現実は納得してればそれでいい
「おっ、おつかれ。」
「お疲れ様です。って、時間まだっすよね?何ではじめてんすか?」
「「「「ノリ。」」」」
「あ、うん。先輩達に言った俺が悪かったっす。」
ここは、王宮から少しは慣れた庶民街にある一件の酒場。まぁ、ボロいが酒は安いし、料理もうまい。いつもの仲間で飲むときは必ずここで、昼間であろうが店を開けてもらう。実際今も昼間だが、亭主は快く?開けてくれた。うん、後ろで奥さんにどやされてるのなんて聞こえない。
「てか、仕事遅かったなぁ?」
「ほら、今来てるでしょ?お姫様。で、上役が誰が警備につくか揉めてて、で、皺寄せが末端までくるんすよ。」
「あー、なんだっけ?隣国の天使姫だっけ?」
「天使はうちの娘だ!!!」
「「「「酔っぱらいは黙ってろ!」」」」
「…そうっす。で、俺の管轄までなんか急がしいんすよ。」
「あれ?お前庶民街手前の警備だろ?関係なくね?」
「よくわかんないっすけど、そうなんすよ!!」
「「「「そこわかんなきゃ、出世はないな。」」」」
「万年、庶民街警備から離れない先輩達に言われたくないっす! 」
「「「「基本定時、有給あり、異動なし。最高だろ。」」」」
「でも確かに、嫁さんぐだぐだ言ってたな。」
「あー、洗濯物の汚れが酷いってな。」
「なんでも、姫様に嫉妬した貴族の娘が、王宮勤めに当たるから、ワインやら茶やらの渋ついた服がおおいんだろ?」
「あー、うちもぼやいてたっす。特別手当てないのにやってられっかって。」
「「「「「どこも同じだな。」」」」」
仕事の愚痴と、家族の話題で盛り上がる。同じ管轄で、妻たちも同じ職場となると、話が合うから酒の肴にも困らない。
「…やっべ。そろそろ戻らないと。」
「んー?まだいけるだろ?子供か?」
「子供は妻がつれてったからいんだけど、今日俺飯当番だわ。」
「じゃぁ、ボチボチやめとくか、そろそろ女子会?も終わるだろ。」
「今回は何でしたっけ?」
「「「「よねばぁの恋愛相談。」」」」
「やっぱお姫様ではないんすね…」
「よねばぁのほうがたのしってさ。」
「ちょっと!!」
「ん?あー、亭主、今上がるから。」
「それより、よねばぁって!!」
「あー、王宮の洗濯物係のよねさんだよ。」
「今どこに!?」
「うちにいるっすよ?皆でお茶飲むっていってましたか…」
ばたんっ!!と大きな音とともに、店の亭主がでていった。
「「「「「??」」」」」
理由もわからず、全員で固まってしまった。
「あー、すみませんね。よねばぁって、うちの旦那の母さんなんですよ。恋多き女でしばらくあってないんじゃないのかな。」
「「「「「まじっすか。」」」」」
「さぁ、帰るならお勘定ね!」
亭主の奥さんが俺らのけつを蹴る。でもしっかり金はむしりとられて、酒場から追い出された。
「じゃぁ、またなぁ。」
それぞれ、うちに戻る。仕事や妻の愚痴は酒と共に吐き出して、また日常に戻る。
誰がお姫様をすきになろうが、誰とお姫様が結ばれようが、どうでもいいが、今ある現実を、納得して過ごしてる現実を壊されるのは困る。
「やべ、レタス買ってねぇ。サラダどーすっかなぁ。」
そう、この後、サラダを出さなかったことで、妻にボロボロにされたとしても、この現実に納得してるのだから。