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カミあわないフタり  作者: 木下秋
over flow
8/30

operation “over flow” (6)

 マンションを出ると、早稲田は待ち構えていたように姿を見せた。真っ直ぐに俺を見据え、何も言わずに。


 午前二時。夜風は冷たく、俺もしばらく黙った。単純に、疲れ果てていた。



「とりあえず、トイレに行きたい」



 公園のトイレで用を足し、外で手を洗っていると早稲田はハンカチを差し出した。素直に受け取って手を拭き、返すと、次に差し出したのは暖かいコーヒーだった。



「申し訳なかった」



 早稲田は言った。「お前は悪くねぇよ」。俺は素直な気持ちで言った。確かにヤツの計画によって俺は六時間(・・・)湯川邸に閉じ込められることになったが、ヤツの誘いに乗った結果だし、携帯電話は取り戻すことができた。



「結果オーライさ」



 コーヒーは苦く、俺は顔を歪めた。本当はコーヒーがあまり好きじゃない。



「ところで湯川の引き出しの中にな……」



 早稲田は俺を見た。どうやらヤツには自信過剰な所があるみたいだが、今回ばかりは責任を感じてるところがあるらしい。そんな顔をしている。



「俺の携帯電話の下にはエロ本やらエロDVDやらがそりゃもう沢山隠してあった。ヤツめ、学校ではあんな顔してムッツリスケベでいやがる」



 早稲田はポカンと口を開けていた。



「しかも熟女ものばっかだ」



 ようやく早稲田は呆れたように笑った。息を漏らして、クックと喉を鳴らした。



「女子高生ものじゃ無かっただけ良かったろ」



 プッ、と俺が吹き出すと、早稲田も笑っていた。ヤツの笑った顔を見るのは初めてで、俺も久しぶりに笑った気がした。


 午前二時半を回ろうとしていた。とにかく今日は帰って眠る。月曜には本当の戦いが待っていた。

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