30話:天使とダンジョンボス
勇者パーティーと別れた俺達は、四層目の扉を開ける前に体力の回復を行っていた。
「シャルル、あの聖職者となにがあったんだい? なんだか好かれているようだったけど」
「全く覚えがない……むしろ顔を見られてたせいで嫌われてると思ってるんだが」
顔を……? じゃああのひょっとこ顔を見られ――いや待て、よく考えればシャルルは戦っている時はかなり真剣でかなり近くに女の子がいない限り顔は変形しないはず。
顔が変形していない時のシャルルは、めちゃくちゃイケメンだ!
「シャルルは、残念だね」
「残念なんて言わないでくれ! 俺は、俺は……また女の子に嫌われてしまった」
落ち込むシャルル励ましつつ、アギトにも話を聞くことにする。
あの戦士は初めて喋ったがかなり話のわかるやつだった。アギトとは知り合いだろうから休憩がてらそのへんの話も聞いてみたい。
「アギト、あの戦士はどんな奴なのかな? あの勇者と一緒に行動してるというにはまともそうだったけど」
「あの人は俺の師匠みたいな人だ、パーティー加入も俺より早かったし、剣の腕だけならまだまだ及ばない」
アギトの師匠か、それだけで信頼度上がるな。
さっきまでの体力の消耗からしてかなり苦戦してたみたいだし、なんであいつ勇者なんかとパーティー組んでるんだ?
「元王宮騎士直属戦士団団長ゲイル……蛮王って呼ばれてたこともあったか。英雄と言って差し支えない実力の持ち主だよ」
めっちゃ長いし、片方はすっごい危なそうな称号だな。でも肩書を聞くにまともな人ってのは間違いじゃなさそうだな。
なんか人をまとめてる役職っぽいし。
「カレンはよく頑張ったね、怖かっただろう?」
「怖かったですけど、でもシャルルさんのお力になれてよかったです! 一つしかなかった精霊瓶使ってしまったのでもう何もできないんですけど」
「そんなこと言っちゃだめだよ、僕がいるんだから。契約精霊の僕の功績は契約主である君の功績だ、しっかり胸を張るといい!」
「ありがとうございます、シト」
少しの休憩で回復した俺達は、カレンが持ったままだった三つのポーションを納品箱に入れ四層目の扉を開いた。
四層までの階段は今まで以上に長く、難易度の違いを感じさせられた。おそらくこの先にはダンジョンボスのモンスターが設置されていて、それを倒せば報酬として目的の反魂のスクロールが手に入る。
「これが、ダンジョンの最下層……」
最下層は今までの部屋よりも格段広く、明らかに巨大モンスターとの戦闘を前提に設計されており、天井の高さから階段の長さの理由がわかる。
そして部屋の中心には、寸胴のような太い体から長い首の先に巨大な牙を生やした四足歩行の巨大モンスター"エレファントドラゴン"が眠っていた。
ゲームでのこいつのレベルは80、ただのモンスターたと思って倒せるような相手ではない。熟練のプレイヤーなら問題ないだろうが、この世界じゃそう簡単にはいかないだろう。
「動くぞ!」
最下層への突入と同時にエレファントドラゴンが目を覚まし、リアルな咆哮とともにこちらに目を向けた。
「"超活性"」
速度と物理防御力を上げる強化魔法を護符に保存してアギトとシャルルに使う。
こちらが戦闘態勢を整えたあと、エレファントドラゴンはゆっくりと動き出し、長い首を振りかぶって地面に叩きつけた。
そのサイズから繰り出される攻撃範囲は広く、全員がバラバラの方向に避けて攻撃に転じる。
「"ダーカーソウル・ブラスト"!」
「"サイクロンソード"」
シャルルは魔法、アギトは風の剣で斬りつけるが、エレファントドラゴンは頭から背中にかけて鎧のような鱗を持っており、物理魔法共に前方側面後方の耐性がかなり高い。
さすがはボスモンスターといったところだが、攻略済みの俺は弱点も知っている。
「"赤燐"」
勇者を一撃で倒した強化魔法でエレファントドラゴンの足元まで突っ込み、前足を思いっきり蹴り上げると少しよろめいた。
エレファントドラゴンは足を集中攻撃して転ばせれば、弱点の腹が露出する。あとは腹に向かって攻撃をすれば倒せるはすだ。
「ぐあっ!」
俺が足を攻撃したせいか、振り回した尻尾がシャルルに当たり空中へ弾き飛ばされた。
すぐに体勢を整えて着地しているが、ダメージはかなりあるはずだ。
「シャルル、無事かい?」
「問題ない……こういうことも想定している」
おそらく物理耐性強化をしていたおかげだが、何発も食らってられなさそうだな。シャルルは黒魔導士だし前でていると危険が多いうえ魔法も使いづらい。
「アギト、前衛は僕と君だ! シャルルは後衛で援護してくれ、まずはあいつの足を狙う!」
「了解っ!」
アギトがすぐに足への攻撃を始めるが、俺の攻撃でも少ししかよろめかなかったエレファントドラゴンの足にダメージは少ない。
「"超強化"」
足へのダメージが通らないことを確認して下がってきたアギトに強化魔法をかける。
エレファントドラゴンが倒れるまでに必要なダメージは足二本分、時間をかけすぎると魔術師職の二人は不利だ。
アギトにはせめて一本分でも倒してもらいたい。
「"紅蓮躍動"――アギトは前の左足を、僕は後ろ足を倒す。あいつの弱点は腹だ、足を倒して腹に全力の攻撃を叩き込む」
「そういうことか、理解した。"シグネイト"――火竜の鱗」
竜騎士特有の刻印魔法か、火竜の力を一時的にその身に宿す強力な魔法だが使用中削られるスタミナは倍――だったか。
「行くぞっ!」
俺の合図で一気に駆け出す。
指示通りアギトが前足を斬りつけ、俺がその隙に後ろまで回り込み後ろ足を殴ると、先程以上にエレファントドラゴンがよろめいた。
「くそっ、足まで硬ぇな!」
「文句を言ってる余裕はあるのかいっ!」
足を攻撃した時に出る足踏み攻撃を避けては足元に戻り攻撃を繰り返す。
後方からはシャルルが魔法でエレファントドラゴンの顔を狙い、できる限り足踏みが発動しないよう援護してくれている。
もう少しだ、もう少しで足の体力を削りきれる。
「グオオオォォォ!」
エレファントドラゴンが吠え、口から光線が発射されると、シャルルが魔法で防ぎ跳ね返った光線が天井を貫いた。
20時にもう1話投稿されます。
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