プロローグ
今年4月、政府はとんでもない制度を発表した。
その制度の内容は一言で言うと殺人の容認だ。
人間の人口は増加し、少子化問題は風化していった。人口は増えたことで若者が増えていき、社会に明るい未来が見えてくるだろうと判断した政府は40代以上の人間を一人殺してもいいという耳を疑う制度を作ったのだ。
もちろん、そんな制度は認められていいはずがなく、物議を醸した。けれど、結果は可決という形になった。
僕ははじめ理解できなかった。なぜこのような制度が可決されてしまうのだろうかと。
政府の考えは、若者がのびのび働くうえで古い考えを持つものの存在はネックになる。ストレスを与え、退職率の増加、精神的ストレスによってうつ病になってしまう者たち。過労による自殺者の増加。そのような問題が未来ある若者の将来性を殺している、と判断し、未来ある青年のために一人なら殺人を犯していいという制度を設けた。
これは正当防衛である。若者が命を絶つのを防ぐために詮無いことらしい。
この制度が始まってから3か月が経つ。
僕の年齢は25歳。社会人歴3年を迎えたころ──つまり制度が導入されてから直ぐに制度を利用し、僕は人を殺した。