと力を込める。左手をおしりに回し、その存在を確かめる。

 今しか、ない。

「アンタは、逃げなさい」

 あたしのワガママに付き合わせて、このコを巻き込むわけにはいかない。たとえあたしが、どうなっても。

 耳元で呟くと同時に、あたしは後ろポケットの中から直接、短針銃を撃った。

 狙いは大雑把でいい。エレベーターのドアだ。放射状に広がる針は、この程度のものやすやすと貫通し、ぐずぐずに突き崩す。

 そのへんをめがけ、渾身の力を込めてプーリーを押し込んだ。

「にゃにゃっ!」

 驚きの声を上げた時には、プーリーは崩れたドアの残骸とともに、穴の中だった。

「にゃ~~~」

 遠ざかるプーリーの声。

 そして。

 やることはやったって満足感の中、あたしは意識を失った。



 二一九五年四月三〇日 午前一一時一八分


「・・・ん・・・ぁふぁ・・・んぅ?」

 目が覚めると、そこは見たこともない部屋だった。

 高い天井は淡いクリーム色。

 やわらかな暖色系の間接照明。

 だるい身体を起こしてみれば、けっこーモノのよさそうなベッドに、感触の心地好い、しかも天然素材っぽいタオルケットが掛けられている。

 窓はなく、代わりに壁に、大きなパネルがしつらえられている。これはスクリーンになってて、隅っこについてるコンソールで好みの風景を選び、映し出せるやつだ。

 ベッド脇にはサイド・テーブル。ほかに丸テーブルとサイド・チェア、ドレッサー、ワードローブ、カクテル・キャビネットと、家具調度がある。そのどれもが、どうやら天然木のようだ。

「・・・あんか、いよーにこーきゅーなカンジ・・・」

 どこなんだろ、ここ?

 だるーい身体に加えて、頭もどーにも冴えてない。寝起きはあんまし、強くないのだ。

 喉が乾いてる・・・

 感じるままにベッドを降り、ふらふらと冷蔵庫へ。開けてみれば、こぼれ落ちる冷気の中に、ビールとフレッシュ・ジュース、ミネラル・ウォーターなんかのボトルが詰まっている。

 あ、オレンジ・ジュースだ♪

 迷わず手を伸ばし、キャップを飛ばしてラッパ飲み。

「・・・こっ、この喉ごしわっ!!」

 冷たい刺激と、ここしばらく味わってない味覚が、いきなし意識を覚醒させた。

「ホンモノだわっ! 合成のオレンジ味じゃない。それもこの感じ、八十%以上・・・いや、滅多にお目にかかれない、伝説の天然果汁一〇〇%モノかも!!」

 ボトルを見れば、ノー・ラベル、ノー・プリント。コレは既成製品じゃないことの証しだ。

 慌ててもっぺん冷蔵庫を開けてみると、ビール、ジュース、ミネラル・ウォーター、そのどれもがノー・ラベルか、あるいは名前しか知らないよーな凄いもんだった。

 無論、全てが非合成モノである。

 こんなもの、ジャンクじゃそうそう出逢えるもんではない。あるとしたらシティ中央。それも、企業会議に出席できるくらいの大企業・・・

 ・・・まて。

 そーいえば、最初の疑問が全っ然解消されてないぞ。

 なんだかヤケに豪勢なここは、いったいどこなんだ?

 あたしはなんで、どこだかわかんないとこにいる?

 自問して、一番最初に思い出されたのは、悲しそうなプーリーの顔だった。

 記憶の糸を手繰り、少しずつ少しずつ、自分がここにいる理由を探す。

 結論は簡単に出た。

「捕まっちったんだ、あたし」

 プーリーをエレベーター坑に逃がしたところまでは、よく覚えている。二人とも捕まるくらいならって、穴だらけにされることを覚悟で、かなりの無茶をしたんだ。

 ・・・考えてみりゃ、ホントに無茶だ。プーリー、墜落死したりしてないだろうな?

 まああのコのことだから、大丈夫だろーとは思うけど。

 で、その後、なんでか知らんが記憶がない。 カクテル・キャビネットの上に置いてある時計を見れば、時刻は午前十一時十五分過ぎ。日付は四月の三十日。あの時から、十二時間以上も経過している。

 推測になるけど、この身体のだるさからして、たぶんスタンガンかなにかを食らったのだと思われる。

 ヤツらはなぜ、目の前であんなマネをしたあたしを撃たなかったのか?

 ちょいと謎は残るが、今はそのおかげで命があるんだから、喜ばしいことではある。でもやっぱ、なんで殺さずに捕まえたのかってことを考えると、そうでもないかな。

 ・・・捕虜かぁ・・・

 いやまて。

 それにしちゃこの部屋、おかしかないか?

 冷静にあらためて見れば、ホント尋常でない豪勢さだ。捕虜を監禁しとく部屋とは、とても考えられない。

 窓はないが、扉が一枚。これもまた木製で、かなり凝った造りをしている。

 なんか、開けられそうなんだけど・・・

 あら、開いた。

 いともあっさり。

 か、鍵も掛かっとらんとは・・・

「おや、目が覚めたようだね」

 けど、扉の向こう側には人がいた。

 見張りかな、とも思ったが、どうにもそんな感じではない。そもそも扉を出た先からして、さっきの部屋とおんなしように豪華な、どっから見てもリヴィング・ルームってヤツなのだ。

 そしてその声の主は、二十代半ば過ぎくらいの男性。立派なソファに座った、ワイシャツにネクタイ、スラックスという姿の、いかにも企業人ってお兄さんだった。

 思わず反射的に身構えちゃったあたしだが、お兄さん、武器を構えるどころか、持ってる気配さえない。

 それどころか上品にソファに腰を沈めたまま、あたしの方を見るなり目を伏せたのだ。

 そして。

「いやはや、なんとも刺激的な格好で・・・」

 と、のたまうた。

 困ったような、照れたような笑みを浮かべて。

 格好、と言われて、あたしは初めて自分の状態に気がついた。

 ・・・なんも、着とらん・・・

 くぁ~~っ!!

 あたしってば、普段から寝る時はスッポンポンなもんだから、まぁ~るで違和感、感じなかったのだ。

 は、ハズいぃ・・・

 しかし、なにゆえハダカ・・・

 まあ、つまり寝かされる時に脱がされてたってことだろう。んなら、もうすでに見られちまってたんだろうから、一度も二度もおんなしってばおんなし、か。

 なんか、釈然としないが。

 ともかく、仕切直しである。

 元の部屋に飛び込み、ワードローブを開ければ、着るものはたくさんあった。あたしの着てた服は見当たらないが、合いそうなものがあるにはある。どれも趣味はなかなかいいけど、みんなスカートってのがちと気に入らない。

 まあ、贅沢言ってもはじまんない。

 とりあえずこの、ライム・グリーンのワンピースで・・・と。

 さて。

 あらためて扉を開くと、今度はお兄さん、立ち上がってあたしを迎えた。

「おはよう、と言うのには少し遅いかな。ミス・絵里奈・グラヴナー」

 微笑み混じりの御挨拶である。どっかで見たような顔だが、よく見りゃなかなか、悪くない。でも企業家然とした雰囲気は、はっきり言って好みの範疇外だ。

「起きぬけだから『おはよう』でいいわ、ミスター」

 一応、あたしも笑顔を返しておく。礼には礼。それが父親譲りの主義なのだ。

「服のサイズはどうかな。妹のものなんだけど・・・」

「少し大きいけど、大丈夫よ」

 胸が余るのは、ちと気に入らんけど。

「よければ食事を用意させるけど、和食と洋食、どちらが好みかな?」

 あたしにソファを勧めながら、お兄さん。「和食の方が好きだけど、そんなもの後でかまわないわ」

「おや、お腹は空いていない?」

 う・・・

「空いてるけど、後でいいの。それより、聞きたいことがたくさんあるわ」

 なんだかキザでイヤミな兄ちゃんだが、とりあえず話しはできそうだ。ならば確かめたいことが山ほどある。

「それは、僕の方もだよ」

 お兄さんは言った。

「君に尋ねたいことがある。そのためにここへ、お招きしたんだ」

「ふーん。手荒いご招待ですこと」

 気絶させて運び込んどいて、おまけに花も恥じらう十七の乙女をスッポンポンにひん剥いて、お招きもなにもあるかっての。

「それに関しては、申し訳なかったと思っている。ただ何分、時間がなかったのでね。あ、それから君を寝室まで運んだのは僕だが、その後は妹に任せたので、誤解のないように」

 そうだったか・・・

 くそぅ、そーなるとさっきの、ちょっと悔しいじゃないか。

 ・・・ともあれ。

「先に質問する権利は、どちらにあるのかしら。招かれたのなら、その理由を知る権利があると思うんだけど」

「ごもっともだね。君の質問には、できる限り答えるつもりだよ。だが、先に僕の質問に答えてもらいたい」

 ま、そうでしょーね。

「ほかのメンツの居場所なら、あたしは知らないわ。合流場所を決める前に、捕まっちゃったんだもの」

「いや、そんなことはいいんだ」

 おや?

 そんなこと、と、きましたか。

「じゃあ、なにが聞きたいの?」

「君達がなぜシティ・セキュリティに追われているのか、その理由を教えてほしいんだ」

 ・・・

「は?」

 あまりにも、意外な質問だった。

「あ、あれ? お兄さん、ハシモトの人じゃないの?」

「そうだが・・・そうか、まだ名乗っていなかったね。僕はハシモト・インダストリー企業情報部部長の橋本翔一だ」

 橋本翔一!

