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23話 マヤにラブレター!?

「ただいま」


 俺はだいじょう部の挨拶をして部室へ入る。


「ナギトくんおかえり」

「おかえりなさい」

「おかえり」

「もー遅いよ! ナギトのこと待ってたんだからさ!」


 皆がそれぞれに「おかえり」と言ってくれる。少し照れくさい。


「ん? 俺を待ってたって?」

「ふっふっふー。これなーんだ!」


 マヤが両手を胸元に上げる。その手には一通の封筒があった。


「手紙か?」

「ただの手紙じゃないのです! なんとラブレターなのです!」

「ラブレター?」


 よく見ると封筒にはハートマークのシールが貼られている。

 俺を待っていたってことは……。いや、それはないか。


「おー。ラブレターか」

「最初の反応がそれ!? ナギトを待ってたって言ったんだから『もしかして俺宛て?』みたいな反応ないの?」 


 心を読まれたようで少しどきっとする。


「だって、お前ラブレターって感じじゃないだろ。『当たって砕けろ!』って感じで直接告白するだろ」

「砕けろは余計だから! まあ確かに、私だったら直接告白すると思うけど」

「だろ? で、誰がもらったんだ? リサか? アカリか?」


 俺は二人のほうを見る。


「いえ、わたしじゃないですよ」

「私でもないわ」


 ということは。


「もしかしてヒカリか?」


 ヒカリのほうへ顔を向ける。


「ううん。僕でもないよ」


 ヒカリが首を横に振る。


「ってことはまさか……」


 俺はマヤを見る。


「まさかって何! 私が持っているんだから私宛てだってわかるでしょ!」

「ええ!?」

「その反応ひどくない?」

「そうですよ! マヤさんは人気あるんですよ! なぜか女の子のファンのほうが多いですけど」

「リサ、ありがたいけど、それフォローになってない気がする」


 そうか。マヤ宛てだったか。


「それで? 誰からなんだ?」

「それを今からみんなで確かめるの。封筒には差出人は書いてないし」

「え? ここで開けるのか? ラブレターって自分一人で見るものじゃないか?」

「それでも良いけど、こっちのほうが面白そうじゃない?」

「そうか……」


 俺は名前も顔も知らない差出人に同情する。


「えーと……」


 マヤが封を開け手紙を取り出す。


――――――――――――

 いつも活発で明るいあなたに惹かれていました。

 ある時、不良に臆することなく立ち向かって行ってましたね。その時の姿は俺の憧れになっています。

 勇ましいだけでなく、あなたは笑顔がとても可愛らしく魅力的です。


 橘真矢さん、俺と付き合ってください。


 ○月○日の放課後 ××教室で待っています。

――――――――――――


 うん。文章はまともっぽいな。


「結局、誰からのラブレターかわからなかったねー」

「でも、まっすぐって感じでしたね」

「ぼくまでどきどきしちゃった」

「ナギトはどう思う―?」

「どうって言われても……。これはお前とそいつの問題だろ。お前が決めればいい」


 マヤの顔をまっすぐ見られない。意外にも戸惑っているようだ。


「いいの? 私がその人と付き合っちゃうかもよ?」

「好きにすればいいだろ。俺には関係ない」

「ふーん。『俺には関係ない』ねえ。その割には目が泳いでる気がするけど?」

「気のせいだ」

「まあいいや。そういうことにしといてあげる」


 マヤが微笑んだような気がした。

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