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53話:天使と子の願い

 孤児院に着くとアギト達だけでなく孤児院に住んでいる子供たちや世話をしている先生と呼ばれる女性が出迎えてくれて、気まずかったが事情を説明してくれていたようで手遅れながら助けに入ったことやサテナの遺体を持ち帰って綺麗なまま送り届けたことを感謝された。


「ロードさんもお久しぶりです。サテナがお世話になりますが、よろしくお願いします」


「大丈夫だよ~、サテナには私も楽しませてもらったからねぇ。みんなもお別れの準備をしておくんだよ~」


 特徴的な喋り方ながらロードはてきぱきと葬儀の準備を整え、全員が孤児院の中に入り棺桶に入ったサテナの前に座り頭を下げる。世界観的に神父などが葬儀のお坊さんのような役割は神父などの聖職者が行うものだと思っていたが教会に言うわけにもいかず先生がその役を務めることになった。


「サテナはこの孤児院でみんなの食事を毎日作っていました。サテナも食べることが大好きで、みんながおいしくご飯を食べるためにいつも料理に工夫をする子で――」


 先生がサテナについてのことを話した後、一人ずつ棺の中に花を添えていき全員で祈りの時間を過ごし、教会の外に棺を運んで深く掘った土の中に埋めてロードが持ってきていた名前の刻まれた墓石を置いて葬儀は終了した。


「みなさんありがとうございました、サテナも安心して旅立てたと思います」


「こちらこそお別れをさせてくれてありがとう」


 先生に礼を返して孤児院から去ろうとするとニコに服の裾を掴まれて止められる。

 振り返り話を聞くためにしゃがむと、ニコは静かに俺の耳元で囁いた。


「サテナを殺した人、探して。ここで眠ってる子、ほとんど亜人族(デミヒューマン)獣人族(ビースト)、たぶん……サテナを殺した人、みんな殺してる」


「え……?」


 亜人族や獣人族ばかりが狙われる殺人や行方不明事件、確かにここにいる子がほとんどそうなのであれば犯人は同一人物とみて間違いないだろう。

 このまま放っておいたら被害は増え続けるばかりだし、俺が犯人を見つけることで事件が終わるのであればいくらでも時間を割こうと思うがおそらく今回の事件は教会が絡んでいる。なにより神を名乗る上位者がいるから下手に首を突っ込めば俺どころかカレン達やエナ、最悪娼館の人たちにも危険があるかもしれない。

 でもニコの頼みだからすぐ断ることもできず、悩んでいるとアギトに肩を叩かれて立ち上がる。


「シト、もう行くぞ」


「わかった……ニコ、さっきのことは考えておく。明日またここに来るよ」


「うん、また明日」


 約束をしてアギト達に合流し帰路につく。

 犯人を探し出したいのはやまやまだが合理的に考えてもアギト達に相談すれば断られるかもしれない。独断で動くわけにもいかないし話しておきたいが、娼館に戻り部屋に入ってからも踏ん切りがつかなかった。

 葬儀の後で悩み続け夕食も喉を通らず部屋の隅にある椅子に腰かけていると、カレンが近くに来て隣の椅子に座る。


「なにか悩んでいるんですね」


「え? あぁうん……ニコのことでね」


 この世界に来て初めて会って、ずっと一緒に行動していたカレンには俺のことは筒抜けらしい。

 嘘をつくわけにもいかず、正直にニコに頼まれたことで悩んでいると話すことにした。


「ニコから犯人を捜して欲しいって頼まれてね。でも上位者や教会が絡んでいるわけだから踏ん切りがつかなくてね」


「そうだったんですか……私もこの町のことは見過ごしたくないですけど、エナさんのことを考えると難しいですね」


「今の僕たちの状況じゃ、この町のことをどうにかするのは無理かな」


 どうにもできないと思って気が落ち俯いてしまうが、座っていたカレンが椅子を下りて頭を抱えて抱きしめてくれた。ちょっと恥ずかしいが、とても落ち着けたのでしばらくそのまま過ごしていると部屋を出ていたエナのことを確認するために出ていたアギトとシャルルが戻ってきて椅子に腰かけた。


「二人とも聞いてくれ、俺達は今夜娼館を出て別の場所に行くことになった」


「急にどうしてだい? ここにいるのがエナにとっても一番安全なんじゃ――」


「初めて孤児院の墓場に行って考えた。あんな人数を、見つかっていない数も含めて殺されているっていうのに見過ごすこともできない」


「でも教会が絡んでるんだ、僕たちが下手に動けばエナやこの娼館も危ないんだよ?」


「確かにそうだったが策を考えた、聞いてくれるか?」


 真剣な顔のアギトに言われ、全員で集まりアギトとシャルルがエナとリズを交えて考えたという作戦を聞く。


「今日の夜、娼館の周りは朝まで人が絶えないよう客引きをしてもらう。幸いここで働いてる人には人族が多い、狙われない人族に手伝ってもらってここ周辺を賑やかにしておく」


「そうすれば犯人は近づかないだろうけど、それだけじゃ意味ないだろう」


「そこでカレンに頼みたい、危険は承知だが娼館と離れたエリアを歩いてくれないか?」


「わっ私ですか!?」


「安心してくれ、なにがあってもいいようすぐ近くにいる」


 つまり一番狙われやすいカレンを囮にして犯人をおびき出し、襲ってきたところを全員で捕まえる作戦のようだ。成功すれば娼館も危険じゃなくなるが――まだ問題がある


「僕が見た犯人の影は二人だった、片方でも取り逃がしたら大変だ」


「二人組? なら少し考え直さないとな……別々に行動してる可能性はあるのか?」


「それはないと思うけど」


「それならカレンを守る役目はシトに任せて俺とシャルルで逃げ道を塞ごう、リズから町の地図を借りてきたから場所を決めるぞ」


 アギトが地図を机に広げていくつかのポイントの指差し、その中でも娼館から離れていて逃げ道が限られるエリアを絞り込み、最終的に南側の場所で作戦を決行することになった。

 ニコには明日また会うという約束をしていたが、その時には犯人はもういないと言えることを願い子供に変装したカレンと装備を整えた俺達で娼館を出て目的のエリアまで向かった。

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