 どーもどっかで見た顔だと思ったら、ハシモト会長の孫息子だ。千葉の圏内において、少しでも企業の情報に詳しい人なら誰でも知ってる人物である。

 なにせ最大手企業ハシモトB&Mインダストリーの中核たる橋本一族。現在は会長から数えて三世代が経営に参加しており、この人はその三世代目の末弟なのだ。独身ってこともあり、この辺りのミーハー玉の輿願望ガールズの間じゃ知らぬ者のない、血統最高の超エリートである。

 しかしスキャンダラスな噂も多く、トップ・アイドル『ヒカル・ウェスト』と密会とか、人気レディース・ロックバンド『シャッフル』達との熱い夜、なんてニュースが、ネットワークの三面を賑わせたこともあったりする。

 かく言うあたしも、彼のことを知ったのはそっち方面の情報だった。『七福神』の女の子達とお話してる時に、写真を見せてもらった記憶があるのだ。

 その時、ウエイトレスの香菜が言った言葉が、

「千葉のタネ馬・・・」

「その呼び方はやめて欲しい・・・」

「あ。ご、ごめんなさい」

 思わず口に出してしまった。

 しかし、火のないところになんとやら。そんな噂のあるヤツのところに、あたしったらあんな格好で・・・

「君がなにを考えてるのか、大体わかるが・・・」

 咳払いを一つ挟んで、翔一氏。

「噂の全てを否定はしないが、少なくとも同意のない女性に、手を出したりはしないよ」

「あ、当り前ですっ!」

 いかにも紳士みたいな口調だが、そんなことは紳士じゃなくたって当り前のコトだ。だいたいなんかされてりゃ、あたしにだってわかるだろう。えと、たぶん・・・だけど。

「まあ、確かにちょっと後悔してるがね。拘束衣の上からだと、こんなに魅力的だとはわからなかったから」

 こいつわ・・・

 噂通りってことだな、やっぱし。

 だけど、翔一氏の性根はどーでもいーとして、明らかにハシモト中核にいるはずのこの人が、なんであんなことを聞くんだろう?

「話を戻すけど、正直言ってあたしにも、なんで追われなきゃなんないのかはわからないわ。少なくとも追う理由は、ハシモトの方にあるんじゃないの?」

 原因の一端は想像できるけど、それがなんなのかまではわからない。あたしがこう切り返すと、翔一氏は困ったような顔をする。

「その通りなんだが・・・こっちも情報が不足していてね。一応管理職の僕としては、シティ・セキュリティの動く理由を知っておきたいんだ」

 そして、意味アリげに。

 シティ・セキュリティってのは、都市防衛隊のハシモト内部での呼称だろう。どうやらこちらさん達、内部での疎通がうまくいってないようだ。

「あんまし、立ち入りたくないお話ね」

「君達には、一級産業スパイの嫌疑がかかっている」

「ま♪」

 そりゃ凄い。企業法じゃ、殺人よりも重い罪じゃないのさ。

「理由はわかってるんじゃない。でも、そんなあたしが、なんであなたのプライベート・ルームに? それともここは、留置場なのかしら?」

「厳しいな。乗ってきてくれないのかい?」

 苦笑する翔一氏。

 ここまで言われりゃ、あたしにだって少しは話が見えてくる。バカじゃないんだから。

「言い方を変えよう。僕は独自にことの真相を知る必要がある。君達には、真実を支えてくれる協力者が必要だ。違うかな?」

「どーかしら?」

 真相に真実、ねぇ。

 なんで企業の人って、手っ取り早く言えないのかな。

 シティ・セキュリティだか都市防衛隊だかがが動いてる『ウラ』が知りたいって、言えばいいのに。

 とはいえ、ありがたい提案ではある。つまり翔一氏とあたし達とは、利害が一致してるってことだものな。

「でもそうね。条件によっては、乗ってあげてもいいかな?」

「おやおや、強気だな。もちろんそれ相応のお礼はさせてもらうよ」

「あ、いや、それはそれで嬉しいんだけど、そーじゃないの」

「と、言うと?」

「シャワーを使わせてほしーの」

 もう、昨夜の騒ぎで髪はばっさばさだし、なんかちっと、汗臭いし。

「あと、ご飯もほしーな」

「これはこれは。もちろんどうぞ。お友達は隣室で、すでにお食事中だよ」

「お友達!?」

 だ、誰のことだ?

 だだっと駆け寄って、隣室とやらを覗いてみると・・・

「あ、エリーにゃ~♪」

「プーリーっ! アンタどーして・・・」

「あたしも捕まっちゃったのにゃ~」

 サンドイッチをぱくつきながら、やけに明るく彼女は言った。

「エレベーター坑のフレームに引っ掛かっていたところを、保護したそうだ」

 翔一氏はそう言って、ウインクをした。

 なんとも、食えない兄ちゃんだ。

 スカしやがって、ちくしょーめ!


   ☆     ☆     ☆


 二時間後。

 あたしとプーリー、ついでに翔一氏は、機上の人となっていた。

 ハシモトの幹部用大型高速ヘリである。

 あの後、シャワーをすませたあたしは、ご飯を食べながら翔一氏との話を再開し、おおむねの状況を把握した。

 翔一氏は、明言こそ避けたものの、とりあえずあたし達の味方であることを示唆した。そして言葉を選びながら、ていねいに、やはり明言を避けながら、ハシモトの内部で起こっている(と思われる)事柄を説明してくれた。ちなみに( )内は、明言されてないから、一応念のため気をつかっての補足ね。

 で、その内容。


 現在、ある会社は、大きく分けて二つの派閥に分かれている。実際にはもっといくつもあるらしいけど、とりあえずここではA派とB派が二大派閥ってことで、あとはまあ、一応どっちかに肩入れしてるってことらしい。

 主流派はA派。反主流派がB派。だけど二つの派閥がガチガチに対立してるかってーとそーでもなく、基本的には派閥を越えた強大な権力者(会長と思われる)の傘の下で、表面化するほどの問題にはなっていない。

 問題なのは、B派の中心人物。

 コイツがそーとーの権力指向者らしく、なんとしても社の中心に立とうと画策していたらしい。どこにでもいるよね、こんなヤツ。

 実際にはなかなか、地位逆転のチャンスなんかあるもんじゃない。大きな企業になればなるほど、上のポストを崩すのは大変なことだ。

 だけど、そいつは掴んでしまった。

 そのための方法を。

 しかも、力の方向で。


 ・・・まあ、なんてーか・・・

 よーするに、陳腐な御家騒動ってわけだ。

 しかし、あたしのよーな立場なら簡単にそーも言えるけど、当の企業の人にとっちゃ、只事じゃない。特に翔一氏のような立場だと、とても他人事は決め込めない。

「社長の息子ってのも、楽じゃないんだ」

 彼はそう言っていた。

 なるほど、とは思う。

 わからんでもないけど、しかし、そんなのに巻き込まれたあたし達だって、負けないくらいラクじゃないんだけどね。

 でまあ、そんなわけで、とりあえず一連のトラブルの背景は、なんとなく理解できた。あたし達は、そのキーになるものに関ってしまったのだ。

 桂川夫妻。

 小百合。

 翔一氏があたし達をここに連れてきたのは、あたし達のことをこの秘密に触れている関係者だと思ったからだ。だけど残念ながら、この二つにどんな意味があるのかまでは、あたし達にもわからない。

 推測だけならいくらでもできるけど、必要なのはただ一つの正解だけ。それを手にすれば、あたし達も、ついでに翔一氏も、この難事を乗り切れる。

 そしてそのために、あたし達がしなければならないこと。

 それは、小百合と桂川夫妻をなんとしても手元に置き、彼らの関っている『何か』を確かめることだ。

 幸い小百合はあたし達の、より正確にはアルバ達の手元にある。あとは、おそらく監禁されているであろう桂川夫妻と、どうにかして接触すればいい。

 ・・・と、思ったら。

「昨夜、君達の仲間はシティ・セキュリティに逮捕された」

 翔一氏はあっさり言った。

 あたし達の時と同様、アルバ達の方にも人を送っていたらしいんだけど、あっちは間に合わなかったのだそーだ。

 彼の知り得た限りの情報では、シティ・セキュリティは抹消命令を捕獲命令に切り替えたらしい。それには少なからず、あたし達がバラけたことも影響していたようだ。残りのあたし達の居場所を知るための、情報源としてってことだね。

 かなりショックな出来事だけど、とりあえず命はありそうで、ほっと一息。

「だけど、時間そのものはそんなにないわ」

 みんなはあたし達の居場所なんか知らないし、小百合の秘密を掴んでるってわけでもない。置いといたって役に立たないとわかったら、彼らの運命は・・・

「ところが、そうでもない」

 翔一氏は、余裕ぶっこいて言った。

「この件に関しては、例の人物が陣頭指揮を取っている。彼は今日の夕方まで、役員会議で身動きが取れない。つまりそれまで、君の仲間達は無事ってわけだ」

 しかし、それにしたってやっぱ、時間は多くない。

「すぐに出れば確保できるさ。君達の仲間を助けだし、小百合を取り戻すくらいの時間はね」

 そーゆーわけで、あたし達はヘリに乗っているのだ。

 目的地は、千葉中央シティ・セキュリティ本部。例の人物とやらが訪れる前にアルバ達を助けだし、小百合を取り戻すために。

 しかし。

「ねえ、こんなヘリであたし達運んで、だいじょーぶなの?」

 あたしはカーゴ・ルームで出撃準備をしながら、気になることを聞いてみた。

「どうかな」

「どーかなって・・・」

「だけど、他の方法で侵入するなんて、まず不可能だからね。ハシモトのセキュリティは、そう簡単には抜けないよ」

「そりゃーそーでしょーけどね」

 なんつっても当面、この人はあたし達にとって命綱そのものだ。こんなとこでヘマして失脚でもされよーもんなら、あたし達も一蓮托生で産業スパイ容疑確定。一巻の終わり。

「大丈夫だよ、心配はいらない。君達はとにかく作戦を成功させてくれればいい」

 ふーん。ヤケに自信、あるじゃん。

「それより、どうだい、そのギアは?」

「え? へっへっへっへっへぇ~。もぉ、さいっこぉーよぅ♪」

 アルバ達には悪いけど、この成り行きで一つだけ、とっても嬉しいことがあったりするのだ。

 それは、そう、今あたしの乗ってるフレーム・ギア。ヨーロッパはドイツ地区のブルカルト・ファクトリー社製〈クライン・リッター〉が、あたしのモノになったのだ。

 いや~、さすがに大企業の御曹司にして管理職ともなると、器が違うってのか、もぉ~太っ腹太っ腹。

「君達の受けた被害がハシモトの落ち度によるものなら、やはり賠償は必要だから」

 とかなんとか言って、結果全損こいた〈ハンマー・ヘッド〉の代わりに用意してくれたのである。

 なにせ去年生産が打ち切られて中古取引価格が約八十万の〈ハンマー・ヘッド〉に対し、〈クライン・リッター〉は先月十五日流通開始の最新型で、本体価格が五千九百八十万ってシロモノだ。しかも量産がきかず、月産がわずかに十機。頬も綻ぶってモンである。

