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27話:竜騎士と戦士

 ダンジョン一層目、元はアンデッドで埋め尽くされていた場所に、アギトと鎧で身を固めた戦士が立っていた。

 二人は剣を構え、すぐにでも動けるように体勢を整えいていたが、双方動くことなく睨み合っている。


 前衛職同士の戦いは近接戦、一挙一動が命取りになることは明白なため、戦士がどう動くかと注視していたアギトに対して、戦士は一度剣を下げて話し出した。


「アギト、お前と剣を交えるのはいつ以来だろうか。このまま始めるのもなんだ、少し話そう」


 歴戦の戦士であることを感じさせる低い声に、アギトは反応する。


「ゲイルさん、あんたのことは戦士として尊敬してる。でもなんであんな奴とパーティーを組み続けているんだ?」


 戦士ゲイル――元王宮騎士直属の戦士団で団長をしていた男で、過去魔物と戦た経験もある本物の戦士。

 鋼の鎧に包まれた威圧感のある長身、禿頭が目立つ顔は隙を感じさせない目つきで、一目でただものではないとわかる眼光をしている。

 アギトに勇者パーティーの一員として冒険者以上の剣の腕を与えたのも、この男だった。


「俺はな、勇者パーティーであること自体に意味なんて感じていない。だが一振りの剣として多くの民を救うには、勇者とともにいることが最も合理的なんだ」


「そうか……よかったよ、あんたが戦士としての意義を見失ってなくて――」


 アギトは一気に駆け出して、構えた剣を突きだしゲイルの横腹を狙うが、ゲイルはすぐに反応して身を翻しカウンターで大剣を振り回した。

 アギトはまともに戦っているとは思えない勇者パーティーに所属しながら落ちることのない剣技に驚きを隠せないが、自身の師ともいえる戦士の前に納得する。


「俺の速さについてくるとは、さすがだ」


「誰がお前を一人前にしたと思っている?」


 アギトはポケットから護符を取り出し、少し考える。

 シトの差し出した強化魔法を使えば、今までも強力なモンスターと戦うこともできた。ギルドを襲ったエナの時も剣が届いた――


「使わねぇ……」


 取り出した護符を再びしまう。

 竜騎士として、目の前の強大な戦士を超えるための決意が、目の前にある力を捨て自分の力だけで戦うことを決めることが出来た。


「魔法具か? 俺は使っても構わんが」


「いいや、俺は俺の剣でお前を超える――」


 火花が散るほどの激しく交差する剣閃、双方が全力で命を狙うほどの攻防を繰り広げられる。

 速度で上回り多い手数を持つアギトに対して、戦士というタンク職ならではの耐久性と持久力を持つゲイルが受け止めきれない剣撃を意に返さず反撃する。


「"ソードチャージ"!」


「"バックスラッシュ"!」


 剣を盾に突進するゲイルのスキルを、後方に下がりながら迎撃するスキルで避けるアギト。

 ゲイルはとにかく距離を詰めて戦うことを意識しており、魔法という竜騎士の優位を潰すことで常に自身が有利になるよう立ち回っており、攻撃力と耐久力で劣るアギトは劣勢だが、大きく上回る速度で翻弄する。


 ゲイルの戦い方に感服しつつも、アギトは奥の手を使うために難とか距離をとるためのスキルを発動し続けた。


「"サイクロンソード"」


 風を纏った斬撃が飛び、ゲイルが弾いている隙を見逃さず、アギトは魔法の詠唱を始める。


「"シグネイト"――炎竜の鱗」


 自身の体に刻んだ文字による能力強化魔法により、アギトの体から汗が蒸発するほどの熱気で煙が上がり、体に鱗のような模様が浮かび上がる。


「炎竜の如き熱気と頑丈さ、耐久力のアドバンテージはもうないか」


「俺だって成長しているからな、この魔法はあなたも知らない」


 アギトの体から立ち昇る熱が剣に火を灯し、さらに上がった速度でゲイルの後ろに回る。

 元々速度では不利だったゲイルは反応できず、背後から炎を纏った剣撃を受け、初めてダメージらしいダメージが入った。


「ぐっ……! 耐久力だけではなく、炎のエンチャントまで!」


「あなたに教えてもらった剣術は、この魔法を得るために役に立ったよ――」


 反撃を行おうとするゲイルに接近し、ゲイルが体勢を立て直す時間を与えず連撃を行う。

 攻撃力の向上により、戦士としてもっていたアドバンテージを失ったゲイルは、為すすべなく体力を削り取られ、ついにその膝を地につけた。


「はぁ……はぁ……ゲイルさん、あなたはやっぱり尊敬できる戦士だよ」


「嫌味か……? 俺がここまで追い込まれたのは、王宮騎士を覗けばお前だけだ」


「俺の、勝ちでいいな?」


 アギトの言葉に、ゲイルは静かに頷いた。


 その後、体力を回復した二人は三層に戻る前に思い出話に花を咲かせていた。


「まさかあの田舎小僧が、竜とも戦っていたのはな」


「倒せたわけじゃない、俺は竜騎士としてまだまだ不完全だ。さっきの魔法も数分しか持たない、あれ以上耐えられたら俺が負けていた」


「俺もまだまだだな。黙ってないであのバカを少しは焚きつけた方がいいかもしれない」


「俺としてもそうして欲しいところだ。勇者がいまだにこんな所に居られても困る」


「……この勝負が終わったらすぐに王都へ向かうことにする。勇者には勇者としての責務を果たしてもらわないとな」


 過去の話とこれからの話を終わらせた二人は、笑い合って三層へと向かった。

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