operation “box” (3)
大家はご丁寧に荷物を明け渡し、湯川の部屋のドアを開け、死因まで教えて家に引っ込んだ。うまい具合にことが進んだが、罪悪感を抱かずにはいられない。
玄関に足を踏み入れ、靴を脱ぐ。二度目の湯川宅侵入を果たした。
「田中君。名演技だったな」
「まぁね」
すっかりいつもの冷血モードに移行した早稲田はこちらを見ずに軽く返すと、まず部屋の全体を把握するようにキョロキョロ辺りを見回す。俺もそれに倣って、辺りを見た。
印象としては、この前のマンションのそれと変わらない。生活感をあまり感じさせない、面白みの無い部屋だ。部屋割りとしては……1LDK、ってヤツだ。リビングが一つに、ダイニングキッチン。後は、風呂トイレ。ホテルとかでよく見る……ユニットバスってヤツだな。
「部屋のものには触らないように。手袋は持っているね?」
早稲田はいつの間に白い手袋をはめ、室内の物を慎重に手に取り、元あったように戻していた。……ヤツは一流の犯罪者になれるな。
「何かあったか?」
「いや。……部屋が綺麗だ」
「確かに。まぁ、湯川らしいだろ」
「そういうことじゃない。……鑑識が入ったのか?」
警察。……まぁ人が一人死んでいたわけだから、そのくらいするんじゃないか?
「薬の過剰摂取」
顎に手を添えて、思案する風な早稲田はポツリと言った。
「睡眠薬の錠剤をガブ飲みして自殺、みたいな事か?」
早稲田は床に手を突き、テレビラックの下の隙間を覗いていた。携帯電話のライトを点けて、念入りにチェックしている。
やっぱり自殺だったか……と俺は思う。なんせそうであると、全ての辻褄が合う。そうなってしまうとやっぱり、俺達のせいである可能性は拭えない。湯川自身がもうこの世にいないのだから確かめようが無いが、もしかしたら今後一生、俺達はこの気持ち悪さを抱いたまま生きていくことになるのかもしれない。……まぁ早稲田はどうか知らんが。
俺は何の気無しに押入れを開けた。上半分には敷布団が畳まれていて、下半分には引き出し付きの収納ボックスが入っていて、半透明の向こうに服が詰まっているのが見える。
その収納ボックスの上。押入れ内の上下を分ける板とのその隙間に、薄いダンボール箱が押し込められているのが目に入る。そういえばまだ早稲田から携帯を返してもらっていない。そう思いながら、俺はそれを手に取った。




