第2話 秘密
第2話 秘密
夜宮咲と知り合ってから2年が経ち、僕と咲は結婚した。
仕事場が近かったこともあり、帰りにご飯を食べたり、杉野を含めた3人で飲むこともあり、次第に咲と仲良くなっていった。
交際期間は1年間。給料3カ月分で購入した結婚指輪とともにプロポーズをし、結婚することができた。
今では2人で過ごせるアパートを借りて暮らしている。
今は共働きだが、いずれは彼女を専業主婦にしてあげたいと思っている。
咲は働くことが好きだと言っていたが、いくら家事を分担してるとはいえ、仕事と家事の両立は厳しいことだろう。
「ふーん、そうなんだ。青坂は咲を専業主婦にしたいんだ」
杉野はストローを咥え、アイスコーヒーを飲む。
杉野は僕と咲にとって良き友人であり良き相談相手で、日々の悩みをこうして休日に話すことがしばしばある。
休日の昼に杉野と2人でいることはまずいと思うかもしれないが、咲は杉野となら、と許してくれている。それほどまでに杉野は咲に信頼されている。
それに僕は浮気などしない。それに杉野にも他意はない。こんな僕でも咲をしっかり愛しているし、彼女以外に興味を示すことはないのだ。
「そうなんだよ。どう思う?」
「うーん、でも分担してやってるんでしょ? なら、2人とも1人暮らししてたわけだし、なんら変わりないんじゃないの?」
「まあ、それもそうなんだけどさ。でも、自分の分だけをやるわけじゃないでしょ? 労力もその分倍になるんだし、やっぱり大変になる」
「それ、青坂が楽したいだけじゃないの? 咲に面倒な家事押し付けて、自分は仕事だけに専念したいっていう」
言われて気付く。確かにそうだ。僕自身が負担に感じているだけで、彼女自身はそうではないということに。
「そう……かもしれないね。僕は自分のことしか考えてなかったのか」
「悩むのもいいことだよ。2人は夫婦なんだからさ。話あるんなら他に聞くよ? なんならさ、飲みにでも行こうよ! 咲、今日帰り遅いんでしょ?」
杉野はそう言うと、勢いよくアイスコーヒーを飲み干した。
「え? 確かに帰りは遅いけど、さすがにまずいよ、2人で飲みに行くのは」
彼女はむっとしたような表情をし、言う。
「何でよ~。いいじゃん! たまには、さ」
「いや、でも……」
すると、彼女は何かを閃いたかのように、手の平を合わせ、
「わかった。 じゃあ、今から咲に電話してみるね! 今は休憩時間だろうし。それならいいでしょ?」
と、言った。
「まあ、それなら」
僕はしぶしぶに了承した。
杉野はテーブルに伏せていたスマホを手に取り、電話を掛ける。
「あ、もしもし咲? 今大丈夫? あ、そ。よかった。あのさ、今日青坂と飲みに行っても大丈夫? うん。そう、あの居酒屋。本当? ありがとう。はい、じゃあね、はーい」
電話が終わり、僕と目が合う。
「オッケーだってさ」
「そ、そうですか……」
流されるままに杉野と2年前に飲んだ居酒屋に到着した。
適当に注文し、久しぶりのお酒を喉に流し込む。
「ぷは~」
「おお! いい飲みっぷりだね」
僕はもともとお酒を飲まない方だ。飲む機会もあまりないが、久々に飲むお酒はとても美味しい。
気分が高揚してるせいか、お酒を飲むペースが速くなる。
「僕はやっぱり駄目な人間だ!」
「いきなりどうしたのさ?」
「いや、ずっと秘密にしていたことがあるんだ。まだ、咲にも言ったことがない」
「咲にも?」
「そう。出会ってからずっと言えずにいることがあるんだよ」
「わたしでよかったら聞くけど?」
咲から強い信頼を受け、咲の次に信頼している彼女にだからこそ話してしまいたくなった。
それから僕は杉野にすべてを話した。
上司を殺した真相を。