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プロローグ

「ああ、僕の店が……」


──十年間、コツコツ貯金して手に入れた念願の喫茶店が瓦礫になっていた。

コーヒー豆の香りすら、今はもう、土埃の中に消えた。


 巨大怪獣と共に踏み潰され、スローライフも夢も粉々だ。


「もう逃げようなんて、バカな真似は考えないことよ?」


 後ろからピンク姉さんの声がした。その瞬間──


「ご主人様、疲れてんのか?」


 目を開けると、そこには猫耳メイドがいた。緑の森と石造りの街並みに囲まれた、どこか幻想的な世界。


「ああ、ポムか…… 大丈夫、昔の夢を見ていただけさ」


 僕はグリーン。この剣と魔法の異世界で小洒落た喫茶店を営みながら、のんびりとスローライフを送っている。


 変な名前だって? 実は僕、かつて戦隊ヒーローだったんだ。


 戦隊ヒーローとしての戦いの日々に疲れ果てた僕は、いつしか田舎で喫茶店でもやりながら、スローライフを送りたいと願うようになった。


 そして二年前、夢のスローライフを実現すべく、長年勤めてきた戦隊を辞めた。しかしとある理由で中々スローライフを実現できない。僕はついに決断した。


 異世界転移である。


 戦隊の兵器担当として、物理法則を無視した兵器を数多く作り、周囲から天才科学者ともて囃されていた僕は、数年前、ワープ装置の開発途中に偶然、異世界転移装置の開発に成功していたのである。


 どこに飛ばされるかも分からない片道切符。しばらく躊躇していたが、あの世界というか、あの連中に心底ウンザリしていた僕は、もう迷わなかった。


 そして一ヶ月前、奇跡的に思っていた通りの剣と魔法の異世界に転移することができたのだ。最初は言葉や習慣の違いに戸惑ったが、今ではすっかりこの世界に馴染んだ。


 そして先月、王都の郊外で、ようやく念願の喫茶店をオープンした。しかもポムという可愛い猫耳のメイド付きだ。


「あー、異世界にきて、良かった!!」


 この半年間、穏やかで充実した日々を送っている。

 ただ一点、不満があるとすれば、まあ、これは異世界あるあるになってしまうけど、元の世界の文化が異世界でやたら滅多にもて囃される、というやつだ。


 この世界では、コーヒーや紅茶などの食文化があまり発達していない。そのためか、僕の淹れるコーヒーや紅茶が、この世界の住人にドンピシャでハマってしまい、店が大繁盛。


 そんなこんなで忙し過ぎて、中々スローライフが出来ないんだ。


「アハハハ」

 幸せすぎて、今日も笑いが止まらない。異世界スローライフ、最高!!


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