episode3
どこを見ても男、男、男。男子校とはむさ苦しく悲しい場所である。マンガの様に美人な若い女性教師が居るわけでもない。そんな中で3年間過ごすというのは、青春を送る若者には酷な話しである。授業中も落ち着きなく騒がしい中、新は回ってきたマンガの最新巻を読んでいた。すると、高校に上がってから仲良くなった斉藤が声をかけてきた。
「新ぁー、お前、今月末の土曜ヒマか?」
「土曜か...。なんも無いけど何?合コンでも開いてくれるん?」
斉藤はこの辺りの高校に顔が広いため、よく合コンを開いたりしているのである。
「いやいや。今回は合コンじゃなくて(笑)オレの中学の親友が桜ヶ丘に通ってんだけどさ。その日学園祭らしくって。新一緒にいかね?」
「...桜ヶ丘か...」
新が遠い目をしながらポツリと呟く。斉藤はそんな新をハッと見やると、「もしかして...」と言葉を紡いだ。
「新、お前...桜ヶ丘に元カノでもいんのか?!」
「ちゃうわ!!...オレの幼馴染みも桜ヶ丘に通ってんだよ。...まぁ、中2の途中から交流無くなったケド。」
「...ふぅーん?なんかアヤシイけど、それって女?男?」
「...男だけど。」
新が"男"と応えると、斉藤は「なぁーんだ」と言い、後頭部で手を組みながらつまらなそうに新を見やった。
「オレはてっきり幼馴染みという名の元カノかと思って期待したのによー。なんだ、男かよー。つまんねぇー。」
「...お前なぁ...」
新は斉藤に呆れていると、頭の中で幼馴染み..."若葉"を思い浮かべる。先程言った通り、中2のあの日から交流がパタリとやんでしまって、今となっては幼馴染みと言っていいのかわからない程である。自分から若葉を遠ざけてしまったため、今更若葉に合わせる顔がないのだ。新がそう思いだんまりを決め込んでいると、斉藤は「別にいいじゃん?」と声をかけてきた。
「オレ達はお客として、学園祭を楽しみに行くだけだし。その"幼馴染みさん"に会いに行く訳じゃねぇんだからさ。気楽に行こうぜ?もしかしたら、ワンチャン可愛い女子といい出会いがあるかもしれねぇし?」
「...まぁ、そうだな。いいぜ、いっても。」
新がそう応えると、斉藤は「そうこなくっちゃ!」と言いながら背中をバシバシと叩き、「じゃあ、土曜10時に桜ヶ丘の校門前で!」と言うと去って行った。
「...若葉...。どうしてっかな...」
交流が途絶えてしまってからも、新は若葉を忘れた日は無かった。...何を言おうと新にとって若葉は幼い頃からの"初恋の相手"だったのだから。




