表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

いらっしゃいませ

今生きていることに、疲れ、絶望し、悲しくなる。

そして人は考える「元に戻りたい…」



誰でも生きているなかで、1度は思った事があるだろう。

そう強く願ったときだけ、たどり着ける一軒の店があるらしいと噂がたったのはつい最近のことだ。

なんでも高校生位の少年が店主を勤め、1度だけ人生をリセットさせてくれる。


_______


どうして、私だけがこんな思いをしなくてはならないのか。

イライラのぶつけ先に困りヒールの音を高く響かせながら大股で歩く。帰宅途中にあるキラキラと輝くショーウィンドウには目もくれず、ただただ家を目指して歩く。

頭の中で再生されるのはこのイライラの原因をつくった自分の上司の声と顔。

他会社との大切な会議で配る書類に相手の会社名を間違えるという重大なミスがあった。

上司が作った書類なのに、勝手に私が作ったことにされ、会社に泥を塗ったと濡れ衣を被せられ、散々人前で怒鳴ったあげく、クビにさせられた。庇ってくれる人など居ない。皆自分の事が一番なのか、下を向きじっとするばかり。


上司が書類を作っていた時間まで戻りたい。


シングルマザーとして小学生の子供がいるのだ、これからどうしろというのだろうか。

不安、イライラなど様々な感情が混ざり涙が溢れる。

子供にこんな顔は見せられないと、バックからハンカチを出して涙を拭き取った所で足が止まった。

考え事をして、前を見ずに歩いたからだろうか気付いたら知らない路地裏を歩いていたようだ。

慣れ親しんだ土地の筈だが見覚えのない道。キョロキョロと辺りを見渡し人を探す。


暗闇で良く見えないが少年がこちらに歩いてくるのが見えた。


「あの、、、」


「ん?あぁ、いらっしゃい」


「いらっしゃい?私は道を聞きたいのですが」


「だって、貴女。元に戻りたいのでしょう」


確かに元に戻りたい、とは思っている。


「こっちでお話し聞きますよ」


普通ならいくら少年とはいえ、こんな怪しい人に付いていくなんてしない。

それでももし、元に戻れるならと望みにすがるため少年についていく。

少し歩いていると、寂れた裏路地には似合わない洋風な立派なお店が見えた。看板には筆記体で「リセット」と書かれている。


少年は少し大袈裟に両手を広げ、


「さあ、お客さんつきましたよ。ようこそ、人生のやり直しをお手伝いする店リセットへ。僕は店主の烏兎(うと)と申します」


と言いながら綺麗にお辞儀をした。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