31話天使と:決死の脱出
跳ね返った光線により天井が崩れ、エレファントドラゴンの足元にも大きな瓦礫が落ちてくる。
こんなギミックはこのダンジョンになかったはずだが、これもまた異世界化の影響なのか。とにかくいま足元で殴り続けるのは危ない。
「アギト、一回逃げよう!」
「くそっもうちょいだってのに!」
アギトに声をかけて足元から逃げる。
本当にもう少しだった、あとちょっとであいつの体勢が崩れて弱点を攻撃できたのに。
「どうする!? あいつの足元を攻撃するのはもう無理だぞ!」
「どうしようか、でもあいつは腹以外硬くてこのまま攻撃しても意味がないんだ」
なんとか近づかないで足を攻撃する方法を考える。
有効なのは魔法だけど、崩れかけたダンジョンでエレファントドラゴンにダメージを与えるほどの魔法を使うのは危ない。衝撃が強すぎて天井が全部崩れれば最悪全員生き埋めだ。
「俺が魔法で崩す」
「シャルル、あいつに効く魔法を使うのまずい。ダンジョンが崩れたらおしまいだ」
「要は腹が見えればいいんだろう――なら足を直接攻撃する必要はない。土魔法で足元を沈めて転ばせる、シトは腹が見えたら全力で魔法を叩きこんでくれ!」
「そういうことか……わかった!」
シャルルが杖を噛めて魔法yに集中すると、アギトはシャルルとカレンを守るために振ってくる瓦礫を弾いた。
俺は瓦礫をよけつつエレファントドラゴンの側面に回り魔法の準備をする。
「グガアアアァァァ!」
瓦礫を背なかで受けつつ暴れだすエレファントドラゴンが、魔力を感じ取ったのかシャルルの方を向き再び光線の準備をし始める。
まずい、いま攻撃されたらシャルルを防ぐ術がない、なんとか俺の方向に顔を向けないと!
「"フレイムボム"!」
炎属性の速攻魔法を顔に連射して注意を引き付けようとするが、防御力が高すぎて全くこっちの方向を向かない。このままじゃシャルルに攻撃されてしまう、でもこいつを倒すには俺はここを動くはずがない。
「こっちを見てくださーい!」
気がつくと、カレンが落ちてくる瓦礫をなんとかよけながら反対の側面まで回っていた。
なんとかして自分の方に注意を向けようとしているようだが、なんて危ないことをしているんだ、もし瓦礫に当たったらひとたまりもないぞ!?
「やあっ!」
カレンはカバンから取り出した瓶を投げつけると、エレファントドラゴンの顔の前で強い光を発して破裂した。これはモンスターの注意を逸らすための閃光瓶か、ちゃんと契約している精霊がいないとはいえ、用意周到なカレンのおかげで助かった。
「準備が出来た、やるぞ! "アースクエイク"」
シャルルの魔法が発動してエレファントドラゴンの足元の地面だけが沈み込み、体勢が崩れる。
よろめいたエレファントドラゴンは足へのダメージもあったのか、立て直すことが出来ず轟音を出して倒れる。そのすきを見逃さず、俺は一撃で倒せるだけの魔法を発動した。
「"薄氷"!」
放たれた小さな光の玉がエレファントドラゴンの腹に到達し瞬間、空間ごとひびが入り割れると同時に腹を中心にエレファントドラゴンが砕け散る。
属性や系統を持たない無属性魔法で、一撃の威力なら最も高い"ディメンショナルブレイク"、蘇生魔法や超回復スキルを持たないエレファントドラゴンはこの魔法にはほとんど体勢を持たない。
死に際の声を上げることなく、エレファントドラゴンは素材をドロップして消滅した。
「や、やりました! みなさんすごいです!」
「カレン危ないっ!」
喜んで頭上の瓦礫に気づいていなかったカレンを助けてアギトに預ける。
モンスターが死んでもダンジョンの崩壊は止まってない、すぐに奥の部屋から反魂のスクロールを入手して外に出ないと!
「アギト、シャルルとカレンを連れて先に出るんだ!」
「シトはどうする!?」
「反魂のスクロールを取ってくる。安心するといい、僕はこれぐらいどうってことないさ」
「――死ぬんじゃねえぞ」
先に出ていったアギトたちを見届けて奥の部屋に走る。
実際めちゃくちゃ怖い、間に合わなかった一人で生き埋め、この世界じゃリスポーンもできない。死んだら全部終わりだ。
考えたくもない未来が、頭の中に浮かんでくる。
「死ぬもんかよ――俺は人を助けるために天使やってるんだ! "紅蓮躍動"」
身体能力向上の魔法で一気に奥の部屋まで進み、宝箱の中にあるスクロールを手に入れてすぐに反対方向へ駆け出す。
天井はもうほとんど崩れていて、いつ床が抜けるかもわからない。ダンジョンの下が空洞だったらあがってくることもできないだろうが、とにかく階段まで行ければなんとか――
扉の近くまで走ったところで、崩れた天井が扉までの道を塞いでしまった。
だが、この程度で諦めるほど簡単なゲームプレイはしてこなかった。
「"火炎竜王"」
炎属性魔法で瓦礫を焼き払い、一気に扉に入って階段を駆け上がる。
三層に到着するとまだ揺れが続いていて、最下層の天井――つまり三層の床が抜け始めていたが、元のステータスと魔法の力で崩れかけの床に飛び乗り三層目を抜けたところで、柱が完全に崩れたのかダンジョンが一気崩壊を始めた。
「"流星"!」
もう道順通りに戻ることができないと判断した俺は、直線に飛ぶ魔法で天井を一気に抜き、上空へ思いっきり飛ぶ。
足りない高度を崩れていく瓦礫を足場にして、なんとか頭上に外の光が見えてきた。
「届けえぇ!」
全力で光に向かって飛び込み、地上に出る。
かなり高く跳んでしまったのか、気がつけば森を見渡せるほどの高度にいた。ここから着地するとなったら羽を使わないといけないだろう。
そういえばアギトに羽のことを聞かれて誤魔化していたなと、魔法の連続使用で疲労した脳で考えることでもないことを考えてしまう。
――そうか、この世界じゃMPを使いすぎると疲れるんだな。これからは気をつけないと……。
「"コンストレーション・リーブラ"!」
下から聞こえたのは、たぶんシャルルの声だ。
高速で空中にいた俺に接近したシャルルは、落ちている俺を抱きかかえそのまま速度を維持して地面に戻り転がりながら着地した。
俺もシャルルに抱えられているため一緒に転がり、しばらくして止まった。
どうやら助けられてしまったようだ。
助けるために一緒に行動していた俺が助けられるとは、本当に仲間思いでいい奴だ。
「ぐ……大丈夫かシト!?」
「ありがとう、助けられてしまったね――君がいなきゃ死んでた」
「そんなこと言うな、俺達だってシトがいなきゃもう死んでる」
抱きしめられている距離間で話す俺は、MP消費と疲労感で朦朧とした意識の中、シャルルの顔布を取ると変形していないイケメン顔が現れる。
本当に、男の俺でも惚れ惚れするほど整った顔だ。
「君は本当に優しい奴だよ……」
そのままゆっくりとシャルルの顔を撫でて、俺は疲労感の限界で目を閉じた。
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