16話 ハイヒール
「ただいまー」
マヤちゃんが少し足を引きずっている。
「足でもひねったのか」
さすがナギトくん鋭い。
「新しい靴だからちょっと靴擦れしちゃってね」
「大丈夫ですか? 絆創膏使いますか?」
「ありがとう。リサ」
「靴擦れって地味に痛いよね」
「ほんとにね。ハイヒールなんか履いたら大変なことになりそう」
「ハイヒールってつま先立ちみたいな状態だろ? なんであんなもの履くんだ?」
「さあ? なんでだろうね」
マヤちゃんが絆創膏を貼りながら答える。血がにじんでいて痛そうだ。
「ハイヒールはもともと中世ヨーロッパに考案されたもの。そのころは下水道が発達していなかったらしくて、道や河川に糞尿をそのまま捨てていたみたい。そこで登場するのがハイヒール。糞尿をよけるために、意識せずにつま先立ちを出来るようなデザインになっているの。まさにナギトの言ったとおりね。ちなみに主に男性が履いていたそうよ」
「そんな由来があるなんて意外ですね」
「それに男が履いていたってのも衝撃だね。ヒカリちゃんならともかくナギトが履いてたら地獄絵図だね」
「地獄絵図は余計だ」
「ねえ、ナギトくん、ぼくの部分も余計だよね……? それにしてもハイヒールの起源なんてよく知ってたね、アカリちゃん」
「少しでも背を高く見せたくて、ハイヒールについて調べていたことがあるの」
「そうなんだね。でも、アカリちゃんはそのままでいいと思うけどな。アカリちゃんと目線が合わなくなると嫌だし」
「ヒカリちゃん、自分が恥ずかしいこと言ってる自覚ある?」
「え? 何? どの辺が?」
「時々こういうことあるよね、ヒカリちゃんって」
「可愛いですよねー」
マヤちゃんは額に手を当て、リサちゃんは微笑んでいる。アカリちゃんは顔が少し赤くなっている。
何が何だかさっぱりわからない。
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