41話:天使と二人の時間
しばらくして全員が部屋に集まり、服がないエナには申し訳ないが風呂用のタオルを体に巻いてもらいアギトとシャルルから離れたベットの上に座ってもらってグレイから伝えられたことを説明した。
「――というわけで、アレクシオスに向かおうと思うんだけど」
「まあ教会に絡んでるしな……説得にだって応じないだろうし、秘匿死刑を知った俺達の身も危険だ」
教会区出身のシャルルが言うには教会は町の領主や各国にも顔が利くらしく、自治区を設置しているだけ合って王宮騎士にも劣らない聖騎士という武力と信者の寄付金で金回りも良く裏ではかなり勝手をしているらしい。
種族差別をしていたり刺客を向かわせるようなことを予測されたり、かなりきな臭いイメージがあるな。
「そんな……また私のせいで皆さんに迷惑を」
「エナさんは気にしないでくれ、俺達は助けたくて助けたんだ」
エナをシャルルがなだめ、俺は立ち上がって一応縛っておいたグレイを起こして細かい話を聞くことにする。
アレクシオスは南方にある町で離れたところという要望通りかなり遠い位置にあったはず、いろいろな移動手段があったからゲームでは気にしてなかったけど徒歩どころか馬を使っても時間がかかる。
「グレイ、アレクシオスまでの移動手段はどうすればいいのかな?」
「問題ありません、アレクシオスは運河の先にある水の都――船のチケットは手配済みです。ちなみに私のズボンのポケットにありますので」
「ズボンのポケット?」
手を縛ってあるから動けないグレイのかわりに、ズボンのポケットに手を突っ込むと中に数枚の紙が入っていて、取り出そうとするとなにか柔らかいものに手が当たり一緒に引っ張る。
「おうっ……シトさん、それは私の――」
自分がいま引っ張ったものを想像してポケットから手を引っこ抜く。
いま触った柔らかくて大きいのはもしかして、いや考えるのをやめよう。思えばズボンの上から少し触れたぐらい気にすることはない。
もう一度浅くポケットに手を入れて紙だけを取り出すと中にはアレクシオス行きの船に乗るチケットがちゃんと入っていた。
「これでアレクシオスに行けるわけだね」
「はい、少し時間がかかりますが一週間もすれば着くはずですよ」
二度目は浅くポケットに手を入れたので残念そうな顔をするグレイだが、とりあえず無視して机にチケットを並べる。
移動手段はこれで確保できたから、準備をしてできるだけ早く向かったほうが良いだろう。
「ありがとうグレイ、僕たちはできるだけ早くアレクシオスに行くとするよ」
「このチケット、明日の朝に出港ですね。今日は明日に備えて準備をしましょう」
カレンがチケットを見て出港日を確認してくれたおかげで、足早に出ようとしていた俺が恥ずかしい思いをせずに済んだ。
明日の朝出港日なら、エナには宿で待っててもらって俺とカレンで必要なものを集めてきたほうがよさそうだり
「では私はそろそろ、とりあえず解いてもらっても?」
「ああごめん、グレイには感謝してるよ。一応関係者だから王都に行くときは気をつけてね」
「ありがとうございます、私は王都から騎士の方が迎えに来てているので心配ありません。あと感謝でしたらもう一度手を――」
「はいはいほどけたから帰ってね、騎士がいるなら安心だからさっさと王都にカルナの魂を持っていくんだよ!」
早口で拘束していた手をほどいたグレイを上裸のまま服と一緒な部屋から出して扉を閉める。
さっきのことは忘れてしまって、いまはエナを守りつつアレクシオスに向かうための準備をしなければいけない。
「さて、グレイのおかげでエナを匿うことができそうだから僕とカレンで必要なものを買ってくるよ。アギトとシャルルは宿で待っててくれる?」
「わかった、エナのことは俺達に任せてくれ。二人には必要なものを伝えるから買い物を頼む」
「とりあえずできるだけ早くエナさんの服を買ってきてもらえるか……?」
切実なシャルルの願いと、アギトから伝えられた必要なものを覚えてカレンと一緒に宿を出た。
久しぶりに二人きりだけど、エナの関係者の俺達も狙われている可能性があるから町を歩く時も気をつけないといけないな。
「まずはエナの服かな、僕は自信がないからカレンが選んでよ」
「私も服はあんまり……シトはとてもきれいな服を着てますし、私じゃないほうがいいと思います」
俺は女性を服を選ぶなんて経験ないし、アバターの装備じゃなくて本人に似合う服を選ぶとなるとカレンに頼みたかったんだが、二人揃って自信がない感じだ。
そもそもこの世界の服のサイズとかわからないし、SMLみたいな表示ならなんとかなりそうだが変な服を買ってがっかりされたくもない。こうなったらエナの容姿を好投で伝えて店員にお任せするしかないか。
「いらっしゃませ〜」
店員のお決まりの挨拶を聞きながら服屋に入店すると、冒険者の装備屋とは全く違う雰囲気の店で中にいる客も町の女性や子供が歩いている。
男性の姿はほとんど見えず付き添い程度しかいないから、外からはわからりづらかったが女性服の専門店のようだ。
男性の店員もいるようだが、気にしないことにしよう。
「さて、とりあえずそれっぽい服を――」
「なにかお探しでしょうか?」
来た! 服屋あるある、見ているだけなのな店員が話しかけてきてあまり買う気がなかった服を流れで買ってしまうやつ!
そもそも人とまともに喋れない俺が服屋の店員なんて存在に話しかけられようものならマジで変な服でも買ってしまうが、今回は目的が違うから他人の服であることを伝えればいいだけ。
「友達に服を買ってあげようと思ってるんだけど、あまり服に詳しくなくて、選んでもらえない?」
「そういうことでしたか、ではご友人様は――こちらのお嬢様でしょうか?」
「いや、本人は事情があって着てないんだ。それでも大丈夫かな?」
「でしたらご友人様の体のサイズなど教えていただけましたら、私が何着かご用意させていただきます」
やけに丁寧な対応だなと思いながらもエナの身長などを思い出す。胸意外は年相応って感じだったから、身長だけ伝えれば合ったサイズの服を持ってきてもらえるかな。
「身長は僕と同じぐらいで……細め? 二十歳ぐらいの女の子だよ」
「わかりました、スリーサイズのほうはわかりますでしょうか?」
スリーサイズ!?
さすがにわからない、言葉で表してもボン・キュッ・ボンみたいなおっさん臭い言い方しかできないぞ……そもそも服選びに身長と体型以外の情報って必要だったのか!?
「……えっと、細かくはわからないんだけど胸は大きくて……お腹が細かったような、尻は普通ぐらい……?」
「グラマラスな御方なのですね、では髪色なども教えていただければ最適なカラーリングを選べますが」
「髪は金色、目は青い子だったかな」
「承知いたしました、では少々お待ち下さい」
そう言って下がっていく店員を見送りながら横目でカレンを探すと、大人っぽいセクシーな下着とにらめっこしているのが見えた。
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