50話:天使と噂
さっきのチンピラもそうだったがニコが襲われたりしているのを考えると、この町は種族差別の意識が強い気がする。そもそもゲームじゃこういう意味での種族差別はなかったしなによりアルタイルじゃ多少の距離はあってもわざわざ手を出しているようなものは見たことなかった。
教区長がしっらたとか言ってたし、この町も教会絡みでめんどくさいことになっているのかもしれない。
「ニコ、なんでこの町の人族は他の種族が嫌いなの?」
「元々、人族は他種族嫌い。でも少し前、教会に上位者来た。それからみんな、殴られたり、盗まれたり、してる」
上位者と聞いて驚く。聞いた話でしかないけど上位者は神や天使と言った存在のことで、勇者と会った時も町にいるはずがないと言っていたから簡単に信じられるようなものではないはずだが。
俺のように名乗っているだけの実力者――あるいは俺みたいにこの世界に来た元プレイヤーの可能性もある。
「それに……子供、埋葬増えてる。いなくなって、見つからない子、多い」
「子供が?」
「私、墓守り。埋葬した数、間違えない、見た目の年齢も、覚えてる」
暴力を振るわれるどころか殺されたり行方不明になる子供までいるのに、この町の住人は以上だと思わないのだろうか。それとも異常だと言えば先導している何者かに狙われる可能性があって言い出せないとか……なによりその上位者ってのがきな臭い。
「上位者がヒト種を殺すなんて、考えられないですけど本当なんですか?」
俺とニコの会話を聞いていたカレンが質問する。
「人族、逆らった獣人族の人、殺された。あれ、人族が出来るような、ことじゃない」
目を伏せて言うニコを見ると思い出すことすら憚られるような惨状だったようだ。
そんなことができるっていうことは本当に上位者なのか、でもガチビルドをしていたプレイヤーも人間とは思えないようなコンボを決めていたりこの世界の基準じゃ人知を超えたような魔法だって使えるはず……会えるかわからないけど、会ってみないと判断できないな。
「上位者、神……人じゃ、勝てない。人族以外は、逃げるか、我慢するしかない」
「神か、ほんの少し前に魔王に会ったばかりで神のいる町に来るとはな……」
「そうだよね、なんか呪われてるんじゃないかって思うよ」
この世界に召喚されてからずっと大変だな。たまには一日ぐらいゆっくりやりたいことをするだけの日とか欲しい。
「あ、あそこ最後の店」
チンピラのせいで無駄な時間があったがリズに頼まれた買い出しを無地終えることが出来たから、まだ時間はあるし約束していたニコの買い物もこのままやってしまおう。
店を出て紙袋を持ちながら案内することが無くなり黙っているニコを呼ぶと、不思議そうな顔をしながら小走りで寄ってきた。
「なに?」
「ニコも買うものがあったんだよね、このまま買いに行こうと思うんだけどなにが必要なのかなと思って」
「私の? でもお金盗られた、買えない」
「僕たちが出すよ、カレンとシャルルもいいよね?」
二人に聞くと笑顔で頷いてくれたので、目線をニコに戻す。
たまたまニコを襲ったやつに会ったりしない限りはこうするつもりだったし、少しの出費なら困ることはない。アギトも説明すれば納得してくれるだろうしニコの分は俺達で買おう。
「それでなにを買う予定だったの?」
「……花。埋葬したお墓、白い花供える」
もう少しニコに案内してもらうことになったが、俺達はニコの目的だった花を買うために町の西側にある花屋へ向かった。
到着すると色とりどりの花が店頭に並んでいて、ゲームじゃ味わえなかった香りや雰囲気を楽しんでいると奥から獣人族の男と背後に二人の精霊族が飛んでついてきた。
「ニコ……? ニコじゃないか、町には一人で来るなと言っていたのにどうしたんだ」
獣人族の男はニコを見つけて近づき心配そうにしゃがんでニコの体を見る。どうやら怪我がないかなどを確かめているようで、傷一つないニコの体を見て安堵した。
「一人じゃない、みんな、一緒」
「みんなって、もしかしてあなた達がニコと一緒に?」
「襲われた、でも助けてもらった。怪我も治してくれた」
獣人族の男はニコの指さす俺たちの方を見て立ち上がり、頭を下げて礼をする。
そんな大それたことしたわけじゃないのだが、あの心配ようだとこの人からすればニコのことは大事な存在のようだ。
「ありがとうございます。ニコには町は危ないからしばらく来ないよう伝えていたのですが」
「いいよいいよ、僕たちも案内とかしてもらったし。君はここの店主かい?」
「はい、花屋ジュエルの店主をしているオズワルドと申します。オズと呼んでください」
オズと名乗った男は頭を上げて丁寧に自己紹介をしてくれた。
綺麗な花に似合う礼儀正しい人で、紳士といった雰囲気を漂わせている人の良さそうな人物だ。
ニコとも旧知の中のようで買う花もわかっているらしく、挨拶の後オズはすぐに店の奥にあった白い花を包んで持ってきた。
「ありがとう、これで、みんな安心する」
ニコが花を受け取りシャルルが代金を支払うと、オズの後ろで飛んでいた精霊たちが花のまわりを飛び回る。
「この精霊達はオズさんの契約精霊ですか?」
「そうですよ、どちらも花の精霊でこの子達がいると生き生きとした花が育つんです」
「綺麗な精霊達ですね」
カレンも精霊使いだから、触れ合うと精霊達が楽しそうに可変の頭の周りを飛び回って頭の上に落ち着いた。
「あなたは冒険者で精霊使いを?」
「はい、アルタイルで冒険者になったカレンといいます」
「それはすごい、どんな精霊と契約してるんですか?」
「僕だよ」
精霊使い同士盛り上がる会話に契約精霊として話に入ると、オズはとても驚いた顔をして俺とカレンの顔を二度見した。
それでも信じられないという顔をしているのが少しおかしくて笑ってしまう。
「本当ですか……!? 上位精霊と契約している精霊使いなんて初めてみました」
「ふふっ、みんな驚くよ。でも本当だよ、僕はカレンの契約精霊だ」
「これは珍しいものを見せていただけてとても幸せです、よければ感謝の印に花を受け取ってもらいたい」
そう言ってオズは店の奥から綺麗な赤色の花と黄色の花を二輪包んで持ってきた。赤色の花はまるでカレンの目のように綺麗で、快く受け取り軽く礼をする。
「ありがとう、大事にするよ」
包んでもらった花をカレンに渡して、日を傾いてきた時間だったので長居するのもと思い店を後にして娼館へ戻った。
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