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荒廃のアスタリスク  作者: ガルムン
【第一部】入校編
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模擬戦闘開始

 ようやく始まった講義は、クラスの顔合わせから始まった。

 生徒が集められた教室は一般的な広さであったが、授業を受ける生徒の数が圧倒的に少ない。せいぜい、20人と言ったところだろう。さながら廃校直前の学校といったところだ。

顎ひげを蓄えた白人の男が教壇に上がる。威圧感のある男だ。頬にある大きな傷が凄みを放っている。

「私が諸君らを受け持つ如月軍曹だ。なにか質問があれば、講義後いつでも聞きに来るように」

 如月と名乗ったこの講師は、黒板に自分の名前を書いただけで自己紹介を終えた。

気まずい沈黙が教室内に広がる。

「センセー、質問があります」

 沈黙を破って、江田が勢いよく手を挙げた。

「なんだ、そこの坊主」

 いきなり坊主呼ばわりされ、江田の顔が僅かに引きつった。しかし、相手は教官である。そのまま流して質問を続ける。

「自己紹介とかはしないんですか?初対面の人ばかりで、キンチョーするんですが」

 江田が、わざとらしくうわずった声をあげる。

嘘つけ、と太陽は心のなかで呟いた。

だが、他の生徒の大半も同じことを思っていたらしい。自然と視線がへと集まる。

「これからその時間を設ける。ただし……」

 如月は言葉の最後に妙な含みをもたせた。

「まずは模擬戦だ。戦いの中で友情は生まれるからな」

 如月がニヤリと口元を歪めるのを、太陽は見逃さなかった。


学内に儲けられた演習場。都市部での戦闘を意識して作られたこの演習場で、クラスによる模擬戦は行われていた。

「次、リネット、マクレガーの二名」

 試合形式で行われている模擬戦は、テンポよく進んでいった。ナノマシンを使えるとはいえ、所詮は未だ少年少女である。使える力は五十歩百歩、お互い決着がつく試合はなかなか無く、適当に盛り上がってきたところで如月は試合を止めた。

 中には別格と呼べるほどの実力者も数人紛れていたが、誰も積極的に戦わずに試合を終えた。これからクラスで浮かないよう、気を使っているのだろう。

「なんか殺伐としてんなぁ、おい」

 江田が目の前で繰り広げられる戦いを眺めながら、隣に座っている太陽へとささやく。

「そりゃそうだろ、会っていきなり模擬戦だからな」

 江田が言っているのは周囲の空気のことだ。

演習場の戦闘を観戦できるよう、全体を見下ろせる位置に席が置かれていた。丁度太陽が視線を落とした時に、新たな試合が開始される。周囲の生徒達も、真剣な面持ちで試合を眺めていた。他の人間の実力を図っているのだろう。

「まあ俺は見てるだけだから気が楽だぜ。いやあ、整備兵でよかった!」

「俺は今から気が重いよ……」

「次、小野田太陽!」

 今まで二人ずつ名前が呼ばれていたはずなのに、呼ばれたのは太陽一人の名前だけであった。

 前に出た太陽を、はまじまじと眺めた。

「ほう……貴様がか」

 まるで値踏みするような視線を太陽に向ける。

「先日の作戦で、奴ら相手にやりあったそうじゃないか」

 生徒達がざわめいた。口々に「アイツが噂の……?」などと言っている。

「それがなにか」

「いやあ、偶然戦果をあげて調子に乗っている小僧か何かだろうと思っていたんだが、こいつは失礼した」

 如月は申し訳なさの欠片も感じさせない表情。

妙に絡ませてくる視線を前に、太陽は妙な苛立ちを覚えた。

 太陽は挑発とも取れるその言葉を無視して、

「それで、自分の相手は誰ですか?」

「ああ、安心してくれ。この俺が引き受ける」

 更に生徒達がざわめく。無理もない。 生徒同士で行われていたはずの模擬戦で、教官が生徒と戦おうというのだから。

「何故です?」

「あいにくこのクラスは奇数でね。誰か1人貧乏くじを引かなきゃいけんのよ」

「…………」

 太陽の答えを待たずに、如月は演習場へと足を踏み入れた。

「まあ、ちょっとは俺にも楽しませてくれよ。可愛い一年生?」

 獰猛な肉食獣を思わせる笑みが、如月の顔から溢れた。

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