「今度のギア、かっちょいーにゃ♪」

 隣で爪を研ぐ(文字通り研いでる)プーリーが喜ぶほど、デザインもイカしてる。

 しかもオプションまでフル装備ってんだから、お特もお特。嬉し涙がちょちょ切れるってのは、こーゆーことを言うんだろう。

「コイツさえあれば、ハシモトのセキュリティなんかちょろいモンだわよ」

「そう言われると、ちょっと複雑だな」

 翔一氏は苦笑気味に言う。

「だけど、本当に慣熟期間もなしで大丈夫なのか?」

「まかして! ギアの扱いにかけちゃ、あたしはどんなヤツにだって負けない!」

 確かにちょいとクセのあるマシンだけど、使いこなす自信はある。それにこういう時にこそ、この新型ギアは威力があるのだ。

「そうか。なら任せる。あと一分で到着するから、段取り通り、頼むよ」

「りょーかい♪」

「仲間のことも心配だと思うが・・・」

「わかってる。優先させるべきものは、ちゃんと優先させるわ」

 明言を避け続けていた翔一氏が、唯一言葉にした対象、小百合。

 聞いたわけじゃないけど、おそらく彼は、核心に近いものを握っている。そのために絶対に必要なのが小百合なんだろう。

 ふふん、やってやるわ。

 アルバ達も、小百合も、絶対にここから助けだす。

「着いたにゃ」

 ギア越しにはわからないような、微かなランディングの衝撃を、プーリーが知らせてくれる。

「開いたら即、飛び出すわよ」

「わかってるにゃ」

 カーゴ・ルームの扉が開いた。

「GO!」

 さあて、ミッション・スタートだ。


    ☆     ☆     ☆


 ヘリの降りた場所は、円筒形のシティ・セキュリティ本部ビル屋上だった。

 このビル、上背は意外に低く、地上六階までしかない。これはセキュリティ上の配慮で、あまり背の高いビルにしてしまうと、上空から接近された時、地上高射砲での攻撃が難しくなるかららしい。

 そのかわりフロア面積はヤケに広く、野球場くらいはラクに取れそうなほどだ。

 もし真ん中辺に降りてたら、ちょっと面倒だったかもしれない。幸い、降りた場所は縁近くで、あたし達には好都合だ。

 ヘリはへりに降りた、なんてね。

「構わず飛び出していい。屋上での攻撃はないから」

 翔一氏の言葉を受けてカーゴ・ルームを飛び出す。〈クライン・リッター〉の右腕でプーリーを抱き、柵を飛び越して地上へ。

 もちろん自由落下じゃさすがにたまらないんで、スラスターを効かせながら。

 ビルの高さから壁に沿って降りれば、対空監視機器は反応しない(翔一氏・談)。だから視認されるまでは安全だけど、着地した頃には警報が鳴っていた。

 まあ、そこまで甘かぁないわな。

 降りてすぐ、プーリーを植え込みの中に下ろす。ちなみにこのコは、袋に詰めてあったりする。

 あたし達の降りた方は南側で、本部ビルを背にして正面に、別棟の兵舎がある。左手に兵器関係の研究棟、右手にはヘリ・ポートがあり、その向こうには滑走路が見える。

 数秒で、本部警備の兵士達が、わらわらと姿を見せはじめた。

 さすがに対応が早い。

「さてさて、おっぱじめるよ~!」

 口に含んでいたカプセルを、こりりっ、と噛み潰す。独特の酸味が、口中に広がっていく。

 これは『プレスト』っていう、反応加速剤。吸収が早く、服用すれば強化神経並に反射速度が早くなるんだけど、その分副作用も強いんで滅多に使わないドラッグだ。

 右手にATライフル、左手にバズーカ、両肩に二連装のミサイル・ポッド、両脚にミニ・ロケット・ランチャーって具合の我が〈クライン・リッター〉を囲むように、兵士達は展開していく。

 前面にフレーム・ギア部隊、言わずと知れた〈アシュラ〉君達十機ほどを押し立てて、サイボーグらしき兵士が二十人ほど後方を囲む。さらにその向こうからは、戦車部隊も動き出しているようだ。

「侵入したサイボーグ、抵抗せず投降せよ」

 型通りの警告。だけど、なんかヘンだと思わない?

 むっふっふぅ♪

 だってあたし、サイボーグじゃないもんね。あたしはフレーム・ギアに乗ってる、ふつーの女の子だもん。

 バカだよねぇ~。ちゃんとデータをチェックすりゃ、そんな間違いはしないのに。

 賢明な方にはもうおわかりだろーけど、つまりこの新型ギア〈クライン・リッター〉は、そう見られてもおかしくないようなシロモノなのだ。

 最大高二メートルから二メートル半というコンパクト・ボディ。乾燥重量二百十一キロという超軽量。ハード・プロテクターをちょっとゴツくした程度にしか感じられないほど、スマートなスタイリング。

 そしてそして。

 精悍な逆三角形フォルムの、センターにレッド・シールド処理ブーメラン型モノ・アイ、両サイドにV型アンテナ・センサーを設置された、超かっちょいいヘッド・パーツ。

 コイツが公式発表された昨年のフレーム・ギア・ショーでの衝撃的出会いからこっち、あたしが惚れて惚れて惚れ抜いたのは、とにかくこの外観だった。

 もぉ、文句なしにイカスのだ。

 そしてカタログ・データを見てますます気に入ったのは、『パイロット対応調節システム』と呼ばれる、徹底したパーソナル・データ重視の開発思想だった。

 最大高に幅があるのはヘンだ、と、思われた方もあるだろう。実はコレこそがそのシステムの特徴で、搭乗するパイロットの体格に合わせて、ボディ・バランスを調節するからなのだ。

 普通のフレーム・ギアなら、乗ってしまえばギアのサイズなんて、あんましパイロットに関係はない。調節する必要があるとすれば、フット・ラダーまでの距離とか、コントロール・スティックの長さとかである。

 ところがこの〈クライン・リッター〉、それを調節すること自体が、ボディ・バランスの調節に繋がるシステムだったりする。

 どういうことかというと、コイツ、『乗る』と言うよりも『着る』って表現の方が適切な、斬新な思想のフレーム・ギアなのだ。

 イメージとしては、ちょっとごつい戦闘用プロテクター。腕の中には腕が、足の中には足が、ちゃんと入っているのである(足に関しては、これまでのギアでも膝下ぐらいは入ってたけど)。

 ちなみに現在の全高は、最低の二メートル。これはあたしの体格に合わせたためだ。アルバよりちっちゃいんだから、コイツはちょっと凄いでしょ。

〈クライン・リッター〉は、その特異な構造のため、多くの操作系がまったくの新機軸になっている。そのせいで最初はけっこう戸惑うけれど、そこらヘンはさすがにブルカルト・ファクトリー。基本的なオペレーション・システムは従来機のものを踏襲しているから、これまでの『どれ』が『なに』に対応しているのかさえ理解できれば、あとはその感覚に慣れるだけでOKなのだ。

 ちなみにあたしはヘリの中で、すでに一通り把握している。

 いやそれにしても、ほんとーに、なんて素敵なギアなんでしょう♪

 ・・・さて。

 話がだいぶそれてしまったけど、目の前の状況は、にわかに緊迫していた。

 それはもちろん、あたしが呼び掛けに応じないからである。そんなもん、応じるくらいなら、ハナからこんなとこにゃ来ないわな。

 返事は、これだっ!

 バズーカを立て続けに二発、両脚脇にマウントした三連ミニ・ロケット弾を全弾、計八発を包囲陣の中に叩き込んでやる。

〈アシュラ〉一機とサイボーグ一体に直撃したが、ほとんど同時に反撃が来た。

 ヤツらの主装備は、AT/サイボーグ専用ライフルや大口径の機関砲。容赦なく襲い来るバラ弾を、あたしは軽い跳躍でかわし、同時にロケット弾のホルダーを強制排除する。

 軽い、と言っても、スラスターなしで二十メートルは跳ね上がってしまい、自分でもちょっとビックリだ。

 なんとまあ、データ以上の運動性能!

 とはいえ単なるジャンプでこんなに跳んでは、狙う方にはいいマトである。慌ててスラスターで機動制御。そして回避行動を取りつつ、上空からライフル弾、バズーカ砲を叩き込む。

 狙いはいらねぇ! 

 っとばかり、そのヘンにどかどかと、あるだけ弾を撃ちまくった。

 あたしを追って跳ぼうとした〈アシュラ〉や、マトを見失っておろおろするサイボーグが、降りしきる弾丸に撃ち抜かれ、あるいは炸薬に弾かれて倒れ伏す。

 威圧感たっぷりの密集包囲も、確信犯には効果ナシ。あっという間に戦力半減。優位に立ってるなんて精神的余裕は、むしろつけ込む隙を生み、逆効果なのだ。

 そうこうしてる間に、タンク部隊が包囲を完了した。ところが、ここに到着するまでもそうだったけど、自慢の戦車砲を撃つ気配がない。それだけじゃなく、ギアもサイボーグ兵も、バズーカやロケット・ランチャー持ってんのに、使おうともしない。

 まあロケット・ランチャーは使いにくいだろーけど、ほかの兵器を使わない理由は、実はあたしにはわかっている。

 あたしの後ろに、本部ビルがあるからだ。

 ライフル弾や機関砲には耐えられても、バズーカや戦車砲、ロケット弾には耐えられないのだろう。

 残弾の切れたライフルとバズーカを投げ棄てて、あたしは一人ほくそえむ。

 むふふ♪ 思ったとーりだ。

 銃撃がやみ、火器を失ったあたしを見て、連中はチャンスと見たか、衰えかけた士気を盛り返した。歩兵とギアは半減したが、タンクが五輌も出てきてる。コイツの副砲である機銃の火線が、なかなかにうるさい。輌当り二門だから、計十門。喪失した戦力を賄うに十分なのだ。

 だがしかしこの〈クライン・リッター〉、甘く見てもらってはちと困る!

