幕間:精霊使いと仲間
カレンです、精霊使いをやっています。
召喚の家でシトと出会ってからずいぶんと長い時間が過ぎました。振り返ればダンジョンでの勇者パーティーとの戦い、魔王の魂に乗っ取られたエナさん、死神という上位者が起こした事件解決と多くの問題と直面して、アギトさんにシャルルさん、シトと一緒に立ち向かってきましたが……私にはずっと考えてる悩みがあります。
毎回全然役に立ってません!
それも当たり前で、精霊使いなのに精霊と契約していないのが原因です。私がしたことといえばアレクシオスでの囮役ぐらいで、勇者パーティーと戦った時はほとんどシャルルさんが一人で倒してしまいました。
あの時は精霊瓶で昔契約していた精霊を複製して呼び出しましたが、精霊瓶はとても高価であの一つしか持ってなかったので文字通り無力です。
勇者様に会った時にはすでに精霊のみなさんは野生に帰ってしまっていたようで気配もなく、水のシィも風のビィも火のエルも戻っては来ないみたいです。
精霊使いは精霊がいないと元素魔法が使えないので本当に役立たずです、どうしましょう。
それに比べてパーティーのみんなはとても強くて羨ましいですね。
アギトさんはドラゴンとの戦いで新しい魔法を使えるようになってましたし、出会った頃から勇者様に引けを取らない強さでした。それが一人旅の間にさらに強くなってます、シトみたいな言い方をするとやばいです。
シャルルさんは黒魔導士なのに様々な元素魔法を扱えて、精霊がいたときの私より多種多様な魔法を操っています。四種の杖を使い分けて魔法が使える魔術師なんて世界中探してもシャルルさんしかいないと思います。
シトに関してはなんと言えばいいでしょうか? 言葉では言い表せないというか、上位者というのは人知を超えた強さを持っていることを肌で感じました。
いまだに私と一緒にいてくれるのがなんでかわかりません。死神様だって倒しちゃったのに終わってみれば普段通りで、いつも優しく私のことを気遣ってくれます。
だというのに私は甘えるばかりでなにもできてません。目まぐるしい日々の中で召喚石を買う暇もなく、私程度の精霊使いだと土地の力を借りなければ呼び出せないので召喚の家まで戻らなければ契約もできないのでアレクシオスにいる間はずっと役立たずなんだと思います。
勇者パーティーでの経験でポーション生成のスキルがあったのでたまたまポーション作りができましたが、それも役に立ったのはダンジョンの一回だけ。シトたちは怪我することも珍しいのにちょっとした傷なら全部シトの魔法で治っちゃいます。
私にもなにか魔法以外のスキルがあればいいのですが。
こんな悩みを打ち明けることもできず、そのまま同行してきましたがそろそろ成長してもいいはずです。何ができることを探してみましょう!
「まずは精霊に頼らないスキルの練習です。簡単な炎熱操作を……」
ロウソクに灯した火に手を近づけて集中――火を生み出すのではなく火を操るスキルぐらいなら私でもできるはずです。
「あ、あれ……? 小さく小さく……!」
ゆらゆら揺れる火が少しずつ大きくなり、スキル習得に向けて集中していると突然小さかった火が暴走し業火へと変わる。
「ひゃあああ!」
「どうしたカレン!? なんだこの火は! クソッ 『レインボール』」
私の悲鳴を聞いたシャルルさんが部屋に入ってきてくれて、魔法で火を消してくれました。このままでは火事になるところだったので助かりました。
「すいませんすいません!」
「『炎熱操作』の練習か、危ないから一人でするなよ。あと炎を扱うなら屋内じゃなく外のほうがいい、今度やる時は声をかけてくれ」
何度も謝りましたが、怒られることなくアドバイスをいただけて、シャルルさんは本当に優しい方です。
最初から失敗しましたがめげません。
みなさんの役に立つため次は錬金術の練習です。ポーション生成スキルがある私なら錬金術はできるはず。キッチンを娼館の方に頼んで借りられましたし、まずは簡単な魔導具から作りましょう!
ボカンッ!
「ゲホッゲホッ……あれぇ? なんだか、眠たく……」
「なんの音だ!? うっ……これは睡眠作用のある花の香りか!」
「あ、アギトさん……ちょっと錬金術の練習を……」
「大丈夫かカレン! まずいな、誰か来てくれ!」
バタバタと足音がする中眠ってしまった私は、目を覚ますと部屋のベットで寝かされていて、めちゃくちゃになったキッチンはアギトさんの指示で片付けられたらしく、また迷惑をかけてしまったと謝りに行きましたが気にするなとだけ言われてしまいました。
簡単なスキルも錬金術もダメとなるとどうしましょう。少しでもみなさんの役に立ちたいのですが、また失敗して迷惑をかけてしまうことを考えると何も練習できません。
「はあ……」
「カレン、なにかあったの?」
「シト、私……みんなの役に立ちたくていろいろ頑張ってみたんですけど、何もできなくて」
「あー、それでシャルルやアギトが走り回ってたのか」
「いつも迷惑ばかりかけてすいません!」
シトは私の契約精霊という立場で、私にも契約主のように振る舞うよう言ってますが今日ばかりは頭を下げざるの得ないというか、今までのことを考えると契約主なんて立場でいられないと考えてしまいます。
「迷惑なんて思ってないよ」
「え……?」
「カレンはいつも僕たちを見てくれてるし、危ない場所にも一緒に来てくれる。戦うことしか脳のない僕たちの事を考えて早起きして掃除してくれたり、料理や洗濯が上手だって娼館の人達も感謝してたよ」
「悩んでることがあったら相談しろよカレン」
「魔法やスキルの練習ならいつでも言ってくれ、俺だってこれしかできないんだ。力になるよ」
シトに優しく頭を撫でられてしまい、泣きそうになってしまったところにアギトさんとシャルルさんも来てくれました。
みなさんの前で子供のように泣くわけにもいかず、なんとか我慢して頭を上げることができました。
「戦うことについては考えなくていい、僕たちがなんとかする。だからカレンは安心して僕たちが帰れるように、笑顔で待ってて欲しい」
「そうだな、カレンがいるから俺達は帰る場所があるんだ」
「無理するな、任せられるところは任せてくれればいい」
一人で悩んで、試行錯誤して、無理して失敗して――そんな私に居場所を与えてくれるみなさんが笑顔でいてくれる。
私はカレン、精霊のいない精霊使い。
そんな私でも、まだまだみなさんと一緒に冒険できそうです!
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