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「すいませんでしたぁあ!!!」


三人は、起きて俺の姿を確認すると、すかさず謝罪した。ほう、ジャパニーズ土下座とは......なかなか反省しているようではないか。


「あぁ、もういい。まずは俺達の物を返してくれ」


本当は、気絶している間に取り返すことも出来たのだが、コイツらの手で返してもらいたかった。別に俺はサディスティックなわけではなく、コイツらに返させることで、反省させたかったのだ。

三人は、急いで荷車から取り出し、腰を抜かしながらも俺へ差し出してくれた。


「おいロナ、リリア。いい加減起きろ」


二人の方へ近づき、羽で軽く顔をペシペシと叩いた。


「うーん......」


起きたか。よく寝たと言わんばかりの伸びをして見せた二人だったが、すぐにその状況を飲み込み、真剣な顔つきへと変化させる。


「よし、荷物は二人に渡してくれ。俺は見ての通り鳥なんでな」


三人は、ロナとリリアにさえも、ペコペコと頭を下げていた。俺の魔法が相当聞いたらしい。そんなに怯えられると、逆にこっちが悪いことをした気分になる。

それにしても、盗まれる直前まで気付かなかったのは何故だろう。


「なぁ、どうやって気配を消したんだ?」


恐らく答えてはくれないだろうと思うが、一応聞くだけ聞いてみた。


「えー、それはですね、隠蔽魔術インビジブルムーブメントですね。はい」

「隠蔽魔術は、数秒間だけまったく周りから見えなくなります。さらに気配も消え、音も消えるので、完璧です」

「でもその代わり、隠蔽中は物に触れただけで解けてしまうし、効果が終わってもクールタイムがあるから、すぐには使えないの」


三人はペラペラと話し出した。


「ふーん。そんな魔術があるのか......」


すると男の一人が、恐る恐る今度は俺に質問をする。


「あのー、本当にあなたは鳥なのでしょうか?」


え?そりゃあ鳥だけど。あぁ、ただの鳥は喋らないんだったな。


「そうだな、俺はただの鳥型モンスターだ。そんな俺が、お前らをわざわざ起きるまで待っていたのには理由がある」


俺は、王都への行き方を聞いた。だが、


「申し訳ありませんが、知らないです」

「何?ならお前らはどこから来たんだ?」


俺達は王都があると思わしき場所の方向に進んでいた。そしてコイツらは、俺達の進行方向と真逆から走って来て、盗んで行ったのだ。なら、俺達の目指す王都から来たと言ってもおかしくはないはずだ。


しかし、三人は俺の予想とは違い、


「この近くに、村があるんです。俺達はそこから来ました」


透視を使ってみて見たが、たしかに小さいが村がある。他の人間も割といるようだ。


「そうだったのか。ならちょうどいい、その村に案内してくれないか?」


村なら、さすがに王都の場所を知っている人が数人いてもおかしくないだろう。


「べ、別に構いませんが......」


なんだ?何か引っかかる言い方だな。でも、構わないと言うのなら、遠慮なくお邪魔させて貰うとしよう。


「それでは、ついてきてください」


俺達は、言われるままに付いて行った。





「ライル、この人達って誰?」


おいおいマジか。まぁそうりゃそうか、ずっと寝てたり、気絶していたもんな。訳が分からなくても無理もない。


「ちょっとした盗賊さ。だがもう解決した」

「えぇ、そうだったんですか!?すみません、私達寝ていたようで......」


ま、この二人にも、次からは気をつけるようにとだけ言っておいた。半分は俺のせいで寝ていたとは、言わないでおいた。

当たり前のように俺が荷車を引いている所から、俺の気持ちを察して欲しい。


「......」


しばらく沈黙の時間が流れる。何せ物を盗まれた相手に連れていかれるのだからな、自分から行くと言ったものの、警戒しないわけがない。


「そう言えばさ」


と、ロナが話を切り出した。


「ライルって、モンスターだよね?」

「何を言ってるんだ。そりゃあそうだろう」

「じゃあなんで私達を襲わないの?」


......言葉が詰まってしまった。


「たしかに不思議です。普通モンスターと言ったら、私達人間を食べようとする生き物のことですから」

「ま、まぁ色々あるんだよ。色々」

「ふーん......」


何を今更。そんなの俺も元は人間だったからに決まってるじゃないか。

だが、そのことは話さない。

これから話す時が来るのか、それは俺には分からないが、少なくとも今はその時では無いだろう。


「着きました」


おぉ......村って感じの村だ。それじゃ感想としては乏しいな。

なんというか、民族の人が住んでいるような家に、周りを木の柵で囲っている。


「少し待っていてください」


見るからにこの村の玄関だと思わしき、大きな扉の前で、俺達は待たされた。

盗賊の三人は扉の前に立つと、三回ノックをし、「帰ってきました」と大声で叫んだ。

すると扉は開き、中から村の長と思わしき人物とその取り巻きが現れた。


「ようこそ、我が村へ」


俺達三人は目を見合わせ、首を傾げる。


「ど、どうも」


なぜ、俺はモンスターなのに驚かれないのか。もしかして、モンスターへの理解がある村なのか?

俺達は、歓迎されるがままに、村へと入って行く。

なんだか、俺の鳥の感が騒いでいるな。

嫌な予感が外れれば良いのだけど。

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