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⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎投手の懺悔

作者: 川里隼生
掲載日:2026/06/01

 ⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎年⬛︎月⬛︎⬛︎日に行われたプロ野球公式戦⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎対⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎戦で、⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎の⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎選手に投球が当たった。⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎選手に怪我はなく、すぐさま出塁した。事件が起きたのは攻守交代後のことだ。打席に入った⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎の⬛︎⬛︎⬛︎選手の頭部に投球が当たった。⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎球審は⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎投手へ退場処分を下した。


 ⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎の⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎監督はすぐさま⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎投手を二軍に降格させた。⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎投手が一軍に復帰することはなかった。それどころか、事件翌日から球場に姿を現さなくなり、球団からの連絡にも応じなくなった。事件から一ヶ月ほど経ったある日、⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎投手から球団へ手紙が届いた。球団からの通報を受けた警察が⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎投手の自宅を訪ねると、そこには誰もいなかった。


 現在も⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎投手の行方はわかっていない。警察は失踪と見て捜査を続けているが、既に自殺したのではないかとも噂されている。⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎は手紙の内容を公開していない。従って、以下に記録する⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎投手の手紙は極秘情報である。




 関係各位


 初めにこの幾日間、練習にも参加せず、電話や来訪にも応じず、徒に皆様へ迷惑や心配をかけてしまったことをお詫び申し上げます。これは今後の身の振り方を考えていた為です。誠に勝手ながら、私は⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎を退団させていただきたいと存じます。


 一人の選手が退団することは毎年のことですが、私の場合は年齢や成績不良などとは違う尋常ならざる理由あっての決断ですので、ファンを含めた皆様へ私が退団という決断へ至った経緯を説明せねばならぬと考えました。しかしながら今や私は公の場に自ら出ていくような勇気をすっかり失ってしまったので、こうして手紙という形をとらせていただきました。手前勝手に決めてしまったこと、繰り返しお詫び致します。


 私が退団という決断に至った直接の原因は、⬛︎⬛︎⬛︎君に故意死球を投じたことです。このような事件を起こした後に弁護のつもりで書く訳ではありませんが、私の欠点は優しすぎるところであると、自他共に言っておりました。何度か取材の折に話したこともあります。このような私がどうして故意死球などという暴挙に出たのか、最近来訪した記者の方々はそれを聞きたかったのでしょう。


 あの日に至る前から、私は精神的に疲弊していました。とはいえ、特別な不幸に見舞われた訳ではありません。日々の小さな不快感が積み重なり、心の余裕を奪っていったのです。私の成績では、満足に遊んで発散させることもできない状態でした。


 あの日の試合では、我がチームメイトである⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎選手の⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎新記録樹立が注目されていました。ところが不運にも⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎選手に死球が当たってしまいます。誰が見ても詰まらぬ失投であって、そこに悪意がなかったことは明らかでした。しかしながら世紀の新記録を死球でフイにされてしまったことでファンやチームメイトが腹を立てることも、私の立場から見れば致し方ないように感じました。


 私は次の回に備えてキャッチボールをしていたのですが、死球に立腹した⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎コーチが「やったれ、やったれ」とマウンドへ向かう私の背中に言うのを聞きました。それが何を意味するのか、あるいはどこまで本気だったのかは正確にはわかりませんが、球場の独特な雰囲気もあって、私は死球をぶつけてやろうという気持ちになりました。あの瞬間の私は⬛︎⬛︎⬛︎君が生きた一人の人間であることを失念していたのです。


 本来、報復の故意死球は脚など危険の少ない場所を狙います。ところが私はどうせなら日頃のストレスも発散してしまおうと考え、⬛︎⬛︎⬛︎君の頭を狙うことにしました。⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎捕手は外角攻めを指示しましたが、私は⬛︎⬛︎⬛︎君への初球でそれを破り、彼の頭部へ渾身の直球を投げ込みました。倒れた彼を見て「ヨッシャー!」と叫び、ガッツポーズをして見せたのは、偽悪的に振る舞うことで自分とは違う誰かがやったことだと思いたかった為です。


 思い返せば、⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎に入団して以来、三振に仕留めた相手にもあれほど強く感情的な態度をとったことはありません。本来の私ならば、胴上げ投手になったとしても、完全試合を成し遂げたとしても、あの日ほどのスポーツマンシップに欠けた振る舞いはしないと誓えます。⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎球審による退場命令が出るより早く、私はマウンドを下りていました。これは投球を続けられる筈がないと理解していた為です。


 悲鳴、困惑、のち蒼白。私が感じた球場の反応です。特にベンチは揃って顔を青くしていました。恐らく、私も同じ顔をしていたことでしょう。重要な約束を忘れていたことに気がついた瞬間のような感情でファウルラインを踏み越えました。その感情はこの手紙を書いている今も継続しています。監督、コーチ、選手たちの視線は全て私を向いていましたが、私は無言のまま裏に逃げました。


 試合が終わるのを待たずに、私は誰にも声をかけず、またかけられぬまま、球場から出ました。その試合がどうなったのか、⬛︎⬛︎⬛︎君がどうなったのか、知るのが怖くて耳を塞いで眠りました。三日後、⬛︎⬛︎⬛︎君が病院へ搬送されたことを知りました。犯罪、の二文字を反射的に連想しました。事ここに至ってもまだ、私は自らの保身のみを意識していたのです。


 私は子供の頃、輝く芝の上で溌剌と白球を追うプロ野球選手に憧れてこの道を志しました。契約書に署名したとき、今後は君が子供たちの憧れになれるように、と⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎監督から激励の言葉をいただきました。しかしあの日、球場に足を運んでくれた子供たちに私が見せたものは決して教えてはならぬ禁忌でした。


 健全なる精神は健全なる肉体にこそ宿るべきという戒めがあります。現在の私の精神から考えて、私の肉体はとてもプロ野球選手として、そして一人の社会人として通用するものではありません。今一度自身と社会にとって最良の道を見つめ直します。⬛︎⬛︎⬛︎君、死球を当て、また対面で謝罪することも叶わず、誠に申し訳ありません。関係者の皆様にもご迷惑をおかけし、申し訳ありません。


 ⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎

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