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ページの外の神

作者: 赤猫だよ
掲載日:2025/10/21

友達に凄く絶賛されたので投稿しました。

初めてですが見てくださるならありがたいです。

時間とは何か。

それを問う者は常に、時間の中で老いていく。

だが彼、エノスは違った。

彼は、時間という檻の構造そのものを、神の視点から知ろうとした。

この世界では、過去は「記録」であり、未来は「想像」であり、現在だけが「現実」だと信じられている。

だがエノスはある日、学びの果てに悟った。

もし神がいるならば、神には“現在”しか存在しない。

そしてその“現在”とは、すべての時が重なり合う静止した永遠の一点である、と。

彼は数十年を費やして「神の観測構造」を研究した。

時間の粒子、意識の遅延、記憶の反射。

その果てに、エノスは自らの脳を分解し、時間の感覚を止める装置を作り出す。

それは「一定の時」と呼ばれる装置、精神と時間の接点を断つ禁断の実験だった。

装置を起動した瞬間、世界は静止した。

風は止み、砂は空中に浮かび、音は途切れ、光は静かに凍りついた。

そして彼は悟った

「神の視点」とは、動かぬことだ。

だが次の瞬間、彼の前に広がったのは、数えきれぬ光のページだった。

それぞれが、彼の人生の1年、1日、1瞬を描いていた。

その全てが同時に開かれている。

少年の頃の彼、研究に没頭する彼、死にゆく彼

それらが一枚の書物の中に並列して存在していた。

そして彼はその書を読む“存在”を感じた。

それは動かず、語らず、ただ全てを知っている何か。

無限に広がるページの中央で、神は“読む”のではなく“知っていた”。

過去も未来も、すでに開かれたページとして。

そして、その神の意識の中で、エノスの選択もまた一つの文字列にすぎなかった。

「お前の意思も、すでに書かれている。

私がそのページをめくる前から。」

声はなかった。だが確かに響いた。

エノスは真意を理解した。

自らの研究も、決意も、神を求めた衝動も、最初から書に刻まれていた。

彼が“自由意志”だと信じていたものは、

神の本に記された「一文」だったのだ。

その瞬間、彼は微笑んだ。

涙がこぼれ、空気のない空間に溢れ止まる。

「ならば、神よ。

 あなたのページに在る私は、どのように終わるのですか?」

神は答えなかった。

だがページの端が静かにめくられた。

その先に記されていたのは、彼が“神を知った”とき

彼自身が神になる瞬間だった。

そしてエノスは理解した。

神は「動かぬ存在」ではない。

“動かぬこと”そのものが、全ての動きを内包している。

神の視点から見れば、すべての運命は既に完了している。

だがその書の中では、無数の生命が、未来を信じて生きている。

それこそが、時間という幻想の美しさであった。

エノスの意識が薄れていく中、彼は最後に呟いた。

「私が読むのか、あなたが読むのか。

それともこの本そのものが、神なのか。」

そして、ページは静かに閉じられた。

だが閉じられた書の中では、無数の世界が、

今日も“今”という名の永遠を生き続けていた

読んでくれてありがとうございます。読んでくれた方によって解釈は分かれると思います。

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― 新着の感想 ―
ただ疲れ果てたとき、自分の存在が何の意味を持つのかわからなくなったとき、老いていく自分を前にして、どうしようもない虚無に襲われたとき、無性に読み返したくなります。 虚空の彼方から、遥か遠くの存在が投げ…
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