 このコの真の能力は、こんな射撃戦にあるのではない。この程度の戦いなら、〈ハンマー・ヘッド〉・・・じゃちと苦しいが、〈アシュラ〉程度のギアでもできる。

「いっくぞぉぉ!」

 機関砲を構える〈アシュラ〉に向かって降下しざま、あたしは腰にジョイントされたスティックを抜いた。

 直径六十六ミリ、長さ四百五十ミリの八角筒は、先端から白熱するプラズマを放出する。そしてそれが拡がることなく、一直線に伸びてゆく。

 形成される、光の刃。

 プラズマを、長さ二メートルの電磁フィールドに封じ込めた、最先端エネルギー工学の結晶体。

 その名も、

「必殺! プラズマ・ブレードっ!」

 もちろん『必殺!』は名前に含まれない。

 着地しながらの横薙ぎの一払いは、〈アシュラ〉をやすやすと両断する。高圧エネルギー・ブレードの切れ味は、単分子ナイフのそれにさえ匹敵するのだ。

 いや、さすがにちょっと負けるかな?

 だけどコイツには、単分子ナイフにはない、とんちの利いた応用法がある。攻防一体の武器としては、確実に優ってるハズ。

 ともあれ、これには包囲陣がざわめいた。

 無理もないだろう。試作品はいくつかあるものの、ギア用の装備として正式に製品化されたのは、コイツが第一号なのだ。

 しかも、オプション。

 一本で〈アシュラ〉の五割増しの価格がついてる上、専用エネルギー・パックを装備する必要まであるんだから確かに標準装備ってワケにはいくまい。

 ん~~、なんて贅沢♪

 このまま陶酔感に浸っていたいところだが、しかし動きを止めるのはマズい。接近戦に持ち込んだ以上、もはや距離を取っての回避行動ってワケにはいかないのだ。

 いかに〈クライン・リッター〉といえども、直撃を受けたらひとたまりもない。なんせこのコの装甲は、今まであたしが持ってた中で一番ちっちゃい〈ハンマー・ヘッド〉よりも薄かったりする。

 装甲が弱いのは小型ギアの宿命。

 だけどこのコの場合、元々弱いのをさらに削り、その分をケタ違いの機動力で補えってのだ。

 対人兵器ならまだしも、アンチ・ギア/タンク装備相手はかなりキビシイのである。

 もっとも装甲重視の鉄ダルマみたいなギアより、あたしはこーゆーシャープなギアの方が好きなんだけどね。

 とまあ、そんなわけで。

 先手先手を取り続けなきゃ、いかに高機動ギア、『プレスト』の反射加速、そしてあたしの天才的パイロット・センスを持ってしても、これだけの数は相手にできない。

 動揺のおさまらないうちに、さらに一機の〈アシュラ〉と、一体のサイボーグを屠る。

 ちっ!

 タンクのヤツら、まだ撃たないのかよっ!

「しょーがないかっ!」

 意を決し、思いきりよくタンク包囲網の外に出る。一跳びでタンクを飛び越え、砲塔を切り裂きつつ。

 そして着地しざま振り向いて、温存していたミニ・ミサイルを全弾、本部ビルに叩き込む。

 しかしさすがに強度は高い。集中させずバラけさせたとはいえ、ミサイルの直撃である。それでガラスを破るのがせいぜいとは、ちょっと驚く対弾強度だ。

 この攻撃には、完全に気圧されて、ビビりあがってた兵士達も色めき立つ。

 この馬鹿どもも、さすがに自分達の役割を思い出したらしい。もしかしたら防衛責任者かなにかに、無線で怒鳴られたのかも。

「べっ!」

 とたんに、あらぬ方向からも至近弾。

 さすがに拠点、増援も早いわ。

 追加のギアは、右手の研究棟方面からだった。

 あら? 〈アシュラ〉じゃないな。

 ・・・!

 出現した二機のフレーム・ギア。

 コイツらはなんと、ハシモトの最新鋭プロトタイプ・モデル、〈ヤシャ〉じゃないか!

 昨年のショーに出展され、〈クライン・リッター〉とともに注目を集めたヤツだ。

 このモデルは、戦闘用ギアとして高い評価を得ている(あたしは全然そう思わないけど)〈アシュラ〉をベーシック・マシンとした発展型とされているけど、実際には〈アシュラ〉開発当初のコンセプトを踏襲し、〈アシュラ〉で実現できなかったいくつかのシステムを、ほぼ完全な形で完成させたものなのだ。

 もっとも特徴的なのは、白兵戦用の武器を標準装備している点。これまで実戦において中・近距離での主力とされてきたフレーム・ギアだけど、ブルカルトとほぼ同時期に、ハシモトは『接近戦こそギアの領域』という考えを打ち出してきたのである。

 火力に対して火力で対抗するのは、フレーム・ギア本来の特質ではない。これはあたしも同意見だったので、〈クライン・リッター〉とともにかなり気にしていたのだ。

 ただ、その思想の割にオリジナル・コンセプトがやや古臭いのと、機動力よりも装甲性能を重視する姿勢が疑問で、あんまり欲しいとは思わなかったんだけど。

 それでもこれは、次代を担うニュー・マシンであることに変わりはない。

 最新モデル、夢の競演♪

 こいつぁちっと、凄いことだぞ~

 ・・・なんて、呑気に考えてられる事態じゃない!

 背筋が凍る。

 斜め前のタンクが、いつの間にか戦車砲を合わせていたのだ。

 もしも『プレスト』を使っていなければ、反応しきれなかったに違いない。火線が閃いたのと、あたしが動いたのと、はたしてどっちが早かったのか。

 次の瞬間、あたしは後方に爆発音を聞いた。左肩のミサイル・ポッドが吹き飛ばされ、アンテナ・センサーが不調を訴える。

 油断、ってワケじゃない。

 必要なことだったとはいえ、接近戦を自ら抜けてしまったら、こうなるのが当然の帰結だ。

 この時、もしも少しでも惚けていたら、集中砲火の餌食だっただろう。いや、この時のあたしは、もしかしたら惚けていたのかもしれない。

 それでも、ドラッグに加速された反射は容赦なく、肉体の、そして精神の限界を越えて反応した。また最新鋭のギアはそれによく応え、その性能を発揮してくれた。

 戦車砲、ライフル、機関砲。

 十門以上が一斉に閃くより早く、〈クライン・リッター〉は跳ねていた。

 この跳躍はあたしの命を救ったが、その代償に数瞬、意識を遠退かせた。

 わずかな空白。

 戦場での、意識の喪失。

 それは一秒にも満たない時間だったろう。

 だけど、パニックを誘発するには十分なものだ。

 意識が戻った時。真っ先に目に入ったのは、眼前に迫るフレーム・ギアだった。

 真正面。

〈アシュラ〉。

 背景に、空。

 全ての音が消え、恐怖が心を支配する。

 全身から汗が吹き出し、目を閉じることも、声を出すこともできない。

 冷たく無表情な、鋼鉄の顔。

 バズーカを構えたそいつが、まるで魂を刈り取る死神のように見えた。

 時が、必要以上にゆっくりと流れる。

 コマ落しのように。

 そして・・・

 あたしの〈クライン・リッター〉は、〈アシュラ〉の逞しい腕に抱き止められた。

「え?」

 その途端、時の流れが正常になる。

 音が蘇った。

「う、うわあああっ!!」

〈アシュラ〉のパイロットの悲鳴が飛び込んで来る。

 それが引き金になって、思考はパニックを通り越した。

 信じられないような珍事。

 その理由を直観的に理解して、かぁっ! と、頭に血が昇る。

 恥ずかしいのと情けないのと頭にくるのが入り交じって、真っ赤っかに紅潮する顔。

 交戦中に我を失うなんてっ!

 こんな連中に恐怖を感じるなんてっ!!

 自分の未熟さを突きつけられたみたいで、情けなく、恥ずかしい。

 それに加えて目の前の〈アシュラ〉。

 あたしが〈ヤシャ〉に気を取られた隙を突いて、上空を取ろうとしていたんだろう。そこに思いもかけない勢いで突っ込んでこられたもんで、パニクったに違いない。

 ・・・情けない。

 こんなヤツにビビったあたしも情けないけど、そんなあたしにビビったコイツも情けない。

 こいつがきっちりトリガーを引いてさえいれば、あたしはこんな、いたたまれない思いをせずにすんだのに!

 しかもその上、あの悲鳴だ。

 お前はこんな情けないヤツを恐がったんだぞ、と、言わんばかりのあの悲鳴だ。

 くぁぁぁっ! 腹立たしいっ!!

「許さぁんっ!」

 動揺おさまらない〈アシュラ〉を蹴り飛ばし、プラズマ・ブレードを一払い。

 ふじゅわ!

 装甲をずっぱり切り裂く、光の刃。

「あ・・・」

 その時、パニックから一気に逆上した頭が、ようやく冴えてクリアになった。

 いわゆる、我に返るってゆーやつである。

 そして、自分の置かれてる、とゆーか、招いた事態、とゆーか、とにかくそーゆーのが思い出される。


 ジャンプして空中にいること。

 下にはおっかない敵がたくさんいること。

 目の前の敵を斬ったこと。


 以上の三つから推測されるのは、とりあえず今、下から撃たれないでいたのは、目の前で斬られてバチバチいってる〈アシュラ〉がいたからだろうってことだ。

 つまり・・・

「ヤバぁっ!」

 あわててスラスター・オン!

