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52話:天使と葬儀屋

 夜が更けて月が傾いても窓から見える娼館に出入りする男たちは数が少なるなることなく、俺は勇気がなくて手を出すこともできなかったような場所に結構な人が来てるんðなとか思いながら眺めていると突然下の方が騒がしくなりドタドタとした足音が近づいてきて部屋の扉が開かれた。


「白髪、アンタいつのまに帰ってたんだい?」


 扉を開けたのはリズで声を抑えてはいるが何やら焦ったような顔をしていて、窓際に座る俺のとこまで寄ってくる。一階が騒がしくなっていたしなにかトラブルがあったのだろうか、それなら対処できるが見た目的にアギトやシャルルのような男の方がいいと思うが。


「アンタが窓際にいたせいで外から見つけた客がアンタとヤラないと帰らないって騒いでるんだよ、とりあえずこっちでどうにかするけど窓から顔出すのをやめな」


「ご、ごめん気を付けるよ」


 言われた通り窓から離れて奥に座る。

 確かに何人か外を歩く男と目が合った気がするけど、そんなことになるなんて思いもしなかった。前々から絡まれることも多かったけどやっぱり珍しい髪色のせいなのだろうか、とにかく人目につかないよう窓には近づかず朝を待つことにした。


「もし次こんなことがあったら夜はアタシの部屋にいてもらうからね」


「わかったよ」


 もしかして部屋に呼んだのもそれが目的だったのか、それなら悪いことをしたな。俺が変な想像をしたせいで迷惑をかけてしまった、明日からは夜に窓に近づかないようにしておこう。


 そのまま窓際の景色を見ることもできず、気がつけば外は明るくなり朝を迎えていた。

 窓から差し込む朝日でアギト達も目を覚まし、昨日の夜のことを説明するために一階に降りるとカウンターの前でリズとニコが話していた。


「起きたのかい、昨日の子が話があるって会いに来てるよ」


「よかった、聞いて欲しい、ことがある」


 ニコは会ったときからあまり表情が変わらないが、遊びに来たという感じではなくだどたどしい喋り方の中に焦りが見えたので話を聞くためにカウンターの奥の部屋に入り、ソファに座る。


「サテナ、帰ってこない。昨日の夜から、ずっといない」


「サテナっていうのは孤児院の子供?」


「うん……サテナ、孤児院で、ご飯作る子。買い出しで、町に入ってたかも、しれない」


 嫌な予感がして、帰っていない子供の特徴を聞く。


「その子はどんな子なの……?」


「鼠系の、獣人族(ビースト)、背の低い、男の子」


 最悪なことに、昨日襲われていた子供と特徴が合致した。リズとニコ以外の全員の顔が青ざめ、最後の確認ために俺達がいた部屋まで移動して隠していた子供の死体を氷の箱から出してニコに見てもらう。

 リズも驚いていたが、なによりニコが目を見開いて子供を見ている。


「サテナ……間違いない、この子」


「昨日帰っている途中に襲われてるのを見つけて、助けようとしたけど間に合わなかった……ごめん」


 重い空気の中謝る俺の服の裾を掴んでニコがしゃがめと言わんばかりに引っ張る。

 悲しみや怒りの矛先がないであろうニコに殴られる覚悟でしゃがむと、なぜか優しく頭を撫でられた。


「見つからない子供、いっぱいいる。サテナ、ちゃんと弔える、シト、悪くない」


 人を慰められるような状況ではないはずなのに、俺にさえ優しくしてくれることに涙が出そうなのを我慢して優しく目の前にいるニコを抱き締める。

 俺がもっと早く町に戻っていれば少なくとも助けられたかもしれないというのに、不甲斐なさで潰れてしまいそうだ。


「ごめんね、ごめんねニコ……!」


「大丈夫、それよりも、早くサテナ、送ってあげたい」


 背中を優しく叩かれてニコを離すと、埋葬や弔いの準備をするために町の葬儀屋を訪ねなければいけないらしく、アギト達が先に孤児院までサテナを運んで俺とニコが葬儀屋に寄って埋葬をお願いしてから孤児院へ向かうことになった。



「ここ、孤児院の埋葬、いつも頼んでる」


 葬儀屋は意外と娼館の近くにあり文字は読めないがそれっぽい看板が掲げられた暗い雰囲気の店の扉を叩き、中に入ると喪服なのかシャルルよりも黒い面積が多い服に身を包み包帯で両目を巻いている変な男がカウンターで立っていた。


「おや〜? ニコちゃんじゃないか、久しぶりだねぇ〜。それに始めてみる子だ……はじめまして、私はロード」


「シトだよ、よろしく」


 陰気な雰囲気を漂わせているのにずっと笑顔の男は俺達を迎え入れカウンターの下から取り出したお茶のような飲み物を差し出されたが、なんか変わった匂いがするので手を出さず要件を伝える。


「子供の埋葬、獣人族の男の子、名前はサテナ」


 それだけ伝えるとロードは店の奥に生き、ドタバタを騒がしい音を出して数分待っていると子供サイズの棺桶を背負って出てきた。

 他にもさっきまで持っていなかった十字架や卒塔婆、数珠など統一性のない道具を持ってカウンターから出る。


 不思議に思って店を出ようとするロードの後ろを見ると棺桶にはすでにサテナの名前らしきものが刻まれていた。


「それサテナの名前?」


「そうだよ〜」


「ロード、変人。この葬儀屋、町の人の名前が入った、棺桶ある。だから名前と年を言えばすぐに準備できる」


 そう言われて扉が開きっぱなしの店の奥を見てみると大小様々な棺桶がありすでにすべての棺桶に名前が入っていた。

 たしかに変人だなとは思いつつ二人が店を出ていったので追いかけて店を出る。


「それにしてもあのサテナがねぇ、元気な子だったのに」


「残念、でも、シトが見つけてくれた。いなくなるより、いい」


「ありがとねぇシトちゃん……それにしてもニコに精霊族(エレメンタル)の友達がいるなんてねぇ」


「僕が精霊族だってわかるの?」


「わかるよ〜精霊族は魂が綺麗だから、君は少し大きいけど根本は変わらないよ~」


 なかなか一目で俺を精霊族だと見抜ける人はいないが、ロードは目を塞いでいる代わりになにかしらのスキルで周りのことを確認しているようだ。

 下手なことを言うと見透かされそうだからあまり変なことは喋らないようにしよう。


「サテナはもう孤児院にいるのかな?」


「僕の仲間が先に連れてってくれてる、もうそろそろ着いてるかもしれないから早く行こう」


 シャルルが魔法で冷やしながら運んでくれてはいるけど昨日の夜からずっと外に出したままなのも可哀想で、早く埋葬してあげたい気持ちもあり俺達は寄り道などもせず孤児院へ向かった。

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