戦闘
「あ? てめぇは、アーベルんとこの差し金か?」
「そんなところかなぁ」
路地裏の先には、開けたスペースがあった。
そこにはざっと数えて、十数名の男達が居た。手には瓶や銃の入った箱。
違法取引現場で間違いはなさそうだ。
殺しの目標とは、会話を愉しむ。
それが俺なりの礼儀。生きている人間であることを深く心に刻み、殺す。
「無事に済むと思ってんのかぁ? それとも、酒なんか握って自殺か?」
「酒は高いからねぇ。飲めないんだよねぇ」
へらへら笑い、瓶の蓋を開ける。
「そうかい、なら一生飲めねぇな! お前ら、この鼠を殺せ」
その声に従うように全員が銃を構え、同時に放った。
思った通り、血の気の多い連中だな。
手に握った、瓶を口に含んだ。
俺に向かって真っ直ぐ飛んできた銃弾は、止まっていた。
全てが見える。首をまわす必要もない。
「「MP体内最速循環」」
ステータスのMPが急激に消費されていく。
18000/25000
体が熱い、だが体は凄く軽かった。
銃弾の合間を縫って、男達の懐に近寄る。
そして愛銃のリボルバーを構える。
二発だ、二発でこいつらのボス以外を消し去れる。
有象無象の真ん中に立ち、まずは右を向けた。
この状態であれば、銃弾にも魔力を集中できる。
この世界に火薬はない。
銃弾の裏に刻印されている魔力印が、撃鉄に反応して玉が放たれる。
撃鉄は、持ち主の魔力に依存しており力が強ければ強いほど威力は増す。
16500/25000
ゲージが減っていく、200程に抑えるつもりだったが久しぶりの実戦で上手くいかない。
まぁ、いっか。
トリガーを引いた。
銃口から出てきたのは、砲弾と遜色ない威力の弾丸。
風圧と、反動が俺の体を押しつぶさんばかりに溢れる。
伸びるように加速していくそれは、男どもの姿を一瞬で包み。
遺伝子から全てを崩壊させていく。
「あー……やっぱ、やりすぎたかなぁ」
頬をぽりぽりと、かく。
残ったのは、綺麗な丸型に貫通した壁のみだった。
ギリギリ民家に行く前に消滅してくれて助かった。
塀がなくなった時点で怒られそうだけど……家主が帰るまでに逃げればいいか。
「な、なんだよ。おめぇ……化けもんかよ!」
「いやぁ、ただのおじさんだよ。この国で生きてきたただの一般人だ」