56話:天使と死神2
護符を一枚使って闇属性魔法を発動し、魔法を複製する魔法で四つに増やして遠距離からロードを狙うと鎌で弾かれるが、その隙に近づいてきた顔を目掛けて蹴り上げる。
「きゃあ!? なにすんのよ、アタシの顔にこれ以上傷をつける気!?」
怒っているが物理最弱の精霊族の徒手という攻撃すら避ける、マジで物理攻撃に対して耐性がまったくないようだ。
まさかと思うが――死神の鎌がチート武器なだけで本人はあんまり強くないんじゃないか?
「ねぇ、もしかして君……本体はめっちゃ弱かったりする?」
「は、ははははぁ!? そんなわけないじゃない神よ神! アタシは末席とはいえ神の一人なのに弱いわけないじゃなイ!」
否定しているがロードは見るからに焦っている。つまり死神の弱点は物理攻撃に弱いではなく、鎌さえなければさほど脅威になる相手ではないということか。
レベルで考えれば100は超えているだろうし確かに人より強いが、よく考えれば特に強化もしていない蹴りですらバランスを崩していた。ステータスでは俺と比べれば徒手で勝てる程度だ。
「"紅蓮躍動"、"超強化"、"波動"」
そうとわかれば慣れない武器での攻撃をやめて身体強化に全力を注ぐ。防御は意味がないから攻撃力と速度を底上げして攻撃に連動して物理ダメージを与える空気弾を飛ばす魔法でリーチを伸ばし構える。
次の瞬間、俺は一気にロードに向けて駆け出した。
「だから無駄だっていってるでショ!」
「そんなことないねっ!」
鎌を避けて懐に潜り込み腹に一撃入れて顎を殴り飛ばした。ロードは防御できずに体が宙を舞い体勢を立て直すがそれも遅く着地する前に回し蹴りが顔面を捉える。
「ヒギャアアアアッ!」
「やっぱり本人は全然弱い……」
殴り蹴られた顔を抑えながら悶絶するロードだがすぐ立ち直り鎌を構えて怒りをあらわにする。
「アタシの顔を……絶対に許さないワ! 絶叫するまで痛ぶって犯して殺して犯してやる!」
「もう怖がることはないな」
怒りのまま鎌を振り回す攻撃を避けて細かく攻撃して隙ができた瞬間股間を蹴り上げる。ちょっと私情が入った攻撃だが誰も文句言わないだろう。
あまりの激痛だったのか鎌を手放して股間を抑えるロードの腕を蹴ると嫌な音がして腕が折れ曲がり、鎌を持ち直すこともできなくなってその場で座り込む。
「ひぃ〜もうやめてぇー! アタシが悪かったわヨ、もうこれ以上殴らないで!」
余裕だった時から一変して許しを請うロードだが、その程度で許させると思ったら大間違いだ。上位者とはいえ人殺しを繰り返した罪をここで償ってもらう。
頭を上げ下げし助けてくれと叫び続けるロードに向けてゆっくりと近づいた。
「せめて……せめて顔とタマは潰さないでぇ……」
それからとりあえず指一本動かせなくなるまでロードをタコ殴りにし続けた。
これもさすがは神といったところなのか、人ならとっくに死んでいてもおかしくないダメージを与え続けたのに意識すら失わず生きている。
ただ死なないからと言って野放しにするわけにもいかず埒が明かないなと思っていると地面に落ちている死神の鎌が目に入り持ち上げる。
「ちょ、ちょっとそれは……アンタそれはナシでショ!?」
「防御も魔法も無視して魂を切り取る死神の鎌か……」
鎌の刃を地面に突き刺してロードの前に立ち、この武器なら死ぬのかもしれないと考えていると背後から足音が聞こえた。
「シトー!」
振り返るとカレンが走ってきてその後ろにアギトを支えながら歩いてくるシャルルの姿もある。最悪致命傷だと思っていたアギトが生きていることに気づき急いで駆け寄った。
「アギト! 体は大丈夫なのか!?」
「わからない……だが生きているようだ」
心配してアギトの体を見ているとポケットから白い羽が落ちて地面に付く前に焼るように消えた。
あれは蘇生アイテムの天使の羽。俺が渡したのはそんなレアアイテムではなくただ抜け落ちただけの羽だと思っていたが、たまたま部屋に落ちていたのが天使の羽だったのだろうか。
とにかく生きていることを噛み締めてアギトを抱き締める。
「よかった……!」
「ああ、そっちはどうなった?」
「ロードはとりあえず倒した、あそこに転がってるけどどうする?」
「死神ってんなら俺達でどうにかできるものではない気もするが、殺してしまったほうがいいかもな」
「そうだね」
やはり殺したほうがいいという考えでまとまったのでさっきのように鎌を持ってロードに近づくと、奥の空間が歪みガラスのように割れて中から全身を鎧で包んだ長身の何者かが現れた。
警戒して一歩下がり戦えないアギトとカレンを守るようにシャルルと並んで構えていると、鎧は歩きだして転がっているロードの髪を掴んで持ち上げた。
「あだだだだだ! 何よアンタ、いきなりなにすんのヨ!?」
『私は裁定者、上位者の罪を裁定する者。任を外れ堕天を画策した死神ラストリーに神の言伝を持って裁定を下す』
その声は鎧が喋っているはずなのに頭の中で反響するように聞こえ、違和感を覚えるがその異様な風貌で近づけずにいた。
『神は告げている。死神ラストリーは御国へ戻り神直々に罰を与える』
「ちょっと、裁定者とか知らないけどあんな奴に会うなんでごめんヨ! 離しなさ――」
抵抗虚しくロードは割れた空間の中に投げ飛ばされ裁定者を名乗った鎧も謎の空間まで歩いていき、穴に入る前に振り返り頭を下げた。
『神は告げているを。天使並びに死神ラストリー捕縛を行った者よ、その功績誇るがいい』
「持て、神って一体誰なんだ――」
それだけ言って静止の声も聞かず裁定者は穴の中に入り割れた空間は元に戻った。近づいてもそこはなにもなく、ただ草が揺れているだけだった。
「シト……?」
突然のことに理解が追いつかず呆然としていると、孤児院の中からニコが姿を現してこっちまで駆け寄ってくる。
「もう、終わった?」
ニコに話しかけられて我に返り、ロードが連れ去られたとはいえ今回の事件の犯人である一人を捕縛できていることを思い出ししゃかんでニコと視線を合わせる。
「うん、もう全部終わったよ」
そう言うと感情を表に出さないニコに感謝の気持ちなのか抱きしめられる。俺も抱き返してずっと不安だったであろうニコを安心させるように優しく撫でた。
その後孤児院から出てきた先生や子供たちは戦闘の影響で孤児院が壊れてしまったこともあり一緒に町へ戻り、娼館にいれるわけにもいかず宿屋に事情を説明して泊めてもらった。
孤児院の人たちを送り届けたあとは娼館に帰り、捕縛したダズを眠らせて部屋に閉じ込めて傷を負ったアギトの様子を見ながら朝まで眠った。
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