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天才少女と天才作家

ある女の子の誕生日プレゼントに書いた物です。

良かったと言ってくれて、嬉しかったです。

許可とれたので、載せておきます。

僕はとある女の子と出会った。

天才と呼ばれた少女。

時折する行動が意味不明なため、異常とも言われた少女。


しかし、綺麗だ綺麗だと聞いてはいたが、本当に見ると確かに綺麗だと思う。

キラキラと光に反射する髪は幻想的で、青色の瞳には吸い込まれそうになる。

僕をその瞳に写すと、少し首を傾げるがその姿にドキリとする。

形のいい眉、プルプルでピンク色の唇、柔らかそうな頬。

首から鎖骨へのライン。

手の平サイズの胸、スッと下がると、スカートと靴下の間の真っ白い肌。

制服なので、体のラインまではわからないが、それだけでも美しいのがわかる。


「何か、ようですか?」


女の子の口から響く声音は凛としているのに弱々しい、聞き惚れてしまいそうな涼しい音を奏でる。

怖がっているのだろうか?

声が少し震えている。


「あぁ…、いや。済まない。あまりにも美しいから固まってしまったんだ。不躾な視線を投げかけてしまい、申し訳ない。」


椅子に座っているために上目遣いで僕を見る姿は僕の心を揺さぶる。

この声が毎日聞けたら、どれほど幸せだろう?

この姿を毎日視界に留めるコトが出来るならば、どれほど幸せだろう?


「そうですか。あまり、イヤラシイ感じはしなかったので、構いません。しかし、何しに来たのですか?」


この教室に来た訳を聞いているのか。

なんと言ったものだろう。


「この学校は何だか幻想的だと思わないかい?夕方に見るコトのできる、夕暮れに染まる校舎や教室。屋上から見える景色もいいが、教室から見える姿もいい。教室から見えるグラウンドには日々努力の汗を流す少年少女。努力とは美しい物だ。その奥に見える森が紅葉でもないのに赤く染まる。しかし、簡単に染まってやらないと緑を残しているのがまた美しい。その奥には段々と下っていく太陽がある。いつもは明る過ぎて、見つめるコトすら許さない太陽が、この時間だけはその美しい姿を見るコトを許す。幻想的な癖に現実的で、自分が景色の一部になってしまう。この時を人々はいくども切り取ろうとしたが、誰一人として、本当に切り取れた人はいない。」


僕の長々とした説明をこの少女は聞いているのだろうか。

聞いていてくれたら嬉しい。


「私も景色の一部に慣れているかしら?私は人とは違うようだから。」


物憂げに外を見つめる。

少女は僕の言葉を聞いていてくれたようだ。


「この景色に主役はいないんだ。あえてあげるなら、この景色の主役は自分自身だ。」


主役など、いないのかもしれない。

いや、この景色に主役などいらないのだ。

しかし、この景色を見るコトができる僕は主役と呼べる程に幸せな人なのだと思う。


「そう、貴方にとっては、私は景色の一部?太陽が照らす世界の一部なの?」


夕暮れに照らされてなお、銀髪は銀色に輝く。

その姿は女神と評す人間がいてもおかしくない。


「そうだね。でも、君がいるこの景色は嫌いじゃないよ。叶うなら、何度でも見たいが、この景色は有限だ。だから、僕は次の美しい景色を探す。」


少しずつ教室は暗く染まっていく。

夕暮れという時間は終わりを迎える。


「終わり、か。僕は帰ることにするよ。今日はいい物が見れた。何だか筆が進む気がする。」


僕はとある有名作家だ。

ペンネームを聞けば、誰もが知っている。

いくつかの言語に翻訳もされていて、世界的にも有名だ。

そして、この少女もとある発表をしたコトで有名になった。

リーマン予想という数学の難問を解き、太陽光発電の効率を160%上昇させた。

他にも有名なコトをしているが、特に有名なのはこの二つだ。


「待って。貴方は一体、何なの?私と会話しようとする人を初めて見た。」


僕を見つめる瞳は、凛とした輝きを放つ。

時が止まったのかと思う程に彼女は目を逸らすコトなく、僕を見つめ続ける。


「君というのは、とても、物語に出てきそうだと思わない?美しい少女で頭もいい。運動も出来ると聞いた。まるで、世界に愛され、世界に拒絶されたみたいな少女。そしてある時、一人の男と出会い、恋に落ちる。少女は少しずつ変わっていく。その変化は男を悩ませる自分は彼女と釣り合っているのだろうか?そして二人は共に歩むために助け合い、成長していく。そんな物語のヒロインみたいだ。」


色んな人の物語がある。

その中で最も劇的な物語を歩むこの少女は、どのような思いを抱えているのだろう?

