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これは、転生したばかりの頃の話



 何てことない帰り道だった。

 いつも通り帰って勉強して、寝る。

 趣味といえばインターネットで読める小説だけで、漫画やラノベなどは親に止められていた。

 あんなものは、勉強にふさわしくないだとか何とか。

 別にそれでも良かった。成績も悪くなかったしいい大学にいって、いい企業に行く。

 俺の家系はそうなってたし、そうなるんだろうなって、そう思っていた。

 それでよかった。受験日に、事故にあうまでは。

「なん……で」

 酔っ払いの暴走運転。俺に非は全くなかった。

 しいて言うのであれば、運が悪かったのだ。

 ふざけんなよ! まだ、何にもしてない! ただ、生きてきただけだ。ふざけんなふざけんなふざけんなふざけんな! バカ野朗バカ野朗バカ野朗!

 遊びも友達も全てを我慢して、こんな結末。

 苦しみが溢れるようだった。

 そして運ばれた病院で俺は、死んだ。

 死んだとき、肉体から魂は透けるんだって初めて知った。

 魂だけになって、俺の体を見つめたとき。

 怒りが、俺を支配した。

 その時だった。

 視界は失明しかねん程の光に包まれた。……いやまぁ、肉体は無いんだけどね?

「その心意気、私好きよ!」

「は?」

 何もない、真っ白な部屋と多分この世で一番だといっていいほど綺麗な女性が現れた。

 なぜか、微笑むような笑みを浮かべている。

「えと、誰ですか?」

「私? 私はね。超越しせしもの(キングエンペラー)よ!」

「えぇ……」

 俺は微妙な反応をした。いやダサいな、とも思ったけどこの空間にも困惑した。

「な、何よ、その表情! ムカつくわね!」

「……え、すみません」

 とりあえず、謝っておいた。

「いいけどさ……たく、せっかく転生させてあげようかと思ったのに」

 頬を膨らませた女神は、不服そうに呟く。

 俺はある一言に意識が向かった。

「転生? それって、な○うとかで有名な!」

 女神は俺が興味を持って来た事に驚いたのか、目を逸らす。

「そ、そうよ! そんな感じよ」

 おぉ……ついに、俺も夢見た異世界か……。

「てことは、特別なその、あるんですか?」

「……」

 彼女は微妙そうな表情で、何もない空を見た。

「当然よ! なんでも言いなさいよ!」

 目を合わして欲しかった。

 でも、俺は好奇心で胸が一杯になりそんな事は気がつかなかった。

「なら、魔法を……メチャメチャ魔力が欲しいです!」

「魔力?」

 なぜか、反応が悪い。

 まさか魔力が存在しない世界なのか?

「えっと、魔法とかないんですか?」

「あ、あぁMPね! あるヨー、必要ヨー!」

 胡散臭い中国人みたいにもなった。もはや怖いまである。

「あるならいいんです……魔法に興味があって」

「ソ、ソッカ。ヨカタヨカタ」

 反応に怖くなり一つ質問を投げかける。

「もしかして、そういうことできません?」

 その言葉に、いや? と真顔で答える女神。

 どうやら真実みたいだ。

「出来るわよ。あなたの魔力を通常の千倍くらいにしてあげるわ」

 わぁ、凄いチートだぁ……。

「で、他にあるかしら?」

 すぐに表情は、焦ったようになる。

 怖すぎる。なにか聞いてないような気が……。

「あの、もしかして俺がこれから行く場所ってファンタジーじゃないんじゃ……」

「ないようね! じゃ、じゃあね! バイバイ! アデュー! シーユー!」

 また光に包まれる。

 なんだその、国境が入り乱れた返事は。

 そんな言葉は届かず、光が俺の視界を覆う。

 目を開くとそこは、龍や魔法が飛び交う異世界……では無かった。

 地面には安そうなウイスキーの割れた瓶。路地裏には、娼婦のようなボロボロの女性と、いかにもやばそうな金髪の男。

 肩にはタトゥーのようなものが入っており、あまり見たくない。

「あん?」

 腰を振った猿は、ギュルンとこちらを睨む。

「ひ、ひぃ!」

 刃物を持った男から逃げるように走り去る俺。

 街の景色も確かめる。

 確かに、ここは異世界だ。

 狼のような尻尾をした男が店の前に立っていたり、謎の刻印をした武器が売られてたりする。

 でも、黒色のスーツ見たいのを着たマフィアのような人間がちらほらいて。

 どう考えてもなろ○のような優しそうな世界ではなかった。

 街は昔見た、ファンタジー世界みたいなのに。

「何見てんだ、ガキっ!」 

「ひぃ!」

 俺が来てしまったのは、アスタリスクという国で。

 誰も手を差し伸べてくれやしない最悪の街だった。

「なんなんだよ! この世界は!」


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