Prolog
幼い頃から自分の女顔がコンプレックスだった。何度その顔に対してからかわれた事だろう。からかってくる奴が大半だった中で、幼馴染みである新だけは違った。いつも通り「女男」とからかわれて泣いている中、新はオレの前にバッと出て「そういうのやめろ!」と庇ってくれた。
「お前らのそれは虐めなんだぞ!やめてやれよ!」
「な、なんだよ!事実じゃん!」
いじめっ子がくって反論すると新は「ハァ」とため息をついた。
「そう言ってお前、若葉の事好きなんじゃねーの?」
「バッ...!!んな訳ねーだろ!バーカ!もう行こうぜ!!」
新の言った事が本当かどうかはわからないが、いじめっ子は顔どころか首まで真っ赤にして取り巻きを連れて去っていった。その様子を見て、新は「ダッセーの」と言ってオレに向き合った。
「お前も言われっぱなしはやめろよな。男だろ?ベソベソ泣くのもよくねぇよ。」
「ご、ごめん...」
オレは涙をゴシゴシと拭い新に向き合った。
「新、いつもありがとう。」
そう言いながら新に笑いかけた。すると新は顔を赤くしてそっぽを向きながら「おう」と返事をした。
「実はオレ、最近目が悪くなったからメガネする事になったんだ。顔も隠せるようになるからこういうの無くなると思う。...多分。」
「若葉、本読んだり、勉強したりするの好きだもんな。でもオレ達まだ小2なのにメガネか...。ずっかけるのか?」
「うん!もう顔でからかわれるの嫌だし。」
「ふーん...。可愛いのにもったいない...。」
「え?」
新の最後の言葉は小さくボソッと言ったためオレは聞き取れなかった。だから聞き返したのだが、「何でもねぇ」と言われ追求するのをやめた。
「ホラ!もう夕方だし帰ろうぜ!」
「ホントだ。夕日キレイ。」
「...さっきまで泣いてたくせにのんきな事言うよな。」
「ごめんごめん。」
新は「ホラ」とオレに手を差し出してきたので、オレはその手を握り、手を繋ぎながら家路についた。明日は土曜日なので両親とメガネを買いに行く事になっている。休み明けにはメガネをして登校する事になるから、もう意地悪を言われる事は怖くない。メガネはオレにとってお守りのような役割りになるのだと思うと、心強く感じるのであった。そうして、その休み明けからメガネを外すことはなくなったので、だんだん皆オレの女顔に対して何か言ってくる奴はいなくなったのであった。
「え?若葉お前桜ヶ丘行くのか?」
月日が流れ、オレ達は高校受験を考える中2になった。オレと新はオレの家で宿題をしながら進路の話をしていた。
「桜ヶ丘って偏差値高ぇ共学の進学校じゃん。」
「担任がオレの成績なら問題ないって。それに、オレ大学行きたいし。」
「...ふーん。」
「新は?どこ志望なの?」
「オレの成績だと海里男子しか行けねぇよ。名前書けば受かるバカ高。」
「今から頑張ればもう少し上行けるんじゃない?」
オレがフォローを入れると新はぶすっとした顔をして黙り込んでしまった。「あ、新...?」と呼びかけると、新はそのままテーブルの上を片付け始め、帰り支度をする。そしてそのまま立ち上がり部屋から出ようとした。
「待って新!どうしたの?オレ何か気に障るような事言った?言ったなら謝るから教えてよ!」
オレがそう言って新を呼び止めると、新はドアノブに手をかけたまま振り返ってオレを見た。
「新...?」
「...おれは、若葉もオレと同じ高校に行きたいって言ってくれると思ってた。でも違ったんだな。」
新の声音は暗く、落ち込んでいるようだった。
「...学校が違っても会うことは出来るよ?オレ達幼馴染みなんだからいつでも...」
「それじゃあ意味ねぇんだよ!!」
「...新...?」
急に声を荒らげた新にオレは困惑するしかなかった。いつも明るくて、オレに対して笑顔を向けてくる優しい新からは想像がつかなかった。オレが固まってしまっていると、新は「...悪い」と言いオレに背を向け下を向いてしまった。
「...オレ頭冷やしたいから、暫くオレに話かけないでくれ。...じゃあな。」
新はそう言うと帰ってしまった。オレは何が悪かったのかわからなかった。...そしてわからないまま年月日が流れ新と口をきかないまま中学を卒業し、高校入学となってしまった。オレは志望通り桜ヶ丘へ。おそらく新は海里男子へ。連絡先交換もしていないから自然と新とは疎遠になってしまったのであった。