僕には想像しかできない。


「なら、その物語のヒーローは貴方?私のもとに現れるヒーロー。私を守り、私を成長させる鍵となる人物。」


この少女のヒーローは、確かに誰なのだろうか。

いつ、出会うのだろうか。

しかし、


「多分、僕ではないよ。僕はクリエイターなんだ。物語を生きる人間ではなく、物語を描く人間だ。だから僕は君のヒーローにはなれない。なりたくてもね。」


なれたら、どれだけ楽しいだろう。

どれだけ、幸せだろう。

幼い頃に読んだ小説は小説家の話しだった。

小説家は夢を描いた。

その小説にはある思いを込めていた。

初恋の思い。

それを恋い焦がれられていた少女だけは気付く。

しかし、彼のもとに辿り着いた時には彼は命を落としていた。

ゆえに僕にはハッピーエンドはない。

それでも構わないと、僕は小説を描いてきたのだ。


「そう。なら、どこに私の王子様はいるのかしら。貴方はわかる?私には恋心も何もわからないわ。」


すっかり暗くなった教室に僕らは佇む。

山の向こうにキラキラと輝く光は街の光だろうか?


「僕にはわからない。僕は君の物語のクリエイターではないから。君の物語のクリエイターは君だろう?ならば、王子様を決めるのは君だ。僕は僕の物語をクリエイトできない。いや、してはいるが、僕は物語をクリエイトするという、僕の物語をクリエイトしているんだ。」


君が望むなら、僕は君のヒーローになってもいいかもしれない。

でも、クリエイターとしての役割は捨てるコトはできない。

ゆえに、僕は君のヒーローとして相応しくない。

ヒーローは全てを捨ててでもヒロインを守る、そんな物語が君の物語のはずだから。


「王子様、ね。私は恋心がわからないわ。だって、私の興味は今、貴方に向いてしまっているもの。」


君の瞳が僕を映す。

青色な瞳があまりにも真っ直ぐに僕を見つめるモノだから、僕の心臓がドキドキと高鳴る。


「そうか。でも、僕は君のヒーローには相応しくないよ。だから、僕は失礼するよ。いつか、君が幸せになるコトを願うよ。」


そんな出会いの後、僕は何度も彼女を探してしまった。

夕焼けの校舎の中に、何度もあの銀髪を探してしまったのだ。

もしかすると僕は。


「初恋を、体験することになるとはね。最近の小説の方が人気がいいし。僕が彼女を変えるのではなく、僕が帰られてしまったんだね。」


僕はとあるマンションの一室、自宅兼仕事場で小説を書いている。

最近書いたヒロインは、気を抜くと彼女に似てしまうので、気をつけなければならない。


ふと、家のチャイムの音が鳴った。

インターホンを見れば、銀髪の人物が映っていた。

まさかと思う。

顔までは見えない。


「はい?」


僕はインターホンに、そう問いかける。


『久し振りね。貴方を探すのは苦労したわ。有名な小説家がこんなところに住んでいるとは思わないものね。』


僕が小説家で、ここが自宅であるコトがバレた?

そんな、まさか。


「どういう意味でしょう?僕には何のコトかわかりませんが。」


銀髪の人物がゆっくりと顔を上げる。

映っていたのは、彼女だった。

ドキリと心臓がはねる。


『私、貴方に伝えたいコトがあるの。直接、貴方に伝えたい言葉があるの。今まで、人なんてどうでもいいって思ってた。でもね、違うの。』


僕はその言葉を聞いた瞬間に駆け出していた。

その後も何かを言っていた気がしたが、もう聞こえない。


ガチャリと鍵を開けて、ドアを勢い良く開ける。


驚いた表情でパチクリと瞬きする度に見える青眼、その瞳が僕を捉えた瞬間に。


ハラリと花が咲いた気がした。


「ねぇ、私は貴方が好きになってしまったみたい。貴方は私に相応しくないと言ったわね?むしろ、私が貴方に相応しくないわ。貴方程の男性には私よりも綺麗な…」


僕はそれ以上の言葉を聞いていられなかった。

この子よりも綺麗な子がいるだろうか?


僕は一歩踏み出す。

少し驚いたように、僕を見上げる。


「ど、どうしたの?」


僕はそっと、口付けをする。

優しく、触れ合うだけのキス。


「もし、君が望むなら。僕は君のヒーローになりたい。君が許してくれるなら、僕を君の物語のヒーローにしてくれ。」


彼女の顔が僕に近付く。

優しい、ついばむようなキス。


「私のコトを幸せにして。貴方だけなの。私を見てくれたのは。貴方の隣にいさせて?いつまでも、一緒にいて?」


僕はただのクリエイターではいられないようだ。

僕には守らなきゃいけないものができてしまった。


「君を、僕のものにしてしまってもいいだろうか?」


この美し過ぎる少女に、僕は触れてしまった。

僕の心はこの子に奪われてしまった。


「私を貴方のモノにして。」


綺麗な青い瞳で僕を見つめる。

瞳の奥に優しい光が見えた気がした。


そっと耳元で呟いてから、唇を合わせる。

今度は深く、深く。


「ねぇ、私もあなたを。」


僕と彼女の口付けの中に言葉が溶ける。

優しく、響いた気がした。


『愛している。』

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