厄介な依頼と、武器探し
「困るよ……非常に困る」
「アーベルさん、すんません」
目の前で赤いスーツを着た男は、落胆していた。
現代でいう社長室のような場所で俺と、対面で話していた。
「あいつは、裏で「違法ポーション」を精製してたんだよね。だから流通元を知りたかったのに……」
殺しちゃったんだよねぇ……。
残ったのは男の肉片(ギリギリ顔を確認できる程度)だけだ。
「ほんとに、申し訳ないです」
「まぁ、やってしまったことは仕方がないからね……」
下請けの失態にも寛大だ。
さすが「アンセム」のリーダー。
この人のお陰で俺も店を出せていると言っても過言ではない。
だから上手く仕事をしたかったんだけどねぇ……。
「変わりに仕事を請けてくれないかい?」
「仕事ですか?」
「うん」
朗らかな笑みを浮かべるアーベル。
あ……昔仕事をしていたから分かる。この人のこの笑い方はろくなことにならない。
「えと……ちょっと用事が……」
「なんだい、受けてくれるのか?」
「いえ、あの」
「うん、うん。ありがとうね」
「だから……」
「本当に助かるよ!」
だめだ、回避できない。昔のゲームか、この人は。
ため息を一つ吐いて、覚悟を決める。この人の無茶振りは昨日今日のことじゃない。
「わかりました。……お受けいたします」
俺の右足がうずいた気がした。
「遅かったですね」
「ごめんねー」
にこにこと笑いかけ、両手を合わせる。
別に、と舞は目を逸らした。
あの戦いの後、すぐに報告に来たので服装は血で染まっている。
このままだと普段、仕事をしない国兵にすら声をかけられるだろう。
「ここは何なんですか」
初めて彼女から質問された。
そのことが何故か凄く嬉しくて、満面の笑みで答える。
「ここはね。「アンセム」ってギルドの酒場だよ」
建物は広く、この国の城と遜色ないほどでかい。
仲では同業者のような人間がこっちを睨んでいる。
「ギルド……?」
馴染みはないのだろう。
まぁ、そもそもギルドといえるような集まりでもない。
例えるなら……。
「日本でいったら組とかで、海外で言ったらギャングみたいなものだよ」
「組……ですか」
この例えはよくなかったかな。でも実際立ち位置としては変わらない。
彼女は、また遠い目をした気がした。
「この国はね。「アンセム」「シルク」「スターズ」のギルドが牛耳ってる」
「……」
こくりと小さく頷く。かわいい。
「だから、国よりも力があるしそこに従わないと生きていけない」
当然俺が初めてこの国に来た時、そんな事は教わらなかった。
色んな事をして、間違えて見つけたことだ。
不安にはさせないよう、いつもの笑顔を彼女に向ける。
「まぁ、俺と一緒に仕事すれば大丈夫」
今は目の前の少女を、正しい道に進めるのが俺の仕事だ。
「とりあえず、武器を探そうか」
「……武器?」
「うん」
そう言って、俺達は歩き出した。
一日一回更新できるように、頑張りたいです