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荒廃のアスタリスク  作者: ガルムン
【第一部】入校編
3/5

新たなる戦場

 深夜。

「死ぬかと思った……」

 あまり人通りの無い格納庫で、柊太陽は弾薬箱に腰掛けて休んでいる。

 数十分前、作戦を終えた太陽はナノマシンの調整を行う為に格納庫で待機するよう命令を受けていた。

 しかし、太陽の体は限界を超えたと言わんばかりに、執拗に眠りを求めていた。もとよりAIの優秀さに助けられているためあまり気にされてはいないが、太陽は殆ど実勢経験もない、素人とほとんど変わらない新米兵士なのである。

 唯一の違いは、彼はAIを従わせており、さらにそのAIが飛びぬけて優秀

であると言ったところか。 

「よう太陽、生きて帰ったか」

 油まみれの作業服を着た軽薄そうな男が、わざとらしい笑顔を浮かべている。

「江田……」

 江田宏。太陽と同じ訓練校出身の兵士であるが、彼は技術科出身である。

「にしても新兵を最前線に送り込むなんてな、司令も無茶するぜ」

「おかげさんで死にかけたよ。全く、人の命を何だと思ってやがる」

「まあ、お前の命安そうだもんな。カワイイ女の子だったら守ってヤりたいと思うもんだが」

ニタニタと嫌らしい笑みを浮かべる江田。

 彼は見た目は正統派の美男子なのだが、この基地ではあまり人気がない。 数少ない女性に手を出してはフラレている。まあ、狭い基地の中で何人もの女性に手を出せば、悪評が広がるのも無理は無いだろう。

要するに彼は、女好きなのである。

「で、要件はなんだよ」

「ああ、司令が呼んでた。俺達二人で司令室に来いってさ」

「あの婆さん、今度は何を押し付けるつもりだ……?」

 太陽は顔をしかめる。

「さあな。面倒事で間違えないだろ」

「あの人には手を出さないのか?」

「冗談だろ?俺はストライクゾーンは広いが、あれはバックネット直撃の大暴投だね」


「失礼します」

 適当にノックをする。ドアを開けると、壁一面が書庫になっており、ところ狭しと書類や資料が並べられている。

その奥、部屋の中央には執務台が置かれており、立派な椅子に司令は座っていた。

なにやら異界の雰囲気ただようこの部屋に、その威厳があってなおかつ胡散臭いという外見が組み合わさり、司令には魔女と言うあだ名がつけられている。

「参りました」

 直立不動で司令の前に整列する。魔女という名に相応しい胡散臭さだと、あらためて太陽は思った。

「ご苦労様。直っていいわよ」

「太陽君、任務ご苦労様でした」

「はっ」

「そうそう、君が助けた少女は無事だったようです。かなり衰弱してはいますが、命に別状は無いでしょう」

「良かった」

 ほっと安堵の息を漏らす。

「んで司令、コイツはわかりますがなんで俺まで呼び出されたんですか?」

「ええ、私はバックネット直撃のようですね?」

「え、は、いえ」

「この基地には優秀な部下が揃っていますからね。なんでも教えてくれますから、口は謹んだほうが良いでしょう。最も、そんな軽薄そうなチャラ男をまともに相手する女の子もいないでしょうけど」

「は、はは」

 江田は愛想笑いを浮かべながら、このババア……などと太陽にだけ聞こえる声で毒づいている。

「まあそれより、本題に入りましょう。先程、この基地に防衛省より通達が入りました。前途有望な新兵を推薦してほしいと」

「はあ」

「ですがこの基地には新兵は二人しかいないのですよ。女好きと命令を聞かないじゃじゃ馬以外にはね」

 いやみったらしい口調で司令は言った。江田は女好きとは誰のことだろう、なんてとぼけた顔をしている。

お前のことだ、と太陽は心のなかでツッコミを入れた。はて、そうしたらじゃじゃ馬とは俺のことか……?

「命令です。君たちは新しく新設される兵学校に生徒として入学しなさい」

「はあああああああああ!?」

 太陽が唖然としていると、江田は信じられない、と喚いている。

「で、ですが司令、いやババア!俺達こないだ教育期間をやっとのことで終えたばかりですよ!なんでまたやり直さなきゃいけないんすか!?」

 まくし立てる江田。あまりの動揺に、心の声が出てしまっている。

「…………」

「これは命令です。すぐに支度しなさい。二時間後にヘリが出るわ」


「なあ、用意出来たか?」

 一時間後。自室に戻って荷物をまとめていると、江田が大きなバックパックを幾つも背負った状態で現れた。

「まあ、そんなに荷物ないから」

「おいおい、そんなんじゃあ三年間楽しめねえぜ?」

 江田は先ほどまでとは打って変わったテンションではしゃいでいる。最後に司令が「そうそう、その施設、高校のようなものらしいわよ」と言った瞬間、水を得た魚のようにはしゃぎまくっているのである。

「いやあ、楽しみだなあ」

「まあな」

 妙にハイテンションの江田。適当に返事を返す。正直、その高校のようなものというのはとても胡散臭い。

「とりあえず俺、席は窓際の一番後ろがいいな」

「はあ?そりゃなんで」

「高校生たるもの、朝はパンを加えて行かなきゃな!そんでもって女の子とぶつかるんだ」

「待ってくれ、話についていけない」

「ダメだぜそんなんじゃ。こんな事もあろうかと、しっかり高校について予習をしておいたんだ」

 得意気に語る江田。その手には、「どきどきメモリアル」と書かれたゲームソフトが握られていた。

 前途多難である。太陽はため息をついた。


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