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とある手記
あの事件を振り返って思うことは、人は戦うことをやめられないということだ。
他人の命を自分本位に刈り取り、
あるいは自身の命すらゴミ屑同然に捨てるように、
血を流すことを厭わず、
他者を踏み台にして、
人は最後まで戦うことをやめず、
最後まで命を対価に戦い続けた。
何のために戦い、
誰のために戦い、
そして唯一の命を投げ打ったのか。
その意味を知るには当時の自分はまだ無知過ぎたのだ。
そうとは知らないあの頃の自分を今思えば、やはり子供だったのだろう。
今現在の自分が大人なのかと問われれば子供のままなのかもしれない。
けれども、少なくともあの頃の自分と比較すれば間違いなく成長はしているはずだ。
――いや、成長していなければならない。
そうでなければ大勢の犠牲の上に生き延びた意味がないのだ。
沢山の命が零れ、
幾多の願いが踏み躙られ、
無数の想いが虚空へと消え去った。
だからこそ、ここに記そう。
自分の浅はかさゆえに知ったこと、
生きるために命を賭して戦った人達のこと、
そして平穏を一途に望んだ――彼女のことを。