〈アシュラ〉に蹴りくれた反動もあって、間一髪、火線を逃れる。

 あ~もう、心臓がバクバクいってるよ。

 戦車砲がかすめてから、たぶんあっても二秒くらいの間なのに、凄く長く戦ってた感じがしちゃう。

 戦闘中にはあるまじきことだけど、極度の緊張と安堵のせいで、集中力がぶち切れた。

 このまんまじゃあたし、とてもじゃないけど持ちそうもない。

「プーリー!」

「入ったにゃっ!」

「うしゃっ!!」

 植え込みに隠れてたプーリーは、本部ビル内への侵入を終えていた。

 実はこの大暴れ、なんとか一階のガラスでもぶち破り、そこからプーリーを忍び込ませるための作戦だったのだ。

 こんだけハデにやれば敵の目はあたしに向くだろうし、本部ビル内の戦闘エリア付近には、退避命令が出るだろうから。

 ほんとは自分のミサイルでなく、敵を引っ掻き回すだけ引っ掻き回して、やつらの砲で壊させたかったんだけどね。

 でもま、とりあえずうまくいったみたいだから、これならいいや。最初の陽動作戦は完了ってことにしよう。

 できるならもっと粘りたいし、〈ヤシャ〉はもう少し見てみたいとこだけど、今のあたしじゃ殺られちゃうだろうし、今ならポジションもいいし。

 ってわけで、あたしはそのまま本部ビルにすっ飛んで行き(もちろんジクザグに回避はして)、四階の窓を叩っ切ると、そのまま中に入り込んだ。

 第二次陽動作戦である。

 思いっきりあからさまな侵入だから、本部内の注意もあたしに向くことであろう。

 さすがに中に入り込むと、外の連中も撃っては来れない。〈アシュラ〉にせよ〈ヤシャ〉にせよ、でかすぎて入ることもできない。

 いっぺん、外に向かって、思いっきりアッカンベェ~をかます。

 んで、気分を入れ替えて。

 こっからが、〈クライン・リッター〉の真骨頂だぜ!



 二一九五年四月三〇日 午後二時二一分


 そーゆーわけで。

 イヤなことは早く忘れて気分を切り替えようってことで、戦いの舞台を移したあたし。

 いよいよ敵の本陣で本丸とも言うべき、本部ビル内である。

 目的はただ一つ、時間稼ぎの陽動作戦。でなけりゃわざわざ、四階なんて選ばない。

 なにせこのフロアから上は、トレーニング施設に娯楽施設、食堂関係。いわゆる福利厚生ブロックで、シティ・セキュリティ本部ビルにあっては重要性の一番薄いエリアともいえる。

 戦略上、もっとも意味のないところだ。

 防衛部隊は、これを幸運と受け止めるだろう。階下の重要ブロックに侵入されまいと、なんとしてもここで食い止めんとするはず。

 それでこちらに目が向いてくれさえすれば、あたしとしては満足なのだ。

 案の定、侵入して間もなく、防衛部隊は激しく攻勢をかけてきた。こちらに飛び道具のないことはもう知られている。戦力として、ギアやタンクと渡り合えることも。

「うひ~っ! さすがにキビシィっ!」

 屋内にも関らず、兵士達はATライフル級の装備を投入してくる。柱の陰に隠れても、それごと破壊しようって勢いだ。

 だけど、こういう場所の戦いこそが〈クライン・リッター〉にとっては本領。なぜここまで、装甲を犠牲にしてまで小型化を計ったのか、ヤツらは身をもって知ることになる。

「行くよ、ウラ技!」

 あたしは左腰から、もういっちょスティックを取り出し、しっかりとグリップする。

 そう、プラズマ・ブレードは一本じゃなかったのだ。一本でも十分に凶悪な武器だけど、それが実に贅沢なことに二本も装備されてるのである。

 ぷぷぷっ♪ 持つべきは金持ちのバック・アップだぁ~ねぇ♪

 ともあれ、なにゆえ両手にプラズマ・ブレードを持つことがウラ技なのか? いくら二本あったって、それだけじゃATライフル弾の前では意味がない。

 その答えはこうだ。

 ブレードの出力を上げると、長さに変化は起こらないけど、プラズマを封じ込める電磁フィールドに、ぶれが生じ始める。この状態で二本のブレードを交差させると・・・ほら。電磁フィールドが融合して、パチパチってプラズマが元気になるでしょ。んで、コイツを左右に広げると、あ~ら不思議。とろろか納豆かって具合で薄い膜状に電磁フィールドが引っ張られて、プラズマ・シールドの出来あがり!

 これは、実はマニュアルにも載っていないテクニックだったりする。ヘリの中で面白がって試した時、偶然にも発見した現象なのだ。

「うりゃあっ!」

 柱の陰を飛び出し、プラズマ・シールドを前面に広げて敵陣へ突入っ!

 途端に襲いくる銃弾の嵐。

 幅三メートルほどの長い通路。その十二、三メートル先に五人の匍匐した兵士と、四人の中腰の狙撃兵。さらに後ろに立った射手と合わせて、全部で十五の銃口が狙っている。なるほどこれなら、隙間なく弾幕を張れるだろう。

 だが!

 幅二メートル近いプラズマ・シールド。あたしはそれをかざしつつ、スラスターでホバリングすることにより、ほとんど全身をカバーすることができるのだ。

「な、なんだ!?」

 激しい銃声の中、驚きの声があがる。

 さもありなん。電磁バリアの実験は数々行なわれど、実用に足るサイズはエネルギー効率上完成されていない。そりをこんなところで目にしたら、まぁ、ビビるわな。

 プラズマ・シールドに触れるだけで、銃弾は魔法にかかったように霧散する。高圧エネルギー、おそるべしって感じだ。

 あたしは勢いもそのままに、わっと崩れた人垣に突入する。プラズマ・シールドに触れた不幸な兵士は、高圧エネルギーの影響をまともに受けるハメに陥った。

 なるほど!

 面積は広くなっても、ブレードとおんなし効果はあるんだよな。

 だけど、さすがにそれで戦い続けるわけにもいかない。便利だけど、やはりエネルギーの消耗が激しいのだ。

 出力を標準まで下げ、シールドをブレードに戻して、あとは至近での白兵戦である。大柄のATライフルでは、こうなると取り回しも利かなくなる。まして乱戦となると、大火力は不都合の方が大きい。その中で我が〈クライン・リッター〉は、ギア離れした滑らかな動きで接近戦をこなして見せた。

 この動きこそ、〈クライン・リッター〉の真骨頂なのだ。

 中・近距離での射撃戦が基本で白兵はあくまで補助、というこれまでのギアの定義に真っ向から反し、白兵戦闘にこそウエイトを置くべきだというブルカルト社長の自己主張が、このコの開発思想なのである。

 実にステキな考えだとあたしは思う。こういうマシンさえあれば、『強くなるため』にサイボーグ化を無理矢理に図る必要もなくなるんだから。

 あたしは別に、サイボーグを差別する気もなければ否定しようなんて気もない。アルバもプーリーも、大事な大事な友達だもん。だけど、せっかく生まれもった身体を、『便利だから』とかって理由でないがしろにするのは、どうにも好きになれないのだ。

 まあそーゆーのは個人の自由だし、とくにどーのこーのって言う気はないんだけどね。

 あたしは仕事柄、こんなアブナイこともやる。だけどなるべくなら、サイバーで便利なものに頼らないでやっていきたい。

 あくまで素の自分で、技量でもって。

 この〈クライン・リッター〉は、そんな理想を支えてくれる存在になりそうだ。実にありがたくも頼もしい。

「へへへっ♪」

 速攻で第一陣を掃討し、あたしはかなり精神的に持ち直した自分を感じる。

 気を抜かず、やり方を間違えず、自分のポテンシャルを最大限に引き出せば、あたしは超一流のギア・パイロットなんだ。

 そしてそうあり続けることが、あたしが生きるために必要なことで、もしかしたら生まれた理由そのものなのかもしれないんだ。

 うん。

 ・・・なんて、ぼやぼやしてると新手が来ちゃうな。倒した兵士達の持ってた武器をいくつか拾って、左手とサブ・ウエポン・フックに引っ掛けとく。

 小さいゆえに、歩兵用の武器が使えちゃうってのも、このコの優れたポイント。

 すぁて!

 プーリーから作戦完了の連絡が入るまで、頑張って粘らねば、ねば。

 と思った矢先・・・

「エ~リぃ~」

 と、通信機からネコ娘の声。

「終わったの?」

「そぉれどころじゃにゃいにゃ~。もぉ追っかけ回されちってムチャクチャにゃあ~」

 あっりゃっりゃあ・・・

 やっぱし、単純な作戦過ぎたか。

 こりゃ、しょーがないな。

「今どこ?」

「地下三階にゃ~」

 なるほど。留置所ブロックのある階までは行ってるワケだ。

「うし、中央エレベーターで降りるわ。そのヘンで落ち合うわよ」

「早くにゃ~」

 プーリーがこうも弱気な声を出すってのも珍しい。相当キビシイみたいだ。

「なら!」

 通信が切れたのと時を同じくして現われた新手に、ライフル弾をぶち込んで。

「急がなきゃ!」

 通路をがきょがきょ走り出す。

 このビルは全体構造として円形で、エレベーターは乗用が中央に四基、北側に荷物運搬用の大型が二基ある。ちなみに乗用はリニア式、荷物用はワイヤー式である。

 階段は東西南北に一つずつ、中央エレベーターを巻くように螺旋階段が一つだ。

 実にわかりやすい配置である。

 このフロアはトレーニング施設なもんで、他フロアに比べると仕切り壁も少ない。あっても薄物だから、移動はラクなもんである。

 待ち伏せを撃ち倒しつつ斬り倒しつつ、薄壁をぶった斬りつつ叩き破りつつ、あたしはサクサクと中央エレベーターに向かう。

 サクサク、なんてホントにラクそーな擬音だけど、実際ラクなもんであった。

 外のギアの練度はまあまあ悪くないレベルだったのに、内部の兵士には並以下の採点しかできない。

 まがりなりにも拠点防衛なんだから、もうちっとリキ入っててもよさそうなものなんだけど・・・経験の問題だろーか? 

