新しい転生者
引き金を引いた。
銃弾の裏に刻印された魔法印が撃鉄に反応し、けたたましい音をあげる。
顎の下に密着させた銃口は、鉛弾を勢いよく吐き出し頭を一直線に突破した。
これは、現役時代の双硬銃術だ。
「まだまだ、使えるもんだねぇ」
目の前にいる脳の機能が停止した体は、地に伏せる。
隣には女性の死体。
さっきあったばかりだが俺が守れなかった人。
「最悪だ」
ポツリポツリと雨が二つの死体と、俺に降りかかる。
時は一時間前に遡る。
寂れた店前で、俺は拳を振った。
相手は三人の若者。最後の一人をのして、俺は一息吐いた。
「お疲れさん。こっちの依頼は終わりだよ!」
「りょーかい!」
俺は奴らの血の付着した手を拭う。
スーツにはつけたくないから、奴らの服で拭う。
「やっぱ、おじさんには用心棒の仕事は辛いなぁ」
「何言ってんだい! だったら、女に買って貰ったらいいんじゃないかい?」
それはもっと嫌。
口には出さず、苦笑で返答。
「これ、報酬だよ!」
元気一杯のおばあちゃんが、頬リ投げたのは三カートンのタバコだった。
おとと、と受け取り俺の顔はほころぶ。
「最高だよ、おばちゃん」
「なーにが、最高だ。とっとと出てきな」
「相変わらず、人使いが荒い」
ぶー、と悪態をつきながら店を出る。もちろん笑顔で。
外は薄暗く、今にも雨が降り出しそうだった。
ありゃりゃ、もうちょい早めに出るべきだったかな。
そして、まとめて入れた紙袋の中からタバコの箱を一つ取り出し、開封。
一つ咥えて、火を灯す。体に毒が入ってきた。
これが、いい。
首を上に向けて、味を愉しむ。
「おっ」
煙の先を、薄めで見ていると空が光りだす。
それは、太陽やましてや雷でもなく。
魔方陣だった。
「おー。新人さんかな」
自然と口角が上がったことに気がついた。
そして最悪の不幸者を祝った。
「まーた、あの女神のせいかな」
ふと、昔のことを思い出す。
十年前、俺がこの世界に始めて来た日。俺が転生してしまった日。
そして、俺 黒崎 永治が堕ちた日だ。
全体的に短めで終わると思います。
気に入っていただけたら幸いです。