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4話:天使と疑いの目

 この世界が俺が廃プレイヤーになるまでやり込んだゲーム『アセンブル』の世界だと確信してから数時間、他愛もない話としてカレンから聞き出せた情報は多かった。


 まず見た目通りカレンは亜人族デミヒューマンの少女で、勇者パーティーに加入していたのは半年ほど。

 それ以前は精霊と共に別の町で過ごしていたそうだ。


 勇者パーティーは冒険者とは別枠で数えられるパーティーらしく元冒険者でも勇者パーティーに加入すると冒険者資格がなくなるらしい。

 これは少し融通の効かない部分だな。


 冒険者資格は条件満たせていれば誰でもなれるらしく、細かい制限はない。

 精霊使いの場合は一人以上の契約精霊がいることが条件で、俺は立場上カレンの所有物になるからあまり関係はなかった。


 あとはアルタイルにあるギルドのことを聞いたが、これはアセンブルとかなり違いがあった。

 まずアセンブルにおけるギルドは個人が仲間を一定数集めて作るものでギルドマスターは創設者になる。だがこちらでの冒険者ギルドは個人ではなくいわゆる大元があり、ギルドマスターはその大元に所属する人間が務めることになるらしい。


 大元自体も複数あるらしく、アルタイルのギルドは冒険者組合が創設したギルドで最も自由な雰囲気のギルドらしい。ほかには貴族が設立するや、学院が設立する学生ギルドなどもあるそうだ。

 個人が作る民営ギルドもあるにはあるらしいが、ここは信用問題とかで長続きすることは少ないらしくあっても小規模な数パーティーが所属するのみらしい。

 アルタイルの冒険者ギルドに関しては一応信頼できる人物が運営してるってことでいいんだろう。


「あっ、見えてきましたよ天使様!」


 かなり歩いたが、やっとアルタイルの東門が見えてきた。

 こんなに歩いたのは小学生の遠足以来かもしれない、元の身体だったら一時間前には倒れていただろうな……この体で召喚されてよかったと本気で思う。


 それにしても天使様って呼ばれ方はなんか、目立ちそうだな。

 ここは訂正しておくか。


「カレン、僕は君の契約精霊なんだから天使って呼ばないほうがいいよ」


「確かにそうですね、でもどう呼べば?」


「シトと呼ぶといい、もちろん呼び捨てでね。精霊を様付けで呼ぶ精霊使いはいないだろう?」


「そ、そうですね! ではよろしくお願いしますシ……シト!」


「うん、よろしくねカレン」


 ふむ、聞き分けのいい子で助かった。

 カレンはすぐ信じてくれたけど町中で天使だなんて名乗っていたらどんな扱いを受けるかわからないからな。


 幸い俺のアバターでいまの体であるシトリーは精霊族といっても人間にかなり近い見た目にキャラメイクされてるし、町を歩くだけならそんなに目立つことはないだろう。


「止まれ! お前達なんの目的でアルタイルにきた!」


 おや〜?

 他の人達のように門番をスルーして町に入ろうとしたらカレンごと止められてしまった。

 でもカレンはこの町から召喚の家まで行ったわけだし、原因は俺なのか? 俺が何したっていうんだ。

 ちょっと見た目が人っぽい精霊なだけだぞ。


「あの、私は精霊使いでこの人はてんっ……私の契約精霊です!」


 いま天使って言いかけたな。


「契約精霊だと? 精霊族エレメンタルには見えないぞ」


「本当なんです、信じてください!」


 やばい、人間に近いのが逆に怪しい点になってしまっている。

 とはいえ種族の見分けは見た目がほとんどだ、人っぽくなるよう頑張りすぎたせいで精霊である証拠を出せと言われて出せるものはない。

 本来の契約精霊はサイズが小さく薄い羽で飛んでいるが、さすがにゲームの仕様でプレイヤーは自由に飛ぶことはできないし羽も出せない、どうしたものか。


「契約精霊というのであれば契約印があるだろう、見せてみろ!」


 契約印、そういえば契約した精霊や召喚獣は体のどこかにプレイヤーの所有物である印が付くんだった! 俺とカレンは正式な契約を交わしていないから契約印もない、このままじゃ町に入ることができなくなる。


「えっと、それは……」


「あれ、君は今朝契約石を買っていった子じゃないか。ちゃんと精霊と契約できたのか?」


 迷っているカレンの前に、髭面の男が話しかけてきた。

 内容から察するに商人か。


「門番さん、この子は怪しい人じゃないよ。今朝うちで召喚石を買った精霊使いさ」


「そうでしたか、まあグレルバルトさんがそう言うのであれば……失礼しました」


 門番が頭を下げて下がっていく。

 どうやらあのおっさんに助けてもらったみたいだ。


 門を通ったあと、グレルバルトと呼ばれた商人のところにカレンが駆け寄ってお礼を言っていた。


「ありがとうございますグレルバルトさん」


「いいってことよ、それで精霊とは契約できたのか? 契約石を五個も買っていったんだ、いい精霊に出会えただろう?」


「えっと、一人契約できました」


「ほう、見せてはくれるかい?」


「見せるというか、そのー……こちらに」


 カレンは指差す方向はもちろん俺だ。

 そして俺も精霊ですよと言わんばかりの自信満々な顔でグレルバルトの視線を受け入れる。


「えっ!? たまげたなぁ、お嬢ちゃんとんでもないのと契約してるよ!」


「そんなにすごいんですか!?」


「ああ、人族と同等の体格を持つ精霊といえば上位精霊じゃないか、噂しか聞いたことないけど本当にいるんだなぁ。王都か精霊の国じゃないと普通見れないよ!」


 上位精霊? アセンブルでは確かプレイヤーが選べる精霊族が区別のために設定上そう呼ばれてるってのを資料で読んだことがあるが、こっちの世界じゃそんなに珍しいのか。


「こりゃあお嬢ちゃん大物になるよ! 冒険者登録に行くんだろう、頑張りな!」


「はい、ありがとうございます!」


 グレルバルトに礼をして町の中心へ向かう道を歩き始める。


 どうやら俺が精霊族であることを示せる証拠を一つゲットしたようだな、これでなにかあっても上位精霊ということで説明することができるようになれた。


「カレン、ギルドまであとどれくらいなのかな?」


「ギルドは町の南東にあって東門からならすぐ着きますよ、でもその前に宿屋に寄ってもいいですか?」


「宿屋に? いいけど先じゃないとだめなのかい?」


「恥ずかしながら、戻って来るまでに汗をかいてしまって……冒険者登録は私にとって大事な事ですからできるだけ綺麗な状態でギルドに行きたいんです」


 こだわりが強いんだな。

 冒険者になる程度って思ってしまうが価値観の違いもあるし、それに身綺麗な姿でいたいっていうのも乙女心だろうか。

 ともかく止める理由はない。


「それは大事だね、じゃあ先に宿屋に行こう」


「ありがとうございます」


 そして俺たちの次の目的地は街の宿屋に決まった。

 

20時にもう1話投稿されます。

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