 ハシモトの軍事拠点が攻められたなんてこと、過去にもないだろーし・・・

 まあなんにせよ、障害が弱いってのはありがたいことだ。そうでなくともしんどい作戦なんだから。

 中央エレベーターは、フロア中央の円形ロビーの中心に、円柱状に設置されている。ロビーへの入り口は、それぞれエレベーターのドアと向かい合って、東西南北にある。全てガラス張りの自動ドアで、外壁に使用されてる窓と同じ材質らしい(翔一氏情報)。

 基本的な昇降はここが中心になってるはずだから、こりゃさすがに警戒は厳しいんだろうなぁ・・・と思ったら、意外なことにロビーは空っぽだった。

 あたしは南側から接近したのだけど、念のためぐるりと外からロビーを回ってみたが、どのドアから見ても兵の姿はない。

 お、や?

 まあ、それならそれでいいけど・・・

 てとてととロビーに入り、エレベーターの呼び出しボタンを押す。

 ちょーど四階で停まってたんで、すぐドアは開いた。『B③』を押し、『閉』を押す。

 ドアは閉まったけど、動く気配がない。

 なるほど。

 エレベーターは他から操作されているらしい。まあ、ラクラク下のフロアに入れてはくれないよな。

 で、それと同時に昇降の螺旋階段から、大挙して兵達が降りてきたようだ。

 ・・・追い詰め&待ち伏せ作戦のつもりだったらしい。

 まあ悪くないけど、エレベーターが四つともここに停まってたり、ここに誰もいなかったりじゃ~露骨すぎるんでないかな?

 激しい抵抗の末、やっとの思いで乗り込んだエレベーター・・・なら、あたしでも引っ掛かってたかもしれない。トラップ張るなら、もっと頭と身体を使わんとね。

「アホくさぁ~」

 頭上で響く凄まじい銃声を聞きながら、あたしはすいすいとエレベーター坑を降りていった。

 エレベーター・ボックスの床なんか、プラズマ・ブレードの前には豆腐みたいなもんである。

 三、二、一、二、三と、地下三階。

「プーリー、どこ?」

「ろ、ロビーに着いたにゃっ!」

「うし! 今出る!」

 ギョギョン!

 プラズマ・ブレードを閃かせ、目の前のドアを叩き斬る。

 がここっ、と落ちていくドアの向こうには、エレベーターを包囲している数人の兵士。その茫然とした表情から察するに、あたしが四階のトラップを抜けたって報告は、まだ入っていないようだ。

 間髪入れず飛び出して、そいつらを斬り伏せる。戦場での動揺は命取りだぜ。

 ところで。

「プーリー?」

 が、見当たらない。

 通り過ぎて、どこかに逃げてったのかな?

「早く来てにゃ~」

「来たわよ、どこにいんの?」

「ロビーにゃ~、も~もたないにゃ~」

 は?

 よく見れば、目の前の壁に赤十字。

 ガラス張り自動ドアの向こうで、腰抜かしてる医療スタッフと思しき人。

 医療施設は、確か地下二階・・・

「数え間違いた~!!」

 三、二、一、ときたらもっかい一を挟まなきゃイケナイんだったわさ。

 こりゃイカン、と再度エレベーター坑に飛び込もうとしたらば。

「にゃにゃにゃにゃにゃ~っ!!」

 通信機の向こうからと、ギアの装甲を通しての両方からプーリーの声が響いてきた。

 階段である。

 どうやら地下三階で堪えきれず、階段に逃げ込んだらしい。

「エ~リ~っ!」

 あたしの姿を認めるなり、プーリーが飛びついてくる。

「あぁ~っ、爪!! 爪!?」

 危ないから引っ込めてよ、と言いかけて、あたしは思わず息を飲む。その手甲に仕込まれたスティール・クローが折れ、あるいは曲がっているのだ。

 プーリーは目にも止まらぬスピードで取りつくと、すすっと〈クライン・リッター〉の背中にしがみついた。

 怯えている。

 普段はホンモノのネコのように気紛れだけど、戦いになると猫科の獣のように勇猛で、恐れを知らないこのコが。

「どうしたのっ!?」

「歯がたたにゃいにゃ~」

 プーリーの爪が通用しない!

 恐るべきスピードをもって、厚さ十二ミリの鋼板をも切断するスティール・クローが?

「サイボーグなの?」

「たぶん・・・くるにゃ!!」

 階段を、ゆっくり上がってくる三つの影。

 身の丈は二メートル近いが、ぱっと見には普通の人間となんら変わるところはない。しかし、今の有り様は、およそ普通の人間ではありえない様相だ。

 身に着けた軍用迷彩服はぼろぼろに切り裂かれている。皮膚にも無数の断裂が見られ、場所によっちゃ完全に剥げてて、金属が剥き出しだ。これはプーリーの抵抗の激しさを物語るものだろう。普通の人間なら、これで動き回れるはずもない。

 だが、そこからは一滴の出血も認められず、サイボーグの明かしたる緑色のリンゲル液さえ流れていなかった。

 合成皮膚の下は、まったくの無傷なのだ。

 これはちょっと、信じられない現実である。並のサイボーグなら確実に陵駕する〈クライン・リッター〉の装甲でも、プーリーの爪なら引き裂けるだろう。アルバだって、一対一で喧嘩したら、勝つのはプーリーだって言ってたほどなのに。

「おやおや、ネズミが二匹ともお揃いだ」

 階段を昇りきり、真ん中のヤツが口を開いた。顔の皮膚が垂れ下がり、剥き出しの金属がカクカクと動いている。

「手間が省けたぜ。指令室! こいつらは俺達で始末する。こっちに人を寄せんなよ」

 一時とはいえ増援が来ないのはありがたいが、このヤロー、ゾンビみたいな顔してるくせに、偉そうな口をきく。

 でも、異様な雰囲気だ。

 あ、いや。ゾンビみたいだからってワケじゃなくて、コイツの放つ雰囲気ね。

 これまで何人もサイボーグを見てきたけど、こんな気配を持ったヤツは見たことがない。

「アンタ、ホントに人間?」

「ほぉ、ネズミは二匹とも嬢ちゃんかよ」

 そいつは嬉しそうに声を上げ、答えた。

「まあな。それもよ、究極の人間様だぜ」

 唸りを上げて、ヤツらの武器が閃く。

 スピード自体は恐れるほどでもない。だけど、展開すると同時に殺傷力を持つその武器は、あたしに大きな驚きを与えた。

「プラズマ・ブレード!!」

 その形状は〈クライン・リッター〉のものとは違ってるけど、違えようもない。製品化こそしてなくとも、ハシモトほどの大企業だ。なるほど、あってもおかしかない。

 あたしは飛び退きつつ、左手のサイボーグ・ライフルを撃ち込んだ。衝撃でグラつき、迷彩服と合成皮膚は引き裂けるものの、それ以上のダメージは及ばない。

「無駄だぜ」

 言われるまでもない。試しただけだもん!

 とはいえ、凹みもしないってのにはちとビックリだ。いったいどれほどの強度なんだ?

「なら、コイツはどぉだ!」

 一気に飛び込んで、プラズマ・ブレードを振り下ろす。高圧エネルギー兵器なら、物体強度は関係ない。崩壊にかかる時間が少し長いか、短いかの問題だ。

「へ!」

 ヤツはブレードを水平にかざし、受け止めようとする。

 ラッキー!

 電磁フィールドの融化現象を、コイツは知らないらしい。接触と同時に融合し、糸を曳くようにヤツの身体に・・・

「え!?」

 行かなかった。

 まるで弾かれるように、あたしのブレードはそこで留まった。

「甘いぜ!」

 次いで襲いくる二人分のブレード。左側の一本はライフルで根元を押さえてかわしたけど、右側のヤツっ!

「なにしてるにゃ!」

 ・・・は、文句を言いながらも顔面キックをプーリーが叩き込んでくれて、辛くもピンチを乗り切った。

「本気出すにゃ!!」

「ごめんごめん」

 サイボーグ・ライフルを捨て、左手にもブレードを開く。

 考えてみりゃ、規格が違えば電磁フィールドの周波数も違うんだろう。ヤツの得物の方がわずかに長いところを見ると、基本出力が高いってことみたいだ。それじゃ融化も起こらない。

 ちっと奇策に走り過ぎた。

 だけど、本気になれば!

「・・・勝てるかな?」

 相手は三人。

 それも、これまで出てきた中じゃ、かなりの腕のサイボーグだ。かなりチーム・ワークもいいし、あたしの得物にもビビらないし、その上、武器のハンデもありゃしない。

「・・・ど~かにゃ?」

 プーリーが撹乱に参加してくれたとしても、相手はまだ多い。そもそもそれ以前に、このコの武器が通じないんだから、はたして撹乱されてくれるかどーか。

 でも・・・

「やるしかないっ!!」

「にゃ!」

 アルバ達を助けるために!

 あたし達が、生き延びるために!!

「くぅりゃっ!」

 再度真ん中のヤツが、ブレードを突き出してくる。あたしはそれを左のブレードで受け流し、右を横薙ぎに振り切ろうとする。

 すると右のヤツがそれを受け、ああっ! やっぱし一人余るぅ~!!

「にゃっ!」

 素晴らしいタイミングで飛び出したプーリー、あたしの頭越しに左のヤツに飛びついて、フライング・ネック・ブリーカー(プロレス技。片手を伸ばして相手の首に引っ掛け、後頭部を打つように倒すのだ)みたいに絡み付く。

 しかし、悲しいかな超軽量。

 四十キロのプーリーじゃ、引き倒すことさえかなわない。ぐるんと身体が回って、単なるおんぶになってしまう。

「にゃ?」

 にゃ、じゃな~い!!

 左のヤツはプーリーなんかお構いなしに、あたしに向かってブレードを振り上げる!!

 飛び退くのが間に合うか、間に合わないかって覚悟を決めたその時。

「にゅわぅっ!」

 と、意味不明の声を上げ、プーリーがやってくれた。

「ぐぉぉ」

 うめきを上げる左のヤツ。

 プーリーがその眼に、クローを突っ込んだのだ。もはやへにょへにょとはいえ、スティール・クローである。その装甲は裂けないまでも、感受光器官のようにデリケートなとこなら十二分に通用する。

 なるほど、道理だ。

 ヤツのブレードは振り下ろされることなく、あたしが退くだけの時を稼がれた。

 しかし。

「いいコンビネーションだ」

 真ん中のヤツはそう言い放つと、信じられないマネをした。

 ヤツは右手を引き上げると、返す刃でプーリーを狙う。プーリーは左のヤツの頭を盾に隠れようとするが、その頭部ごと、一刀の元に斬り捨てたのだ。

「ふみぃゃぁぁぁ!!」

 緊張感はないが、紛れもなくそれは悲鳴だった。

 宙を舞うプーリー。

 その左腕が根元から、左脚が腿の辺りから離れていく。

 あたしは声を上げることもできず、その様を見ていた。

 床に落ち、バウンドするプーリー。

「・・・が、これで終いだな」

 ヤツは冷然と、ゾンビみたいな顔に笑みのようなものを浮かべて言い捨てた。

 それでも彼女は、残った右の手足で起き上がろうとする。

 サイボーグだから、これだけでプーリーが死ぬってことはないだろう。だけど、機動力を削がれたプーリーは、もはや文字通りの死に体だ。

「二対一か・・・」

 今すぐにでもプーリーに駆け寄りたい。このくそサイボーグに斬りかかり、スクラップにしてやりたい。

 でも、あたしはそれを懸命に抑える。

 プーリーが、身体を張って作ってくれた状況なんだ。感情的に動いて、台無しにするわけにいかない。

 冷静に。

 勝てば、プーリーだって助けられるんだ。

 けど!

「しぶといなぁ、子猫ちゃん」

 ヤツはロクに動けないプーリーに向かって、さらにブレードを振り上げたのだ。

「ざぁけんなぁ!」

 もう耐えられなかった。

 後先を考えず、身体が動いていた。見殺しなんて、できるもんかっ!

〈クライン・リッター〉の瞬発力をフルに使って突進し、次の瞬間には、ヤツの右腕を斬り落していた。

「かかっ! 引っ掛かったなぁっ!!」

 だがそれは、当り前のようにオトリだった。来ればヨシ、来なくとも、殺り残しを始末できる。

 ヤツは笑いながら、その左手をかざしていた。

 ブレードを、ヤツもまた、二本持っていたのだ。

 振り下ろされるブレード。

「くぅっ!!」

 つんのめりながら右手をつき、半身を捻って、かろうじて左のブレードで受け止める。

 しかし、完全にバランスを失ったところへ、三本目のブレードが襲いかかってきた。もう一体、フリーのヤツが回り込んでいたのだ。

 右腕はもう間に合わない。これでは飛び退くこともできない。

 でも、不思議とダメかとは思わなかった。

 恐怖より闘争心が上回っていたのだろうか。外で感じた屈辱を、二度と味わいたくなかったからだろうか。

 その動きを見ているあたしは、最期のチャンスを探していた。だからそれを逃さずに、掴まえることができた。

「エリー!」

 その掛け声が先だったのか、銃声が先だったのか。

 今まさに振り下ろさたブレードが、その使用者の右腕を直撃する銃弾により軌道を逸らし、〈クライン・リッター〉をかすめて床だけをえぐった。

「むっ!」

 ゾンビ顔の注意が逸れた。

 この一瞬、あたしは左腕に力を込めながら、プラズマ・ブレードの出力を上げた。微かな唸りとともに、すぐに抵抗感がなくなる。

 そしてあたしのブレードは、ヤツのブレードをすり抜けた。

 一瞬の同調と、直後の反発。

 交差したブレードは、物質的なものではありえない最短距離で、獲物に襲いかかった。

「な!?」

 やつはロクに驚くこともできないまま、脇から頭部までを斬り裂かれ、崩れ落ちた。

 空振りでバランスを崩した一体も、もはや相手じゃない。態勢を立て直す隙も与えず、上半身を起こす動きのまま、右手のブレードで頭をはね飛ばした。

「ふぃ~。ヤバかったぁ・・・」

 奇跡の逆転劇。

 その立役者は、階下から階段で上がってきていた。

「大丈夫か、二人とも」

 そう声をかけ、プーリーを抱き上げた彼は、なんと、

「アルバにゃ~♪」

 だった。

「ど、ど~してここにいんの?」

 プーリーは逃がすところまで行ってないはずだし、シティ・セキュリティの留置所が、簡単に抜け出せるところのハズもない。

「橋本翔一とかいうのが来て、出してくれたよ。お前達の協力者だと名乗って、監視室でここの映像まで見せてくれた」

「翔一さんが!?」

 なんで、そこまでヤバいマネを?

 アルバ達を助けだし、小百合を連れ出してからじゃなけりゃ、表立っては動けないはずなのに・・・

「シド達は?」

「翔一と屋上に向かってる。来いと言われれば、否も応もないからな。それより、見てみろ」

 アルバは屈み込んで、あたしの斬り倒したサイボーグを指差す。

「なに?」

「コイツはたぶん、小百合と同じヤツだぞ」

「え!?」

 言われて切り口を見てみると、そこは鉄の塊を切ったように、隙間なく金属で埋められている。

 厳密には、同種の金属の糸みたいのとか棒みたいなのが、びっしり詰まってるって感じ。どちらにしても、普通のサイボーグじゃないのは明らかだ。

「こ、これ、動いてたんだよ」

「ああ、俺も見た。信じられないが、これでも動く何かだってことだろうな」

 それは胴体や腕ばかりでなく、頭までも同じだった。

「桂川氏の言った通りだ」

「え? 桂川さんに会ったの?」

「ん? ああ。ここに来る途中、留置所で撃たれてた。出血が酷くてな、助けられなかったが」

「どういう・・・こと?」

「さてな。お前の新しいお友達なら、きっと何か知ってるんじゃないか?」

 面白くなさそうに、アルバは答えた。でも、桂川氏からなにを聞いたのか、むっつりしたまま教えてくれない。

 なんで教えてくれないのかはわからないけど、こういう時、アルバはいつだって、あたしよりも先を見て考えている。

 だからその時は、それ以上聞かなかった。

 おかげで色々と疑問が湧きあがり、あたしもなんとなく、不愉快な気分だ。

 ハシモトの兵隊達が降りてきた。

 反射的に身構えると、先頭のヤツには見覚えがあった。あたしとプーリーを『招待』しにきたヤツだ。

 そいつはあたしの前までくると、慇懃に敬礼をした。

「このビルは我々が制圧しました。部長が屋上でお待ちです」

 そして相変わらずチープな音声で、要点だけを告げる。

 こりゃ、確かに否応もない。

 あたしとアルバは互いに頷き、屋上へと上がった。



      エピローグ


 二一九五年五月三日 午前九時三〇分


 あれから屋上では、大団円という名のサル芝居が行なわれた。

 集合したあたし達と翔一氏の待ち受ける中、数刻の時を経て到着したのは、ハシモトB&Mインダストリー副社長にしてセキュリティ部門の責任者、そして翔一氏の叔父にも当たるという、『橋本京次』氏だった。

 翔一氏が例え話の中で、『B派の中心人物』としたのがこの人だ。

 翔一氏は、社内クーデター断罪の場として、その中心になっていたシティ・セキュリティ本部を選んだと言った。

 当初の予定を変更したのは、あたし達がかなりてこずり、機を逸するわけにはいかないと、翔一氏自らが動かなければならなくなったからだそうだ。

 時を置き、この事態の噂が周囲に広まることがあってはならないとの配慮もあった。

 なるほど。スジは通ってる。

 事件の概要は、翔一氏の例え話の仮名のところに、社長と副社長を当てはめればいい。

 権力欲に走った副社長が、社内にも秘密裏に強力な武装集団を組織し、武力を背景に組織転覆を計ったってことだ。

 その武装集団が、地下二階であたし達の前に立ちはだかり、プーリーをいぢめたアイツら、妙なサイボーグ達である。

 ヤツらは、これまでの概念を覆すような、最新の素材工学をベースに造り上げられていた。

 その素材は、仮にバイオメタルと呼ばれていて、特定の微電流に反応し、筋細胞のように伸収縮する変形構造を持っているという。大変な可能性を秘めた素材だけど、この合金は偶発的に精製されてしまったもので、当面、精製法は研究中のハズだった。

 だからこれに関しては、ハシモトとしても予測可能の範囲と言えるだろう。これの存在自体、すでにハシモトの権利製品として特許登録がなされており、秘密というわけでもない。

 真に重要なのは、ハシモト内において誰も知らない素材が使われている部分があったこと。それは頭部で、本来脳のあるべきところに納められている、一見ただの金属塊にしか見えないものだ。

 これにはMMMという仮称が与えられていて、バイオメタル精製研究の副産物だったらしい。単なる塊に見えるけど、分子結合の問題で、実際には細かい無数の隙間があるスポンジみたくなってるそうだ。

 これの最大の特徴は、データ・メモリー素子としての働きがあり、複雑な分子間結合によって相互に情報の伝達が可能だってこと。難しい理屈はよくわかんないが、かなり複雑なコンピューターみたいなマネができるものらしい。

 しかもキャパシティが大きく、そのフォーマットも自由自在。どれほど自由度が高いかというと、たとえば人間の脳の持つ情報を全て移し込むことが可能なほどなんだって。

 そう。

 こいつには、人間の脳の代わりができるのだ。

 メモリー・サイズやなんかのキャパシティの問題があって、なかなか難しいと言われている人格のコピー。それが比較的簡単に実現できる、驚異の新素材なのである。

 バイオメタルとMMMを組み合わせた、究極的とも言えるサイボーグ。生体部分を全く残さず、それなのに知識も思考パターンもコピーされ、その上追加学習もできる。

 なるほど、あのゾンビ野郎の言ってた『究極の人間』ってのも、ある程度は頷けないこともない。

 このノウハウを完成させたのが、故・桂川氏だった。

 桂川氏はこのノウハウを私的に利用し、脳腫瘍で余命幾許もなかった愛娘、小百合をサイボーグ化した。愛するがゆえ、どんなことをしてでも生かしたかったんだろう。

 言ってみれば、これがプロトタイプの一号ってことになるのかな。

 橋本京次氏は、偶然にもその事実を知った。いや、BM二研も京次氏の管轄下だそうだし、研究員の密告によるものらしいから、偶然とは言えないか。

 ともあれ、彼はそれを知った。そして桂川氏から詳しい話を聞くうちに、それを単なる『業績』として活用するのが惜しくなった。

 確かに『業績』でも、それが十分高まれば、地位の向上も狙えるだろう。だけど、それじゃ時間がかかり過ぎるし、確実性も乏しい。

 だから彼は・・・

 この後は、さっきも説明した通り。

 京次氏の誤算は、小百合が誘拐されたこと。それに対して桂川氏が独自に動き、結果的にあたし達が関ったこと。

 機密の漏洩を恐れて部隊を動かしたり、桂川氏を捕えたりして、前々から抱いていた翔一氏の疑惑を膨らませたこと。

 そして、本部セキュリティが存外に脆く、秘密部隊の存在を露呈しちゃうハメに陥ったこと。

 翔一氏はまず強行調査となってしまったことを形式的に詫びると、各種の状況・物的証拠を並べ上げた。それから京次氏に対してハシモト幹部としての合法的強権発動を宣言し、仮処分としての地位剥奪と拘束を指示した。

 あたし達はこの事件の被害者であり、翔一氏の協力者である。

 つまり、生き証人だった。

 そのため翌日、あたし達はハシモトの緊急査問委員会に呼ばれた。もっとも単に聞かれたことに答えるだけで、それもホトンドあたしの役目だったけど。

 結果として、京次氏は更迭された。企業法を適用すれば極刑でもおかしかないとこだけど、橋本ファミリーとしての寛大な処置ってとこなのかな。

 でも、あれだけの地位にあった人にとっては、むしろキビシイ処置なのかもしれない。飛ばされた先がなんだかよくわかんない部門なんで、翔一氏に聞いて見たらば、本社の取締役が関連会社の末端小売り店の店長にされたくらいの格差なんだそうだ。

 およそ復権は不可能だし、元が元だから他企業に拾われることもないだろうし、残りの生涯、生き恥だよね。

 まぁ、そんなこと、あたし達にゃカンケイないけど。

 ともあれ、大企業ハシモトの公式なお話には、とりあえずそれでオサラバとなった。

 だからだろう。その帰りの車の中で、アルバはようやく、桂川氏のいまわの際の言葉を、あたしに話してくれた。

 その時のあたしってば、一連の騒ぎやら大企業の人達に色々聞かれたりなんかして、すっごい疲れていた。ついでに『プレスト』の副作用で、かなりその日は『ぼぉ~』っとしてたし。

 んで、すっかり忘れていたのだ。

「なあ、忘れてるみたいだから言わない方がいいのかもしれないが、桂川氏のこと、知りたいか?」

 だからアルバにこう言われた時、しばらくぽけらっとしてしまった。でも、そう言われて聞かないでいられる性格なら、こんなお仕事やってない。あたしが『んっ』と頷くと、アルバは淡々と語り始めた。

「桂川氏が俺に言ったのは、あのサイボーグを造る技術は彼が作ったこと。そのデータは全て処分し、彼とともに消えていくこと。そして彼は翔一との約束を果たし、翔一にも約束を守ってほしいと望んでいることだ」

「翔一さんとの約束?」

「ああ。実はな、ヒューに頼んで、ハシモトの古い情報を集めてもらったんだ。そうしたら、小百合が死んだ頃、つまり彼女がサイボーグ化された頃だが、BM二研は翔一の管轄下にあったんだ」

「え!?」

「その直後に、理由はわからないが管轄が京次に移っている。で、桂川氏と翔一との繋がりが途切れたかっていうと、そうでもなかったようだ」

「どういうこと?」

「定期的に、桂川夫人の口座にかなり高額の振り込みがあるんだ。誰が振り込んでいるのかはわからないが、同じタイミングでほぼ同額の支出が、翔一の個人口座に見られる」

「そ、それってもしかして・・・」

「わからんよ。下衆の勘繰りみたいな真似は好きじゃないしな。だが、翔一はことの始まりからずっと、この件に関っていたのは間違いないだろう。そして桂川氏は、ヤツの駒として使われた」

 ウラのウラ。

 そんなものが、あったなんて・・・

「ねえ、翔一さんとの約束って?」

「桂川氏は、奥さんと娘の無事と幸福だけを祈っていたよ」

「そっか・・・そうだよね」

 確かに、それしかないだろうね。

「あとな、BM二研のプロテクトを破ったヒューが、こんなものも送ってくれてる」

 そしてアルバは、紙束を一つ手渡した。

 それは小百合と桂川氏の、日記のようなテキスト・データだった。


 それから二日後の今日。

 あたし達は『七福神』のバー・フロアに、久し振りにのんびりと集まった。

 昨日は完全フリー日にしてあったんで、一応今後を見据えてちょっとお話でもしようかって趣向の集まりである。

 到着したのはあたしが最後で、珍しく外出してきてるヒューや、巻き込んじゃってゴメンねぇ~のジョアンヌを含めて、こないだの件に関ったみんなが集まっていた。

 なんだか朝っぱらから盛り上がっちゃって、やけに賑やかだ。

 うん、みんな元気。

「おいエリー、昨日翔一のところに行ってたんだって?」

 アルバが面白そーに聞く。

「約束の報酬貰いにね」

 もっとも、貰いに行く約束はしてなかったんで、いきなりの訪問だったけど。翔一氏はあの後、シティ・セキュリティの責任者にもなってて、事務所はそっちに移っていた。

「セキュリティ本部のパス作れっていうんだもん。驚いちゃったよ、オレ」

 おどけた調子で、ヒュー。とか言って、時間限定(一定時間ごとにランダムにコードが変わるので、とりあえずの処置)とはいえ二時間で作ったくせに。

「付き合わされた俺は、もっとビビったけどな!」

 これはシド。こいつは確かにビビってた。

「あたしも行きたかったにゃ~」

 プーリーはすねたように言う。

「あなたは治療してたじゃない」

 そう、ジョアンヌのゆー通り。

 このコは手と足を直してて、この二日は彼女のところでお世話になってたんだから、仕方ないよね。

「で、なにしたのさ。シドは『エリーに殴られるから言わない』って教えてくれないんだ。そんな凄いことしたの?」

 好奇心で口をきくのはキッドだ。

「大したことはしてないわよ。ただ黙って行って驚かせて、あとは報酬の交渉して、頂いてきただけ」

「嘘つけぇっ! オマエ、いきなりなんちゃらブレードとかってんで、飾ってあった像を叩っ斬ったじゃねえかよ!」

 これは〈クライン・リッター〉のでなく、あのサイボーグが持ってたヤツだ。あたしのはギアを通してエネルギーを取るんだけど、これはバッテリーを直接繋ぐタイプだったんで、こうして持ち運べて便利なのだ。

「あれは交渉の一部よ、い・ち・ぶ」

「くぁぁあ、よっく言うぜ!」

 あたしとシドのやり取りに、みんな『すっげ~』とか『ハデねぇ~』とかって、やんややんやと盛り上がる。

 べつに脅しをかけてやろーとか、あたし達を利用しやがってぇーなんて、恨みがましいことも思わない。

 ただ、スジを通しに行っただけだ。

 翔一氏のやったこと、京次氏のやったこと。どちらが正しかろうと悪かろうと、あたし達には関係ない。

 でも、迷惑料は頂かないとね。

「その甲斐あって、報酬は、ほぉら! こんなにあんのよぉ♪ コイツ、山分けね!!」

 そこに小切手の額面を見せたらば、騒ぎはますます大きくなった。

 シドなんか、カウンターのゲンさんに向かって、

「今いるヤツら全部に、一杯ずつ出してやってくれェ! 俺のおごりだぁ」

 なんて、調子に乗っちゃってる。まあ、それほどの額だったんだけど。

 おかげで騒ぎはあたし達のテーブルだけじゃなく、バー・フロア全域に広がった。

 まったく、朝から・・・

 そんな中、アルバがそっと近づいてきて、あたしの耳元でささやいた。

「なあ、さっきの像って・・・」

「さて、ね?」

 あたしはちょっととぼけて、目を閉じる。

 彼女の、小百合の日記の最後の方に、こんなことが記されていた。


『・・・今の私は機械だからなのかな。

 自分で自分を止めることができて、どのくらい経ったらまた動くか、セットすることもできる。

 もし動く時間を決めないで止めたら、どうなるんだろう?

 死んじゃうのかな。

 もしそうなら、うれしいな。

 私のために、お父さん辛いみたいだから。

 もしこれ以上お父さんが辛くなるんなら、私は死んでしまいたい。

 もう外にも出られないし、お母さんも優しくないし、もしお父さんがいなくなっちゃったら、生きててもしかたないよ。

 それとも、機械だから無理なのかな。

 ううん、私は人間だよね。お父さんはそう言っていたもの。

 人間なら、きっと・・・』


「・・・そうか・・・」

 しばらく黙ってたアルバは、小さくつぶやいて、あたしに小さなカップを渡す。

 カウンターでゲンさんとぼそぼそ話し、持ってきたのはアルバのとっときだった。

「大吟醸じゃない!」

 いったいどっから手に入れてくるのか、常に自前で持ち込んで、一本はキープしてある天然モノの日本酒一升瓶だ。

「まぁまぁ、俺のおごりだよ。ツヤってのには、いい日本酒がつきものなんだろ?」

 まぁ! 日本通ぶって。

 でもまぁ、ここはアルバの気持ちを汲んでおきましょう。

「乾杯はするのか?」

「さあ?」

 答えてあたしは、差し出したアルバのカップに、カチンとカップを合わせた。

「どっちでもいいじゃない」

 要はハートの問題。

 でもさ、できれば一度くらいお話ししてみたかったよ、なんて思いながら、明るい喧騒の中、あたしは大吟醸を呑んだ。


古い作品です。20年以上前に同人誌で発表したものです。

思ったより長かったので、前後編に分けています。


お楽しみいただければ幸いです。

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